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誕生日プレゼント

作者: 鶴ヶ友護
掲載日:2026/08/21

 今年の誕生日プレゼントはハッカ飴が一個。

 去年は銀杏一個だったから、いいもの貰えてうれしいな。

 来年はなにもらえるかな?


 ハッカ飴はまだ食べない。

 もったいないから。

 誕生日が終わってもうれしい気持ちを忘れたくなくて、私はそれを机の引き出しにしまった。

 引き出しの中には、去年の銀杏も入っている。

 食べ方なんて知らない。

 そのまま置いてあるだけ。

「また一つ増えたね」

 隣のベッドのおばあちゃんが笑う。

「今年は飴かい。出世したじゃない」

「うん」

 本当は出世ってなにかわからないけど、おばあちゃんが笑っているから私も笑った。


 ここには誕生日の人がたくさんいる。

 誕生日になると、先生がなにか一つくれる。

 去年は庭で拾った銀杏。

 一昨年はきれいな石。

 その前は赤い落ち葉だった。

 みんな違う。

 みんな一個だけ。

 先生はいつも言う。

「世界に一つしかない宝物だよ」

 だから私は信じている。

 宝物は、一個でいいんだって。


 夜になると、おばあちゃんが小さな声で話してくれた。

「団子ってね、やわらかくて甘いんだよ」

「甘い?」

「お砂糖がついてるやつもあるし、あんこが乗ってるやつもある」

「お砂糖って甘いの?」

「うん。幸せの味がする」

 幸せって味があるんだ。

 私は目を閉じて想像する。

 やわらかくて、甘い。

 口に入れたら、思わず笑ってしまう食べ物。

「いつか食べられるかな」

「食べられるさ」

 おばあちゃんはそう言った。


 次の日、おばあちゃんはいなくなった。

 先生は「お引っ越しだよ」と言った。

 でも荷物は残っていた。

 私は引き出しを開ける。

 ハッカ飴。

 銀杏。

 きれいな石。

 赤い落ち葉。

 宝物が四つ。


 冬が来る。

 春が来る。

 また誕生日が来る。


 先生は少し困った顔をして、私の手になにかを乗せた。

「今年は特別」

 白くて丸いものが三つ。

 串に刺さっていた。

「……これ、お団子?」

 先生はなにも言わなかった。

 私は一つかじる。

 やわらかい。

 ほんのり甘い。

 口の中があったかくなって、涙が出た。

「幸せの味だ」

 思わず言うと、先生は少しだけ泣きそうな顔で笑った。

 その夜、引き出しを開けた。

 ハッカ飴はまだある。

 銀杏もある。

 でも、お団子はしまわなかった。

 幸せは、食べてもなくならない味だったから。

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