11 ジルのほしい物
「兄ちゃん、これ快適だな」
「あ、ああ」
言われて初めて違和感に気付いた。
そういえば昨日必死で逃げてる時もさしてガタつきを感じなかった。
今だって小石の転がるガタガタ道だ。さすがにアスファルトの様にとはいかないが
公園の土の歩道程度の揺れだ。チャリの魔法で振動が補正されているんだろか。
そんな事を思っていたら揺れが少なくて安心したのかジルが話しかけてくる。
「兄ちゃん、今日魚がいい値で売れたら案内した褒美に昼飯奢ってくれないか?」
「ああ、昼飯代ぐらいになったら一緒に何か食おうか」
「俺、食べたいものが有るんだけど・・・」
「なんだ、食べたいもの決まってるのか?」
「うん。定食屋で定食が食べたい。」
「定食屋なんてあるのか?定食食えるくらいの稼ぎになったら
奢ってやるよ。今日は初取引になるからお祝いだな。」
「うん。ありがとう。良い値段になるように頑張るよ。」
何で定食が食べたいか分からないけど、俺にとっても異世界初のまともな食事だ。
上手くいったら記念に奮発してやろう。
そんな事を考えながらチャリを漕ぐ。
尤もこの世界へ来てからのチャリの乗り物としての性能は
アシスト付き自転車をも凌駕している。
ほとんどペダルを回さなくても勝手に前進してくれる。
速く回し過ぎるとスピードが出過ぎて息が出来なくなりそうだ。
小高い山沿いに走ってぐるっと反対側に出た所で遠くに建物がまとまって
建っているのが見えてきた。
さらに走っていくと整地された畑のような場所が町の方へと続いている。
作業をしているようで疎らに人影も見える。
「あれって何か食べ物作ってるのか?」
その農地?の中を走りながら作物を観察する。
ジルが後ろで色々説明してくれた。
「なんだ兄ちゃん、都会っ子か?畑見た事ないのか?」
「畑は知っててもどれが何の作物かは分からないな。」
「あの土から葉っぱだけ出てるのは蕪、あっちはジャガイモ、あの蔓になってるのは胡瓜・・・」
まあ、この世界の言葉が分る時点で植物の名前も分かるものばかりだけど
見た目はちょっと違っている。
名前が同じ時点で多分味や調理方法は日本のそれと変わらないのだろう。
暫く進むとぽつぽつと小さな家が見えてきた。
段々と纏まって建っている家の数が増していって
やがてさっき遠くで見つけた大きな集落の中へと入って行った。
「兄ちゃん、商店街や市場はこの街の真ん中ぐらいにある」
「了解」
さて異世界で釣った魚、ちゃんと売れると良いな。




