誕生日プレゼント
今年の誕生日プレゼントはハッカ飴が一個。
去年は銀杏一個だったから、いいもの貰えてうれしいな。
来年はなにもらえるかな?
ハッカ飴はまだ食べない。
もったいないから。
誕生日が終わってもうれしい気持ちを忘れたくなくて、私はそれを机の引き出しにしまった。
引き出しの中には、去年の銀杏も入っている。
食べ方なんて知らない。
そのまま置いてあるだけ。
「また一つ増えたね」
隣のベッドのおばあちゃんが笑う。
「今年は飴かい。出世したじゃない」
「うん」
本当は出世ってなにかわからないけど、おばあちゃんが笑っているから私も笑った。
ここには誕生日の人がたくさんいる。
誕生日になると、先生がなにか一つくれる。
去年は庭で拾った銀杏。
一昨年はきれいな石。
その前は赤い落ち葉だった。
みんな違う。
みんな一個だけ。
先生はいつも言う。
「世界に一つしかない宝物だよ」
だから私は信じている。
宝物は、一個でいいんだって。
夜になると、おばあちゃんが小さな声で話してくれた。
「団子ってね、やわらかくて甘いんだよ」
「甘い?」
「お砂糖がついてるやつもあるし、あんこが乗ってるやつもある」
「お砂糖って甘いの?」
「うん。幸せの味がする」
幸せって味があるんだ。
私は目を閉じて想像する。
やわらかくて、甘い。
口に入れたら、思わず笑ってしまう食べ物。
「いつか食べられるかな」
「食べられるさ」
おばあちゃんはそう言った。
次の日、おばあちゃんはいなくなった。
先生は「お引っ越しだよ」と言った。
でも荷物は残っていた。
私は引き出しを開ける。
ハッカ飴。
銀杏。
きれいな石。
赤い落ち葉。
宝物が四つ。
冬が来る。
春が来る。
また誕生日が来る。
先生は少し困った顔をして、私の手になにかを乗せた。
「今年は特別」
白くて丸いものが三つ。
串に刺さっていた。
「……これ、お団子?」
先生はなにも言わなかった。
私は一つかじる。
やわらかい。
ほんのり甘い。
口の中があったかくなって、涙が出た。
「幸せの味だ」
思わず言うと、先生は少しだけ泣きそうな顔で笑った。
その夜、引き出しを開けた。
ハッカ飴はまだある。
銀杏もある。
でも、お団子はしまわなかった。
幸せは、食べてもなくならない味だったから。




