23 初めての領都
敵意を持った奴が近くにいるのだろう。
気付かない振りをしてチャリを押して森の道に入る。
相手からはこちらが見えない物陰に入ったらチャリに隠蔽魔法を発動して貰い
同時にリリィに遮音魔法も発動して貰う。
スマホのカメラ機能を作動させ敵が来るのを待ち構える。
挙動不審な人相の悪い男三人が近づいて来た。
「どこへ行きやがった?」
「消えちまいましたね。魔法でも使ったんじゃないですか?」
「バカ言え!あんなガキが隠蔽魔法なんて使えるわきゃ無いだろ」
「それもそうですが・・・他にどうやったんです?」
「あの魔道具みたいなので飛んで逃げたとか・・・」
「それはもっと無理があるだろ。とにかくもう少し探してみろ」
一応三人の写真を撮り終えてこれ以上危険を冒す事も無いかと
その場を静かに離れる事にした。
チャリに跨りスマホにハリスト王国領都と入力する。
地図が国単位に縮小され押しピンマークが沢山現れた。
現在地付近を拡大すると一番近いのはウェストン領領都だ。
ここはウェストン領なのだろう。
『リリィ、ウェストン領都の街まで案内よろしく』
『ゆっくり行っても五分くらいね』
チャリを漕ぎだし森を抜ける前に隠蔽魔法を解いて貰った。
ずっとチャリと行動するのだから姿を隠したままにする気はない。
俺の魔道具だと周りに認識してもらわなければそのうち身動きが
取れなくなるかも知れない。但し魔法が使える事は内緒だ。
あくまで馬車並みの速さが出せる乗り物としてだけ認識してもらう。
リリィが精霊同士の意思疎通でチャリに指示をして領都の街の外壁門に着いた。
門番が「変わった物に乗っているな」と聞いたので
「特注の魔道具ですがまだ試作段階なんです。叔父に頼まれて試運転中です」
と適当な事を言っておく。
「そ、そうなのか?暴走したりしないだろうな?」
「まだ本体の試作だけで魔力は無いです」
「なら安心か。十三歳以上の未成年の入都税は鉄貨一枚だ」
「冒険者特典は無いですか?」
「登録証は?」
先ほど作ったばかりのカードを見せる。
「確認した。通って良いぞ」
冒険者は入都税も要らないのか。作っておいて正解だ。
ゆっくり見物する為にチャリを押して歩く。
中心に近付くにつれて賑わいが増し建物も立派な物が増えてきた。
やがて見えてきた広場の一角に市のようなモノが立っている。
近付いて行くと野菜とか果物のほかに串焼きっぽい物や
日用雑貨なんかを売っている店もある。
今欲しいのはまな板や鍋、ちょっとした皿なんかも欲しい。
それらしい店に近づくと愛想の良いおばちゃんが
「いらっしゃい」と声を掛けてくれた。
ここは主に木製の台所用品店と言った感じだ。
今日のところは最低限欲しい物を買っておくことにする。
まだ駆け出し冒険者で懐事情は芳しくない。
木製のまな板と大皿一枚、大き目ボール一つ、椀を六個とコップを六個
玉杓子を一つ、木べらを一本。
それでも銅貨一枚鉄火三枚の出費だ。
おばちゃんが「商売用の買い出しかい?」と聞いたので頷いておく。
その三軒隣の金物屋っぽい店で直径30センチくらいの鍋を一つ買った。
こちらは流石に値が張って銅貨と半銅貨一枚ずつ・・・
大鍋はおっ母が婦人会の炊き出しなんかでチャリに積んで持って行く事も
あったけどあれじゃあ使い勝手が悪すぎる。
鍋とボールに小物をほり込んで風呂敷で纏めたが結構な荷物になった。
もうちょっとゆっくり見て回りたかったが広場を後にして
人目のない所でチャリに収納して貰った。
「なんだ、アイテムボックス持ちか」
と後ろから聞こえた声に驚き振り返った。
そこには二十歳そこそこと言った感じの身なりの整った
イケメンな兄ちゃんが立っていた。
スマホの警報が鳴らなかった・・・敵意はなさそうだけど
後ろからそっと覗き見てるなんて怪しい事に変わりない。
「・・・」
こちらが困惑していると「怪しい者じゃないよ」
と自己申告して来た。
いやいや、そう言われて”はいそうですか”とは言えない。




