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嘘つきたちの協奏曲  作者: ヤマノ鹿子
Ⅱ 魔なる少女の遁走曲~フーガ~
34/60

序 章

1/16 時間帯を夜から昼に変更

「はっ……はあ……」


 光が微かに差し込む林の中を、一人の少女が脇目もふらずに駆けていた。

 時折、枝が視界を塞ぐが、素手で追い払ったり身をかがめたりしてそのまま駆け抜ける。そのせいで彼女の腕や頬には血が薄く滲んでいた。


「あ!」


 少女は小さな悲鳴を上げて腐葉土に倒れ込んだ。足元に視線をやると、くねった木の根が地面から隆起している。

 彼女は脚に付いた土も払い落とさずに、よろよろと立ち上がった。

 そして、焦りの表情を浮かべながら背後を振り返る。

 今走ってきた方角に目を凝らしてみるが、そこに広がるのは暗闇ばかり。凝視し続ければ吸いこまれてしまいそうだ。


「――ッ!」


 強い眩暈めまいを覚えた彼女は、手近な木の幹に背を預けて座り込んだ。


「……そういえば」


 呼吸も落ち着いてきた頃、少女は顔を上げた。視線の先、木々の隙間からは木漏れ日が落ちてきている。


(シェントと初めて会ったのも、こういう所だった)


 草木の揺れる音が、しかし感傷に浸ろうとする彼女を現実へと引き戻した。

 少女の表情が途端にこわばる。


(魔獣か魔物か……それとも)


 逃げなければ――


 少女は幹に手をつき、先程痛めた足をかばうようにゆっくりと立ち上がった。

 いつもの彼女であれば躊躇ためらいなくカタナを抜いていたであろう。だが今はそんな余裕などなかった。

 アレグロは戦いたくなかったのだ。


 ついさっきまで仲間であったはずの彼らと。


(あのときに戻れるのなら――)


 カデンツァを出てすぐ、四人でパーティーを組んだとき。あのとき、仲間にならずに一人になっていれば。

 こんな想いはしなくてすんだのに。


(カデンツァのあとは、ルフランに行ったんだっけ……)


 アレグロはのろのろと歩きながら、彼らとの今までを思い返していた――

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