17 喋り出したスマホ
翌朝起きて爺ちゃんの真似とばかりに先ず農作業をする。
チャリに鎌と鍬を出して貰い(田舎じゃチャリに鍬や鋤を括りつけて
朝飯前に一仕事なんて日常茶飯事だ)空き地の端の草を刈り土を耕す。
ほんの少しのスペースを耕す・・・はずが慣れない仕事ですぐにバテた。
取りあえず朝飯前・・・の仕事はここまでにして昨日の川原まで
チャリに乗って移動する。
その際、走りながら昨日チャリに確認した風魔法で落ち葉を集めて
アイテムボックスに収納して貰った。
川原で顔を洗い おっ母の握り飯とコンビニチキン、スムージーで腹を満たす。
食後の運動に岩マス狙いで釣りをする。知らない魚がかかったが
ジルがいないと食用にできるか分からないのでリリースして昼前に洞窟に戻った。
朝切り開いた場所にスコップで幾つか穴を掘り
その中にさっき集めて貰った落ち葉を放り込む。
化学肥料も出せない事は無いが、この世界に存在していない物を使うと
後々どんな影響が有るか分からないので使う事は控えておく。
穴の中の落ち葉に土を被せて小枝で開けた穴にカボチャの種を埋めていく。
水を入れてきたバケツとおっ母愛用のジョウロを出して貰って
被せた土の上に水を撒いた。
朝から仕事らしいことをしたので一息入れようと洞窟の中の岩に腰掛けた。
そういえば一昨日家を出るときに残量が少ないから念のためにと
電源を落としたままになっているスマホの存在を思い出した。
いつもなら四六時中覗いている画面を見る余裕もなかった。
それに異世界に電波が来ているとも思えないし、ネット繋がっていなければ
撮り溜めた釣果の写真を見るくらいしか用はない。
まだ電池残ってるかな、と思いながら電源ボタンを長押しした。
「いつまで待たせてんのよ!」
という声と共に画面が明るくなった。
「・・・」
何処で声がした?とあたりを見回すが、洞窟の中には俺とチャリ以外何もない。
「どこ見てんのよ、手元を見なさいよ!」
という声に手元のスマホに目を移す・・・
画面には俺の釣った自慢の大イワナが背景と共に映っているだけだ。
よく見ると残り少なかった電池残量は100%に戻っている。
チャリが充電してくれたのか?と考えているとスマホから声が聞こえてきた。
「私達は元は古代魔道具に宿っていた精霊よ。
いろいろあって宿る事の出来そうな道具を探して彷徨ってたところに
あんた達が現れたってわけ。」
どうやら声の主は精霊らしい。さすが異世界!
「魔道具に宿っていた精霊?」
「話せば長くなるけど聞きたい?」
そりゃ聞きたいに決まってる。
自分は魔法も使えないのにチャリやらスマホが魔法使ったり喋ったりするなんて
納得のいく説明を聞きたいのは当たり前の事だ。
「俺が異世界から来たのも知ってるのか?」
「異世界って言うのは分からないけれど、貴方の持ってる道具が
私達の知る範囲のこの世界に存在していない事だけは分かるわ」
「そっか。異世界ってのは知らないんだ。とりあえず君達?の
事情を教えてくれる?」
そんな訳でスマホから聞こえてくる声に耳を傾ける事となった。




