プレアデス
月。
「全ての悪意の集合体!?」
少年は、今回の事件の黒幕を知った。
「そうだ。無は、人の憎しみや絶望から生まれている。そして、今も誰かが悪意を抱いていれば生まれ続けている無限の存在だ。」
無は、愛も希望も失くした無数の意思が集まった存在。
「無は太陽は熱くて手に入らないのなら、静かに輝いている月に近づいたのだ。」
そして、狙われたのはかぐや姫だった。
「そんな!? どうすれば無を倒すことができるんですか!?」
「分からない。生命の悪意は、生命がある限り生まれ続けるのだから。」
無の倒し方は、夜の月の支配者ツクヨミでも分からなかった。
「だが、無が全てを滅ぼそうとするなら、攻めてくるだろう。我々は、それに愛応しなければいけない。」
ツクヨミは、無が攻めてくると予想している。
「ごめんぴょん。俺がかぐや姫様を起こしてしまったばっかりに・・・・・・。」
月の精霊のうさぎが申し訳なさそうにやってきた。
「うさぴょんは悪くないよ。だって、知らなかったんだもの。」
「ありがとう! 昴! 優しいぴょん!」
少年と月の精霊のうさぎに友情の絆につながっている。
「私も悪かったのだ。みんなに黙っていた。一人でかぐや姫から無を引き離そうとしてできなかった。最初から隠さずに、みんなに話していれば良かった。」
夜の月の支配者ツクヨミも自身の力を過信して過ちを犯していた。
「そんなことはないですよ! ツクヨミさんも事が事だけに隠していただけなので。」
「ありがとう。新しい月の騎士よ。」
少年の優しさが神でもあるツクヨミの心を救う。
ピキーン!
(なんだ!? この少年から感じる輝きは、月? 星? 違う!? もっと何か熱いものだ!?)
夜の月の支配者ツクヨミは少年の中に眠る何かを感じ取った。
「???」
自分を見つめている夜の月の支配者ツクヨミの顔を不思議そうな顔で見ている少年。
「ツクヨミさん。僕たちが戦う理由はないですよね。だったらルナさんたちの意識を呼び戻してくださいよ。」
「そうだね。彼女たちにはこれから、自分の惑星を守ってもらわないといけないからね。」
パチン!
ツクヨミが指を弾いた。
「はあっ!? ここは!?」
「ツクヨミ!? 昴!?」
「危ないわ!? 離れて!?」
月の騎士ルナたちは目覚めた。しかし意識が飛んでいた間の記憶はない。
「うわああああー!? やめてください!? ルナさん!? ヴィーナスさん!? マーキュリーさん!?」
「やめるぴょん!? 誤解だったぴょん!?」
身振り手振りのオーバーリアクションで、必死に戦いを止めようとする少年と月の精霊のうさぎ。
「あいつらは何をやっているんだ!?」
「もしかしたら!? ツクヨミに操られているのでは!?」
「私に任せろ。ツクヨミ諸共、吹き飛ばしてやる!」
何も知らない惑星の騎士たちは状況が理解できない。
「ギャアアアアアアー! ルナさんに殺される!?」
「うさぎの丸焼きは美味しくないぴょん!? やめてぴょん!?」
生命の危機を感じる少年と月の精霊のうさぎ。
「やめろ!」
その時、大きな声で威圧し全員の行動を止める者が現れる。
「おまえは!?」
星の輝きを放つ鎧をまとった騎士が現れる。
「俺は、星座騎士団の十二星座将軍の一人。牡牛座のタウラスだ。」
現れたのは牡牛座のタウラス。
「隠れて一部始終見ていたが、ツクヨミ様は悪くない。悪いのはかぐや姫様に取りついた、無だ。」
「なんだと!?」
牡牛座のタウラスは隠れて、夜の月の支配者ツクヨミと悪意の集合体の無とのやり取りを見ていた。
「俺の言うことが信じられないなら、そこの少年とうさぎに聞くがいい。」
「本当か?」
「はい。本当です。かぐや姫様は無というものに体を乗っ取られ、ブラックホールに消えていきました。」
「そうだぴょん! ツクヨミ様は悪くないぴょん!」
必死に事情を説明する少年と月の精霊のうさぎ。
「分かった。信じるわ。」
「マーキュリー!? 信じていいのか?」
「少なくても、昴が私たちに嘘をつく理由がないもの。」
水星の騎士マーキュリーは、少年を信じていた。
「ありがとうございます! マーキュリーさん!」
「分かった。私も信じよう。」
金星の騎士ヴィーナスも剣を鞘に納めた。
「チッ。」
月の騎士ルナだけは不満そうだった。
「ヴィーナスさん、ルナさん、ありがとうございます。」
「ふう~。これで一安心だぴょん。」
少年は感謝し、月の精霊のうさぎは命拾いした。
「で、おまえの用は何だ?」
「俺は・・・・・・プレアデスを連れていく。」
「プレアデス?」
その名を言われても誰も分からない。
「その少年は、星座騎士だ。」
「ええー!? 僕が星座騎士!?」
牡牛座のタウラスは少年を指さし、本来、月の騎士ではなく、星座騎士だという。
「バカな!? 月の騎士が、星座騎士のはずがない!?」
惑星の騎士たちは誰も話を信じない。
「少年。アリエスにあったそうだな。」
「はい。アリエスさんには、宇宙飛行の方法を教わりました。」
少年は、既に星座騎士に出会っていた。
「アリエスがおまえに会い、違和感を感じ、俺に会いに来た。おまえは、プレアデスだと。」
「プレアデス!? 僕の名前は陽月昴ですよ!?」
「昴は、プレアデスを刺す。そして、プレアデスは、俺の星座の一部の星団だ。おまえは、星々を束ねる者になる、運命。」
少年の運命が知らされる。
「ええー!? 絶対にないですよ!? ありえませんって!? 僕は、ただ宇宙が好きなだけですから!?」
信じられないので少年は否定する。
「少しいいかな?」
夜の月の支配者ツクヨミが語り始める。
「私も彼に違和感を感じ、複数の輝きを感じていた。かぐや姫が彼の中の月を感じ、月の騎士にしたのもそう。タウラスが彼にプレアデスを感じるのもそう。きっと彼は月と星を宿す者なんだろう。」
「僕が月と星を!?」
今、明かされる少年のルーツ。
ピキーン!
「そうか! 昴は、地球人だから、私たちの常識が通用しないのかも!?」
水星の騎士マーキュリーは、頭脳明晰に少年のことを思考して可能性を出した。
「地球人!? 地球人が月の騎士になれたというのか? それなら、地球人が星座騎士になっても問題はないな。」
あくまでも牡牛座のタウラスは、少年を星座騎士にして連れていくつもりだ。
「昴。俺と一緒にこい。おまえがいるべき場所は、ここじゃない。宇宙の星の上だ。」
「い、いきなり!? そんなことを言われても!?」
急な選択を迫られ困ってしまう少年。
「どうしましょう? ルナさん?」
少年は、月の騎士のルナに助けを求める。
「私に聞くな。自分のことは自分で決めろ。こっちは事態が事態だけに忙しいんだ。」
ルナ的には、普通に答えたつもりだった。
「そ、そんな!?」
しかし、少年には自分は必要ないと言われているように感じてしまった。
「確かに、これから私たちは、無から自分たちの惑星を守らないといけない。」
夜の月の支配者ツクヨミの言葉は、金星の騎士ヴィーナス、水星の騎士マーキュリーにも重くのしかかる。
「彼が星座騎士というなら、タウラスに任せた方がいいのかもしれないね。」
「決まりだな。ワッハッハー!」
上機嫌な牡牛座のタウラス。
「・・・・・・。」
少年は捨てられた子犬の気分だった。
「ヴィーナスとマーキュリーは自分の惑星に帰った方がいい。何が起こるか分からないからね。」
「はい。」
「ルナ。がんばってね。」
「ああ。」
金星の騎士ヴィーナスと水星の騎士マーキュリーは夜の月の支配者ツクヨミの指示に従い、金色と水色の光になり帰路に立つ。
「ルナは、火星に行ったアルテミスとセレーネーを呼び戻しに行ってくれ。月もいつ攻められるかもしれないからね。」
「分かった。」
決して胸糞悪い相手に「はい。」とは言わない月の騎士のルナ。
「おい。強くなれ。強くなれば必要とされるぞ。」
「ルナさん。」
月の騎士ルナは、少年に一言だけ声をかけて、銀色の光となり火星に向かった。
「・・・・・・。」
少年は一人取り残された。
「大丈夫かぴょん?」
月の精霊のうさぎは少年を気遣う。
「・・・・・・。」
やっと少年は顔をあげる。
「タウラスさん! 僕を鍛えてください! 僕は強くなって、みなさんを助けます!」
「ズコー!?」
月の精霊のうさぎはズッコケるしかなかった。
「僕は強くなる! かぐや姫様も助けます! 無も倒します! 大好きな宇宙を僕が守ります!」
「ワッハッハー! それでこそ、星座騎士だ!」
少年の顔が輝いていたので牡牛座のタウラスは大笑いした。
「俺の同情を返せぴょん!」
「ごめんね。」
やるせない月の精霊のうさぎ。
「いいだろう。俺が一人前に戦えるように強くしてやろう。」
「はい! お願いします!」
少年は、月の騎士ルナの最後の一言に救われた。言葉は悪いが自分のなすべきことを教えてくれたのだ。
「ツクヨミ様。失礼致します。」
「お世話になりました。」
「気をつけて。」
少年と牡牛座のタウラスは、月の夜の支配者ツクヨミに挨拶をして、星の輝きの軌跡を描きながら飛び立った。
ピキーン!
「しまった!? 一匹取り残されたぴょん!?」
かぐや姫も少年も月の騎士もいない絶体絶命の月の精霊のうさぎ。
「ツクヨミ様! これからよろしくお願いしますぴょん!」
「・・・・・・よ、よろしく。」
月の精霊のうさぎの変わり身の早さに、さすがの夜の月の支配者ツクヨミも言葉を詰まらせた。
「それでは黒うさぎを探してきてくれるかな?」
「はい! お安い御用だぴょん!」
その場から逃げ去るみたいに月の精霊の銀うさぎは猛スピードで離脱した。
火星。
「早くルナが助けに来てくれないかな? タコが酸素の無い所で火を吐けるとかおかし過ぎるだろうが!?」
案の定、月の騎士アルテミスとセレーネーは、ツクヨミを騙すためにダミーを引き連れて火星に向かった。
「火星の神秘よ。いやいや。それよりもツクヨミを倒して、かぐや姫様を救出する方が先でしょ。」
そして、捕まった。
「うるさいですね。口も塞ぎますよ?」
二人を捕まえたのは、火星の騎士マーズであった。
「ていうか、火星の騎士なのに、なぜ丁寧語!? もっと、こう、情熱的なキャラが普通だろうが!?」
思わずツッコむ月の騎士アルテミス。
「ギャップ萌えです。ニコッ!」
可愛く笑って見せる火星の騎士マーズ。
「勝てない。ある意味で勝てない気がする。こいつには・・・・・・。」
月の騎士セレーネーは諦めた。
「でも、絶対にルナがキレるタイプだ!?」
「そうね。助けが来るまで大人しくしておきましょう。」
ルナ、早く助けに来て~! と心の中で叫ぶ月の騎士のアルテミスとセレーネー。
ブラックホール内部。
「いでよ! 我がしもべたち!」
無は何もない所から、無数の悪意を形にしていく。
「私は、更に力を蓄えるために、眠りにつく。次に目覚めた時には、私は宇宙魔王を名乗り、全てを無に帰すだろう。」
無の目的は、生きとし生けるものを無くすことであった。
「皆の者、私の代わりに、クロアナの指示に従うように。」
クロアナ。発音はダイアナと同じである。黒い細いカワイイ猫であった。体は宇宙模様であった。
「・・・・・・zzz。」
無は眠りに落ちた。
「私は、無であらせられる宇宙魔王様から全権を授かった! 皆の者! 私の言うことに従ってもらうぞ!」
宇宙猫が喋り始めた。
「フッ。あんな細い猫如きになぜ、俺様が従わなければいけないんだ? ワッハッハー!」
無が生み出したしもべの一人がクロアナを否定した。
ピキーン!
「ニャアー!!!!!!」
クロアナは口を大きく広げた。
「うわああああああー!?」
文句を言ったしもべがクロアナの口に吸い込まれていく。その様子は、正に、ブラックホール。正に、無でもあった。
「言ったはずだ。私は、宇宙魔王様から全権を授かったと。」
そして吸い込んだクロアナは太った。
「クロアナ様。何なりとお申し付けください。」
一人の犠牲で、全てのしもべの忠誠を得たクロアナ。
「宇宙魔王様が目覚めた時に喜んでいただこうではないか。そのために全ての惑星を支配するのだ。全ては、宇宙魔王様のために。」
「ははあ!」
無が呼び出した、しもべたちがブラックホールから飛び立って闇に消えていく。
「面白いものだな。ただの悪意だった私が、形を成し、体を得、権力までも得るとは。」
クロアナも全ての悪意の集合体に過ぎない。
「これで宇宙魔王を目覚めさせなければ、全ての世界は私のものではないか! ワッハッハー!」
悪意の集合体のクロアナに、宇宙魔王への忠誠心などなかった。
「毎日、楽しんで生きてやるぞ!。ワッハッハー!」
笑いが止まらない宇宙猫クロアナであった。
つづく。




