25 ロベルトという人
建物に入ると壮年の執事らしい人が出迎えてくれた。
「自転車もそのままで入って貰って構わないから」
とロベルトさんに言われるがままついて行くと
立派なエントランスを抜けてこちらも”俺って場違いじゃん”
と思わせる応接間らしき部屋へと通された。
ソファーを勧められたのでチャリを横に停めて腰掛けた。
向かいに腰掛けたロベルトさんが執事さんらしき人に
「僕の書斎の例の品物とお茶をお願いします」
と指示を出す。
すると男性は「畏まりました」と礼をして退室した。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だってば。僕は嫡男とはいっても
まだまだ若輩者だから市井の様子を見て回って見分を広げているんだ。
政に関わるのはまだ先の事だから政治的思惑とかに君を巻き込むつもりも無いし
単なる好奇心しかないから。君がさっき買っていた物も面白かったし」
食器や鍋など日用品を買うのは面白い事なのか?と疑問に思う。
「だって普通君位の年の男の子が調理道具とか沢山の食器なんて買う?
商売始めるにしては少なすぎるし、家族の物なら普通は母親が揃えると思うよ。
使い勝手とかあるし。それとも頼まれたの?」
下手に噓をつくと余計に突かれそうなので正直に答える事にする。
「近所のチビたちと簡単な昼飯でも作って食べようと思って・・・」
「面倒見良いんだ。お金はどうしたの?」
ちょっと立ち入ってきた事にむっとした。
「自分で稼いだ。川で捕まえた岩マスをギルドで売った」
「ごめんごめん。そうなんだ。その年で冒険者やってるんだ」
「もう帰ってもいい?」
「ごめんて。本当に興味本位で聞いただけだから。
君みたいに他の人の事も考えて行動できるのはとてもいい事だと思うよ。
僕は最初見た時から何て言ったらいいか
君が気に入ってしまったみたいで色々と気になって仕方ないんだ」
「・・・」
『リリィ、真偽判定って出来ない?』
『さすがにそこまで人の心を読むのは無理ね。
でも今までの態度や話し方からすると嘘を言ってるようには
見えないけど?』
そりゃこれから領地を背負て立とうという人が
いい加減な二枚舌野郎では先行き不安しか無い。
この領地ってどんな政が為されているんだろう。ちょっと気になる。
「俺、まだここに来たばかりだからもう少しあちこち見てみたいんだけど。
今日はもう帰るけど2,3日したらまた来るから
その時改めて会って貰える?」
「あ、ああ。また来てくれるならその時に話の続きをしよう。
この屋敷に直接来てくれるかい?執事にちゃんと言っておくから」
「じゃあ、明後日か、明々後日。天気次第ではその先になるかもしれない」
「良いよ。待ってるから。君とは絶対友達になっておくべきだって
僕の勘がそう言ってるからね」
「俺は勘、外してばっかり」
「今日警戒した事が外れだって事、次回会った時に判って貰えると嬉しいけどね」
あっさりと引き下がってくれたことに安堵して
門の前まで見送って貰って別れた。
チャリを押して街の中を見て回る。
綺麗に整備された街道、街並み。
裏路地に入っても危なそうな物陰やごみは無い。
人々も笑顔が絶えず子供も走り回っている。
外壁に近づいても人が疎らになるだけで荒れ地などは見当たらない。
ざっと見てきた感じ領都の管理はしっかり為されているのだろう。
外壁から出てチャリで街道を走る。振り返っても怪しい人影は見当たらない。
暫く走って木陰に入りスマホで不審者の探索をしてみたが
半径500メートル以内には怪しい影は無い。
隠蔽魔法を発動して貰って来た時と同じように洞窟迄飛ばして帰った。




