中編
思った以上に長くなりそうなので3部構成に…。
キャラが勝手に動きすぎ~
俺の家に着くと、彼女は「おじゃまします」の言葉もなく勝手知ったる様子でずんずん中へ入っていく。
まあ、幼馴染でなんどもうちに遊びには来ているのだが、さすがに慣れすぎではないかとも思う。
とりあえず、彼女が買ってきたものを出している間に、俺は二階に自分の部屋に行って着替えてきた。
手には二着のエプロンを持って。
なぜかかぼちゃに見とれている彼女の後ろに回って上からエプロンをかぶせる。
「もがもがもが…。」
「ちょーっと待ってな。今着せてやるから。」
「……ぶほっ。」
やっと顔を出すことの出来た彼女。
動きがリスみたいだった。
「なにすんの。」
「いや、エプロンちゃんと着れないって前に言ってたからさ。」
自分でもわかるくらい顔がにやにやしているのが分かる。
「そっ、それ小学校のころでしょ。
高校生にもなってるんだし今は一人で出来るもん。」
真っ赤な顔で怒り出す彼女。
しばらく経ち、彼女の怒りが沈静化してからやっとかぼちゃランタン作りに取り掛かる。
つもりだったが…。
「で、どうやって作るのか知ってるのか?
俺は知らんぞ。」
「………。」
彼女は俺から目をそらす。
彼女の頬からは玉のような汗が大量に流れおちている。
「知らなかったんだな。」
「………。」
「まったく知らなかったんだな。」
「………。」
「はぁーっ。」
大きく一つため息をついた後、おもむろに両手を彼女の顔に伸ばす。
むにゅっ。
「おーまーえーは、
自分で作ろうと思ったときに調べようとかはしなかったのかよ。」
彼女の頬の感触を堪能してから手を放す。
「ぷはっ。
もうなにすんのよ。」
「いや、学習する気配がないからお仕置きしてみただけ。」
「私だって日々進歩してるもん。」
「じゃあ準備ぐらいちゃんとしとけ。」
「ぐっ。」
なんでこいつは見た目は美人なのに頭のほうは残念なんだろうか。
仕方ないので、自分の分のエプロンを着用して台所に立つ。
ちゃんとした作り方があるのかもしれないが、どこかの間抜けな幼馴染が調べなかったせいで分からないので見た目は似ているようにかぼちゃのランタンを作る。
かぼちゃのヘタの周りの皮を円形に切り取り、そこからスプーンで中身を取り出す。
まあ、生のかぼちゃだし硬いのだがそこは気合で。
中身を取り出したら、鉛筆でかぼちゃに顔を描く。
鉛筆の下書きの上からナイフで線を入れ、その部分を抜き取って完成。
パチパチパチ。
音が聞こえて周りを見回すと彼女が手を叩いていた。
「いつもながら器用だよね。」
「まあ、料理もろくに出来ない女幼馴染がいるものでね。」
彼女からの称賛の言葉に皮肉を利かせた言葉で返す。
彼女はまたむっとした顔をするが、
「ねえ、ねえっ。」と妙に俺にすり寄ってくる。
「一個しか作んないぞ。」
先に彼女が言いたいであろうことに釘をさしておく。
「けちぃー。」
ぷうーっと顔を膨らまして言う彼女。
「自分の分しか作らない気?」
「うん?これはおれのじゃないぞ。」
「じゃあ私にくれるの?」
「いや別にお前だけのじゃないんだが…。」
「じゃあ、だれのなのよ!」
彼女が怒り出した。
え、なんでだ?
前回までと違って今回は彼女が怒っている理由がまるで推測できない。
だって、
「俺とお前、二人のものだろ?
いつも一緒だったじゃないか。」
幼い時から一緒に過ごしてきた彼女。
長年いろんなものを共有してきた。
というか昔から活発だった彼女にずっと言われ続けていたことだ。
野山で見つけた木の棒も、道端で見つけた花で作った冠も、二人で作った秘密の基地も、みんなみんな二人のものだった。
なので今回もそれでいいのだと思ったのだが…。
「………。」
まるで反応がない。
目は見開いているがほかに動きがない。
そんな時、彼女の左目の端からススッと一筋の涙がこぼれおちてくる。
なぜか泣いている彼女を見て俺は大幅に焦っていた。
正直泣かせるようなことをやった記憶はない。
でも目の前には彼女を泣かせたという現実。
まずは謝ろうと思い声をかけることにする。
「ごめ…」
「ありがとう。」
彼女からの突然の抱きつきに動揺を隠せない。
「いつも私と一緒にいてくれてありがとう」
どのくらい彼女は俺に抱きついていたのだろうか。
壁時計は俺の背面にあるため今は見れない。
俺が少しそわそわしているのに気がついたのか彼女はすっと体を離す。
そうして何かを決心したように俺に向き直り、改まった口調で俺に話しかける。
「ずっと一緒にいて下さい」
ハロウィン短編のはずなのに11月更新になる勢い。
果たして今日中に完結できるのか…