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◆01:罪と罰、遙けき地にて
水辺の果樹に吊された男がひとり。
その水は、男が口を近づければ潮の如く下へ引き。
その果実は、男が身を起こせば風の如く上へ舞う。
果実と水を目の前にしながら、
死ぬことも出来ず永遠の飢えに苛まれる。
それがこの男に課せられた罰である。
虚無は必ずしも罰とはなりえない。
悦びを知らねば、それを望むこともないのだから。
悦びを知っているからこそ、
決して手に入らないそれが、罰となりえる。
なればこそ、この男には相応しい。
人の身にありながらあらゆる悦びを極め、
そしてついには神の座を望み。
あまつさえ我が子を殺め、
神々を試したこの男には。
もはや天地が終わろうと、男の罪は赦されることなどない。
それは当然の報いだ。
だがしかし。
気づいていた者が果たしていたのであろうか。
男が永劫の罪に問われたのは、
彼が神々を試したがゆえの罰であり。
けっして、彼が我が子を殺めたがゆえの罰ではなかったことを。
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