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6投目 実戦試験 中編

 俺は一歩前へ出た。

 それに釣られるように『怪力』オスロも前に出てきた。


「ほほう、そのギミックで俺の鎧を突破するつもりか?」

「そうだ。この斧槍は俺の最高傑作。コイツが負けるのは許されないのでね」

≪……テリウス相手にアタシの貞操賭かっているのに、武器のため!?≫


 対峙する二人の会話を聞いたギジェルミーネは心の中で叫んだ。勝ち負け関係無く影響を受けるのは他でもない自分自身なのには変わり無いため、彼女は一つほど考えを思いついていた。


≪いっそのこと、この二人を隠れ蓑にテリウスを一発殴り飛ばそう!≫


 そうして主であるギジェルミーナは勝手にやり始めたフィルマンを他所に動き出した。


「改めて自己紹介をしようか。俺は怪力のオスロ。Bランクの冒険者だ!」

「フィルマン・ヴィクセル。一受験生です」

「一受験生?同業者では無いのかね?」

「そうですね。まだ人里に降りてきて三日ですから」


 豪快さが目立つ大男は俺に名乗り上げてきたので、敬意を払いながら返答した。仮にもバトルロワイアルを生き残る猛者。その上、ギジェルミーナも警戒を即してきた事だから、かなりの実力者に違いない。


「ヴィクセルの名前……もしかするとマルグレットさんの縁者かい?」

「……育ててくれた師匠です。最も、1を教えられた所で王立学園に行けと言われましたが」

「なるほど。これは中々楽しみな小僧だな」


 オスロの小僧呼ばわりに俺は少し腹が立った。仮にも身長は180cmぐらいあるのに、小僧と言われたのは初めてだったからだ。まぁ、相手のオスロが2mを超す大男なので、彼からしてみれば雇い主のテリウスも俺も小僧なのかも知れないが。


「正直な所、私には貴方の斬馬刀に耐えられると思えません。ですが、一撃を入れるだけなら俺の方が速い自信が有ります。なので、一つ勝負してもらえませんか?」

「なんだ?」

「その赤い鎧からも分かるとおり、貴方は防御にも自信を持っているとお見受けします。なので、俺の一撃に耐えられたら貴方の勝ち。耐えられ無かったら私の勝ち、と言う事でどうでしょうか?」

「ふっ、面白い。『激震』ゴンズの一撃にも耐えたこの俺の鉄壁に挑むとな。いいだろう!」


 そう言って、オスロは手に持った斬馬刀を離した後、屈んで防御体制を取った。俺が勝手に持ち掛けた勝負に全力を掛けてくれるようだ。


「良い人だ、それでこそ全力で挑む価値がある!」


 俺はダイズをいつもよりも遥かに高く投げ上げて、斧槍をつかみ直す。運命のダイズは空高く回り、重力に引かれるようにゆっくりと落ち始める。


「いざ、参る!」

「来い!」

「……『打撃衝撃パイルバンカー!』」


 俺は半回転させて斧槍の刃を背に回して、全力で横に撃ち払った。ぶつけた部分は槌部だった。だが、この槌は俺特製の火属性魔法を仕込んだ文字通りの一撃必殺技だ。


 グァコ~ンッ!ズザァァァッ!


「な、なんだ!?この音は!?」


 ずっと傍観をしていたテリウスも驚きを隠せない。だが、大きな音がなった瞬間に物凄い土煙が舞い上がったため、何が起きたか見る事も出来ない。

 その土煙が消えると、そこには斧槍を振り抜いた姿勢を維持していた俺と、その先20メートルは離れている所で倒れているオスロの姿があった。

 俺は斧槍を捨てて、吹き飛ばされたオスロの元へと近付いた。


「済みません、オスロさん。手加減出来ませんでした」

「いい一撃だったぜ、フィルマン。完敗だぜ、ハハハ……」


 嬉しそうに笑いながらオスロは気絶した。そして、彼の自慢の赤い鎧は粉々に砕けていた。

 原理は単純。槌部分に火属性の『爆発』を起こす事で槌部分に衝撃を起こさせてその衝撃で防具破壊+打ち付けを行なう技だ。


「まさか『打撃衝撃パイルバンカー』を受け止められるとはなぁ……。狂熊グリズリーですら一撃で倒せた技なのに」

「ふ、巫山戯るなっ!!ぼ、僕は負けた事を認めないぞっ!!」


 俺がオスロとの全力勝負の余韻に浸っている間にそれまでずっと傍観に徹していたテリウスが動いていた。彼は俺が捨てた斧槍がある場所に立ってナイフを手に持って構えた。

 へっぴり腰に怖いのか震えている事が良く分かるナイフ。その対峙は蛮勇でしか無い事を理解していながらも、その動きを止めない。


「ちっ、このクソ貴族が……!」


 そう言って俺は背中に装備だけしていた投槍ジャベリンを手に取った。近付けないなら近付かないなりの武器を使うまでだ。

 俺は迷うことなく、持っていた投槍ジャベリンを投げようとした、その瞬間だった。


「いい加減にしてください、テリウス殿っ!」

「うごぉっ!?」

「ミーナ!」


 俺が迷っている間にいつの間にか姿を見えなくしていたミーナがテリウスへ飛び蹴りを仕掛けてテリウスからナイフを奪い、押し倒していた。俺は投げる寸前だった投槍ジャベリンを必死に掴み続けて、強く地面へ打ち付けた。


「うぐっ、離せ!」

「フィル君の勝ちで抵抗とは見苦しいですよ、テリウス殿!」


 ギジェルミーネがテリウスを拘束している間に俺は斧槍と地面に突き刺した投槍、そして運命のダイズを回収して、ギジェルミーナと合流した。


「……王手チェックメイトだ」

「クソ、クソクソォッ!!」

 ドンドンドンドンドンドン!

「試験終了だぁっ!」


 俺がテリウスに手槍を首に宛てがった瞬間、試合終了の太鼓が鳴り響いて試験終了を告げる大声が響いた。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



「ありがとー、フィル君!これで決勝トーナメント進出だよ!」

「……ミーナ。何であの時、テリウスを倒しに行った?」


 笑顔で喜んでいたギジェルミーナに俺は問う。危うく手槍を投げ飛ばす所で、下手すれば彼女に刺さっていた可能性だってあった。その時はダイズを持っていなかったために慎重に投げようとしていて投げずには済んだが、危険な事に変わりはない。


「……フィル君を貴族殺しにしないため、かな?」

「え?」

「あのオスロを真正面から打ち倒したフィル君が、あんな奴を殺した事で悪名を被ったら気分が悪いわ」


 貴族殺し、特に侯爵家ともなると相当な権力を持つため、いくら貴族側が悪いとしても殺した方が悪く扱われる、そんな悪名でこんなに凄い奴を潰すわけにはいかない。ギジェルミーナはそう思ってテリウスを倒しに行ったらしい。


「だが、何でオスロと戦っていた時、ミーナは姿を見せなかったんだい?」

「そ、それは……っ!」

「もしかして、俺が負けた時にテリウスから逃れようとして遠くに居たとか?」

「……(ギクリ)」


 ギジェルミーナは笑顔を崩さなかったが、俺にはその微妙な変化が分かった。間違いない、ギジェルミーナは賭けを嫌って逃げようとしていたのだ。


「さ、さぁ、決勝トーナメントよ!ここまで来たんだから優勝を狙うわよ!」

「……分かったよ、ミーナ」


 彼女の誤魔化しに付き合う事にした俺は呆れながらもダイズを振った。

 ダイズは34を示していた。

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