28 新しい仲間
洞窟に入って一息ついているとスマホからリリィが話しかけてきた。
念話は結構疲れるので人目のない所はスマホで話す方が慣れもあって楽だ。
「和真、魔剣の話が出た時、物欲しそうな感じだったじゃない?」
「まあ、興味が無いと言えば嘘になるけど・・・」
「でしょ?あの後、とある剣に宿ってる精霊と話したんだけど
私とチャリの今の状況を報告したら”私も是非仲間に入れてくれ!”
ってな事になって」
「・・・」
「じゃじゃーん!なんと和真の為に遠路遥々来てくれましたぁー」
「えっ!魔剣の精霊様が?!」
「何で”様”が付いてんのよ!それに魔剣じゃないわよ。前にも言ったけど
魔剣なんて若い精霊が宿ってるから経験不足もあって時々魔法が暴走するのよ。
故に”魔剣”なんて呼ばれているんだから。
今回来てくれたのは私達と同じ古参の
それもなんと500年前に勇者に同行して魔王討伐を果たした
聖剣に宿っていた精霊君でーす!」
「はあ?!聖剣?魔王討伐?・・・そんなの本当に国宝じゃん。
勝手に抜け出てきちゃまずいでしょ」
「何言ってんのよ。
魔王討伐から500年、宝物殿の奥にひっそりと仕舞われたまま。
たまに式典とかで宝物殿から出されても
クッションの上に鎮座しているだけで何にもする事ないんだから。
精霊が宿っていようがいまいが関係ないわよ」
「魔王が現れたらどうすんの?」
「和真がやっつけちゃえばいいんじゃない?」
「俺、剣なんて持ってないしサバイバルナイフじゃ
カッコつかないって言うか精霊さんに申し訳ないし。
第一魔王と見えるなんて絶対無理!」
「なんでナイフなのよ!釣り竿があるじゃない。
彼だって剣はもう飽き飽きしたって言ってるし」
「俺は自分の実力で釣りがしたい!」
「前にも言ったけど和真がその気にならないと
あなたの道具としての魔法は使えないのよ」
「えっ、それなら良いのか?でも元聖剣の精霊・・・
どうやってその実力を発揮するんだ?」
「何百年もじっと耐えてきた精霊に少しは同情しなさいよ。
そんな事追々考えれば良いじゃない。使われる私達が
”良い”って言ってるんだから和真も覚悟を決めなさい」
「じゃ、じゃあよろしく・・・って
でも精霊が宿った道具ってアイテムボックスに収納できるの?」
「無理ね」
「釣り竿、ずっと前籠に入れたまま?結構邪魔になるかも」
「釣りに行くときに気にした事あるの?」
「無い・・・」
「冗談よ。彼は変身魔法も使えるから
今までに宿った事が有る物になら変化出来るのよ。
聖剣の時は槍と弓に変化する事もあったらしいけど
先ずは愛用の竿を出して」
言われた通りにいつものルアー竿を出す。
手に持って見入っていると竿が僅かに輝いた。
「無事に定着できた様ね。次は私達みたいに呼び名を付けてあげて」
んー釣り竿に呼び名かぁ
安易に”ロッド”では申し訳ない。
もうちょっと呼び名としてしっくりくるような・・・
「”ロディ”でどう?」
・・・
「気に入ったって。よかったわね。あと身に着けるのにペンダントか
バングルのどっちが良いか、ですって」
何方かというとバングルかな。
ペンダントは落としても気付かないかもしれない。
「ちなみに聖剣に宿る前のペンダントは呪い除けのペンダントだったんだけど
持ち主がダンジョンボスにやられちゃって今はダンジョン内のどこかに
落ちてるはずだって」
「えっ、役に立たなかったの?」
「まさか。呪い除けって精神攻撃とかには有効だけど物理攻撃に対しての
防御は皆無だからね」
「・・・ バングルの持ち主は?」
「三千年くらい前の王様の持ち物だったんだけどこの頃は私達も新参者だったから
絶対防御の魔法が上手く発動しなかったんだって
王様は攻め入った敵に切りつけられてぽっくり・・・」
「・・・」
「い、今は私達も古参と言われる熟練の精霊だから安心してね」
不安しか無い・・・
「バングルって落とさないかな」
「貴方の為の精霊が宿るのよ。落ちる訳ないわ」
「じゃあ、バングルで・・・」
ロディが姿を変えて左手首に巻き付いた。
「これからよろしく。釣りは俺の楽しみだから補助は要らないけど
その他はバンバン魔法で守ちゃってくれて構わないから・・・」
ほんのり手首が温かくなった気がした。
「そういえばリリィ、前々から気になってたんだけど
チャリの籠から元の世界の物が出てくるのってチャリの魔法?
ステータスにはそんな魔法無かったと思うんだけど」
「今更何言ってるの。それって多分異世界から転移した時に得た”ギフト”よ。
貴方だってこの世界の言葉が理解できて字に書いたりできるでしょ」
「そうか、魔法は使えないけどギフトは貰ってたんだ」
納得だ。魔法は使えるようにならなかったけれど
代わりに心強い味方が沢山出来た。
一人淋しく魔法を使うよりこっちの方が断然幸せだ。




