15 ジルと姉ちゃん
そんな他愛もない話をしていたら昼の営業時間が終わったらしく
ベティさんが呼びに来たのですっかり静かになった食堂へ戻って椅子に腰かけた。
休憩室へ賄を持って移動する老夫婦に軽く会釈するとにっこり笑って
「ゆっくりしていって」と声を掛けてくれた。
ベティさんも賄のトレーを持って隣り合った俺とジルの正面に腰掛けた。
俺がチャリから持って来たカボチャをテーブルの上に置くと二人揃って
「それ、なあに?」と聞いてきた。
「これ俺の田舎ではカボチャって言うんだけどこの辺りには無い?」
「えっ、こんな大きくて黒っぽいのがカボチャ?それにとてもかたそうだけど・・・」
「硬いのは間違いないけど。ここのかぼちゃは黒っぽくないのか?」
まあ、あっちの世界でもオレンジのやら白っぽいのもあったから
不思議ではないけど。
「この辺りのは緑だったり黄色だったり、縞模様だったり、細長かったり
丸っこいのも有るけど硬くは無いわね」
それってひょっとしてズッキーニじゃないのか?
「これ、後でさっきの焼肉みたいな味で煮物にしてほしいんだけど・・・
たださっき言った通り結構硬いんだ。」
「そうなの?」
と言ってベティさんが手をかざすとカボチャは見事に真っ二つに切れた。
「 ! どうやったんだ?」
「私、風魔法が使えるから。でも真っすぐ切る事は出来るけど
皮を剥くとか、曲げては切るとか、もっと堅いものとかは切れないけどね。」
いやいや、真っすぐ切るだけでも凄いや。
彼女が食事を終えたので厨房へ移動して煮物を作って貰う。
「皮は剥かずに中の種を取って芋みたいに煮付ければ良いと思う。
試しに半分、崩れやすいからあんまりに過ぎない様に気をつけて」
はっきり言って煮つけは良く食べるけど作り方なんか分からないから
お任せするしかない。
種だけ綺麗に回収しておく。
出来上がった煮物を三人で試食する。
「本当は冷めるまで待った方が味が染みるみたいだけど・・・」
「えっ、なにこれ!ほくほくで素材自体に甘味が有って美味しい。
芋だとこんなに甘味を感じないもの」
「んー、甘くて美味しいけどおかずって感じじゃないかな。
でも腹は膨れそう」
「まあどっちかって言うとお茶の時間の甘い物代わりって方が
良いのかな・・・」
俺の田舎じゃ婆ちゃんたちが良くお茶うけにしてるしカボチャって
どっちかって言うと女の人好みかな。
和菓子なんかにもカボチャ味って多いし・・・
「弟がすっかりお世話になっちゃってありがとう」
「いや、俺は遠くからここへ来たばかりで何にも分からないから
ジルにはこっちが世話になってる」
「そうなの?」
「ああ。昨日何も分からないでとりあえず川で釣りしている時に声を掛けてくれて
随分助かっているんだ。」
「昨日知り合ったばかり?」
「うん。釣った魚食べさせてくれたから良い兄ちゃんだと思って」
「あんた食べ物に弱いから・・・」
「パンもご馳走になった」
「食べ物貰ったからって誰にでもホイホイ付いて行っちゃダメよ」
「わかってるって」
茶菓子代わりにカボチャをつまみながら色々二人の事情を聞いた。
二人の話によると村の大人たちは農作業とかが忙しいから親に代わって
年の離れたベティさんが母親代わりにジルの面倒を見ていてジルもすっかり
懐いていたんだけど、七歳になった時にベティさんは出稼ぎに出てしまって
寂しい思いをしている様だ。
まあ、あちらの世界でも戦後まではよく有った話なのだろう。
テレビのドラマでやっていたのを婆ちゃんが涙流しながら見てたっけ。
そんな話をしていたがそろそろ夕方からの開店準備が有るって言うので
お暇する事にした。自分たちも村まで帰らなければならない。
「また来るよ」
と言って店を後にした。
チャリに跨り街中を暫く走って人通りが途絶えた頃、チャリの前に3人の男が立ち塞がった。




