表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

前編

ハロウィンなのでかぼちゃで短編を書きました。

砂糖が多いので苦手な人は注意。

「かぼちゃってさあ。」

「唐突にどうした。」

いつもながらの彼女の突然の発言に驚きつつ俺はそう答える。


「ある程度の重さをしてるし、硬いし、まるで鈍器みたいだよね。

えいっ、ってやったら一発で()っちゃえそうじゃない?」

「さすがにその発想はなかった。

でもその危険思想はやめてくれ。

でもそんなことをしたら確実に真っ二つに割れるんじゃないか?」

「頭が?」

「かぼちゃが!」

ボケるのも大概にしてほしい。


「そう考えるとさあ。」

何事もなかったかのように再び話し出す彼女。

……本当に話をちゃんと聞いてほしい。

「どうしたんだ?」

「ハロウィンって危険なお祭りだよね。」

「一様聞いてやる。どこがだ?」

「だって、中身くり抜いて硬い皮だけ残して軽くして、穴をあけるんだよ。」

「それがどうした。」

「もう投げようとしているようにしか思えないよね。」

ニコッと笑いながら彼女はそういった。

可愛(かわい)らしいのではあるがいっていることは物騒だ。

「ジャック・オ・ランタンが完全に投擲(とうてき)用になってる!」


俺のツッコミを無視して話を続ける彼女。

「日が暮れ、夜空に月光の輝く夜更け。

 仮装をした子供たちがお菓子をもらいに街を練り歩く。」

「珍しく普通の発言だな。

 少し厨二病っぽいが。」

「とある家のチャイムを鳴らし、その家の人が出てくる。」

「うんうん。」

「そして、その行事お決まりの台詞(セリフ)をいう。

 そう、『お菓子をくれなきゃ(トリックオア)かぼちゃを投げるぞ(トリート)』と。」

彼女はドヤ顔でそういった。

「やっぱりか。結局オチが付くのかよ。」

噛み付くかのような勢いで彼女に迫りだす俺。


それも気にしていないかのように話を続ける彼女。

「そうその夜は。

 コウモリが飛び()い、かぼちゃが飛び交い、悲鳴が飛び交う。」

「普通とは違う意味で恐怖を感じるお祭りだよ……それは…。」

ツッコミに疲れ、机に顔を伏せようとしてふと思い、彼女に疑問をぶつけようとする。

「まあ滅多に投げられることがないと思うが…。」

「この祭りの翌日には道にかぼちゃや赤い液体が散乱しているよ。」

「やめちまえ、そんなお祭り!!」

ぜえぜえ、はあはあ。

はっ、完全に錯乱していたみたいだ。

気を取り直して再び彼女に疑問点を聞きなおす。

「赤い液体はともかく、投げて砕けたかぼちゃはどうするんだ。」

白く細い指をあごにもっていき考える彼女。

「えっとねぇ……、スタッフがおいしくいただきました?」

おいおい。








「でさあ。」

「うんうん。好きにしろ。」

「ちゃんと、聞いてよぉ。」

両手を前後に振りつつ喋る彼女。

可愛くてちょっと(なご)む。


「なにぼやっとしてんの?」

彼女に言われて気付く俺。

「いっ、いや。ちょっと考えごとをな。」

「うーん、気になる。

 でもまあいいや。」

彼女がアホの()で助かった。


「でね、そんなかぼちゃを作りたいから買い物に行きたいんだけど付いてきてくれる?」

「えっ、ああ…。」

正直面倒なところもある。けれど彼女一人で買い物に行かせるには色々な意味で危なすぎる。

しかたない、行ってやるか。

「ごめん、急に買い物なんてダメ…」

「いいぞ。行ってやる。」

「本当、いいの?」

顔を赤らめつつ、妙に嬉しがる彼女。

そんなにかぼちゃがほしかったのだろうか?



そんなこんなで近所のスーパーに俺と彼女はいる。

来るまでに彼女から手をつなごうだとか、腕を組もうだとか言ってきたが、子供じゃないんだからとかなんとか言うとムスッと黙ってしまった。

だがそれも野菜売り場に入る前のこと。

キャッキャと飛び跳ね、腕を引っ張りかぼちゃ売り場につれて行こうとする彼女。

手を引くのはいいが、スカートで飛び跳ねるのはやめなさい。


「かぼちゃかぼちゃかぼちゃかぼちゃかぼちゃかぼちゃかぼちゃかぼちゃ…」

かぼちゃが売っているところに着いたのはいいのだが、なんか禁断症状のごとくなってやがる。

本当についてきてよかった。

「かぼちゃかぼちゃかぼちゃかぼちゃ…」

彼女のおでこめがけてデコピン。

「かぼちゃかぼ…痛っ。」

やっととまった。

「変になってたぞ。

 かぼちゃ買いに来たんだろ。

 しっかりしろよ。」

「うんっ、

 ……そうよ私。

 せっかく一緒に買い物にこれたんだから頑張らなきゃ。」

大きな返事の後、ぼそぼそと自分に言うかのように呟く彼女。

その声は俺には聞こえない。

彼女が完全に自分の世界に入ってしまったので、彼女に声をかけることにした。

「おおーい、そこのお嬢さん。おおーい、戻ってこーい。」

「……せっかくの機会なんだしもうちょっと近づかないと……」

さっきの話を意図的に無視したものとは違い、今度は完全に聞こえていない様子。

トントン、と肩をたたいてもツンツンと顔をつついても反応がない。

しかたない、最後の手段だ。

頭をガシガシと少し乱暴目に撫でる。

「へっ、わっ。ちょっと。」

彼女は無事戻ってきたみたいだ。


「かぼちゃ買うんだろ。」

「うん…。」

持ってきたカゴにかぼちゃを入れる。

ボンッ、ボンッ。

なぜか二つ。

「なんで二つもかぼちゃをいれるんだ?

 ランタン作るんなら一つでいいはずだろ。」

「えっ、一緒に作ってくれないの?」

……その上目(うわめ)づかいはずるいと思う。


結局俺の家で一緒に作ることになってしまった。

彼女の家はどうも用意もしていないし無理らしい。

まあ、「そっちの家に行こう。」と行ったときに「無理、無理」と連呼しながらおろおろする彼女を見られたからよしとしよう。


彼女は家に着くまで始終ムスッとしていた。

やっぱり少しからかったのがいけなかったのだろうか。

まあ、それでいて可愛らしいのが彼女なのだが。

それはいいとして、そろそろ機嫌を直してもらわないと…。



もともとはコメディを書くつもりだったのに。

(前半はその名残。)

いつの間にかキャラクターが暴走しました。

そのせいで長くなり泣く泣く分割。

後半も早めに書きあげる予定。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ