35 帰還
来た時と同じように隠蔽魔法、絶対防御結界を張ってチャリで進むが
なぜか魔物がぶつかってこない、というより魔物が見当たらない。
スマホの探索で探っても半径1キロ以内に魔物の影は一つとして映らない。
行きに一帯の魔物を全部倒してしまったかとも思ったがそんな筈はない。
不思議に思いながらも森の外れまで来たところで辺りが騒がしくなった。
どうやら森の奥へと進む姿の見えない謎の何かに激突死したり
その一部の魔物が消えてしまった事に恐怖を覚えた魔物や魔獣が
チャリ一行が向かった奥地から遠ざかる為に森の外円の方へと逃げて行った様だ。
森の中心程強い魔物、外に向かうにつれて小物の魔物が多い。
森の外には人間の居住区を守る騎士団の存在がある。その境目まで
追い立てられるようにやって来て立ち往生状態になっているのだろう。
そしてそんな森の異変の連絡を受けたウェストン領騎士団も
大変な騒ぎになっていた。
まさか魔王復活か!?という情報が行き交いその情報は応援要請を受ける側の
冒険者ギルドにも当然共有される事となる。
ギルドで仕事をしていたロベルトもそろそろ帰宅という時間にこの情報を受けて
先ずは様子を伺おうと騒がしさの増した魔の森付近へとやって来た。
そんな事になっているとはつゆ知らず
魔王の魔石も無事に封印出来たし魔物の食材も結構手に入ったと
呑気にチャリを漕ぐ和真が森から現れた。
途中で魔物と遭遇する事も無くなったので隠蔽魔法は解除してある。
気配に敏感な魔物達はチャリ一行との遭遇を避けて森の縁から移動して行った。
そんなチャリ一行が先手を切って側近数名と森の外で様子見をしていた
ロベルト率いる騎士団とかち合った。
「和真じゃないか!魔の森で何をしている!?今この森の魔物は活性化していて
とても危険な状態だ。そうでなくとも一人で立ち入るなんて自殺行為だぞ!」
「・・・」
『リリィ、魔物が活性化してるってどういう事?』
『行きに私達が森を爆走して引掻き交ぜたから驚いた魔物達が
逃げ惑ってるんじゃない?』
『この騒ぎって俺たちが原因?』
『おそらく・・・』
「約束の夕方まで時間が有ったのでちょっと散歩を・・・
この辺りに釣、魚取りの出来そうな川は無いか探していたら
ちょっと迷ってしまいました」
「・・・」
「今日の昼を過ぎた頃からこの辺一帯の魔物が活性化していると
騎士団に連絡があった。討伐隊を編成する事態になるかも知れない。
私は今日は館に帰れないかもしれないから執事にそう伝えて
和真の部屋を用意して貰ってくれ」
「お忙しい様でしたらまた日を改めてという事で俺はかまわないです」
「いや、こちらの目途が立ち次第一旦屋敷に戻る。
早急に君に頼みたい仕事が出来た」
そんなに慌てて仕事を振ってくれなくても良いのにとも思ったが
運び屋の仕事を請け負う人材は貴重なだけあって仕事は沢山あるのだろう。
仕方なく覚悟を決めて言われた通り屋敷に向かった。
まあこの騒ぎの元凶は自分達に有るのだから
少しは責任を感じた方が良いのだろうかとも思う。
しかし更なる深刻な事態を回避できるように動いた結果でもある・・・
が、それはこの先誰にも知られる事の無い偉業なのだろう。




