水星の騎士マーキュリー
「ギャアアアアアアー!」
タコの騎士オクトパスのサンダー・ショックにより、感電し寸前の少年。
「これで終わりだ! 最大ボルト!」
触手に流す電圧を最大に上げるタコの騎士オクトパス。
バキューン!
銀の矢が触手を射抜き大破させる。
「待たせたね!」
月の騎士のアルテミスとセレーネーが少年に追いついてきた。
「ぴょんぴょん!」
月の精霊のうさぎは二人の後ろに隠れている。
「みなさん! 来てくれたんですね!」
「遅くなって、ごめんね。」
「直ぐに回復するね。ムーン・ヒーリング!」
月の騎士のセレーネーが月の癒しの光で少年の体力を回復していく。
「チッ!? 邪魔が入ったか!? だが、これだけの数のタコのサンダー・ショックに耐えれるかな!? 終わりだー!」
少年と月の騎士たちは、黒タコに周囲を囲まれてしまっていた。
「おまえがな。」
ドカドカドカー!
次々と包囲している黒タコの壁が撃破されていく。
「なに!?」
水星の騎士のマーキュリーが水色の軌道を描きながら、次々と黒タコを倒していく。
「くらえ! 月の輝きを! 必殺! ムーン・スラッシュー!」
「ギャアアアアアアー!」
月の騎士ルナは、ひっそりとタコの騎士オクトパスの間合いに入っていた。そして月の斬撃がタコの騎士オクトパスの触手を切り落とす。
「これで電気攻撃はできまい。」
「バカな!? おまえは、水星の側で戦っていたはずだ!?」
「・・・・・・ワッハッハ! あれはフェイクだ。」
月の騎士ルナは笑いが抑えられなかった。
「なにー!?」
そこに黒タコを殲滅した水星の騎士マーキュリーも現れる。
「その通り。仲たがいしていれば、おまえたちが現れると思って、わざと戦って見せたんだ。私の策にハマったのだ! アハハハハッ!」
罠を考えたのは水星の騎士マーキュリーであった。
「クソッ!? タコを騙すとは罰当たりな!? おまえたち、タコに呪われるからな! 覚えてろよ!」
タコの騎士オクトパスは逃げていく。
「忘れた。覚えるだけ、自分の記憶力を使うのがもったいない。」
「こちらは星を一つかけて戦っているんだ。タコ如きとは、背負っているものの重さが違うんだよ。」
圧倒的な強さを誇る月の騎士ルナと水星の騎士マーキュリーはタコの恨みなど怖くなかった。
「かぐや姫様はいないが、良かったら水星に寄ってくれ。お茶くらいは出すぞ。」
「嫌だ。水星の環境は、お肌に悪いから。」
「おまえは昔から、そういう奴だったな。」
水星の騎士マーキュリーからのお茶の誘いを断る月の騎士ルナ。
「あの、僕は陽月昴と言います。新しい月の騎士です。」
「私は水星の騎士マーキュリーだ。」
「質問してもいいですか?」
「どうぞ。」
「マーキュリーさんや水星に住んでいる人達は、どうやって水星の過酷な環境に対応しているんですか?」
良い質問をする少年。
「それは体の表面に水を張りバリアの様にして、体に負荷がかからないようにしているんだ。」
「水星の神秘だぴょん!」
戦闘が終わったので、隠れていた月の精霊のうさぎが現れる。
「ありがとうございました。」
謎が解決されてスッキリする少年。
「マーキュリー。かぐや姫様はどこにいると思う?」
「でも、あれだな。普通、かぐや姫様が誘拐されるとは考えにくい。誰かが月で手引きしていないとな。」
水星の騎士マーキュリーは、月に内通者がいると仮定する。
ピキーン!
「私は、ツクヨミが怪しいと思うな。」
知性の高い水星の騎士マーキュリーは、かぐや姫誘拐事件の首謀者を、夜の月の支配者ツクヨミだと予想した。
「さすがマーキュリーだ。」
「みんなと一緒だね。」
「それって、すごいのか、すごくないのか、微妙なんだけど?」
「ワッハッハー!」
水星の騎士マーキュリーの気遣いで場が和む。
「問題は、証拠がないんだ。ツクヨミ様が誘拐の協力者だという証拠があれば戦えるのに・・・・・・。」
ピキーン!
「そんなことか。証拠がなければ、証拠を作ればいいんだよ。」
「おお! さすがマーキュリー!」
「私は宇宙一の頭脳だからな! ワッハッハー!」
得意げな水星の騎士マーキュリー。
「で、その方法は?」
「こいつだ。」
「ぴょん!?」
月の精霊のうさぎを水星の騎士マーキュリーは指さした。
「ツクヨミは、ペットの黒うさぎを飼っている。あいつは企みの全てを知っているはずだ。あいつを捕まえて、こいつとすり替えるんだ。そうすれば、ツクヨミの証拠を見つけられるはずだ。」
「おお! さすがマーキュリー!」
「その方法でいこう!」
月の騎士たちによる、月のうさぎ交換作戦が行われることになった。
「うさピョン。がんばってね。」
「嫌だ!? 死にたくないピョン!? うさぎにも人権を!?」
ツクヨミの側に行く月の精霊のうさぎは命がけであった。
「私も行こう。黒タコも倒したし、当分の間、水星にはやってこないだろうからな。」
「頼もしいな。」
水星の騎士マーキュリーが仲間に加わった。
「でも、私たちだけでも戦力不足だ。ツクヨミは、神だからね。私たちだけでは勝てないかもしれない・・・・・・。」
月の夜の支配者ツクヨミの力は想像を遥かに超える。
「金星に寄ろう。金星の騎士ヴィーナスの力も借りよう。」
戦力アップのために金星の騎士ヴィーナスにも参戦してもらおうと提言する。水星の騎士マーキュリー。
「それはちょっと・・・・・・。」
「どうしたの?」
「あそこで拗ねている人が・・・・・・。」
「イジイジ。」
「ゲッ!?」
月の騎士ルナは、ライバルである金星の騎士ヴィーナスの力を借りるのは気が進まなかった。
「宇宙最強の私がいれば、金星の力を借りなくても、ツクヨミに勝てる!」
あくまでも自力を主張する月の騎士ルナ。
「最強が一人より二人の方が、神に勝つ確率があがるよ。」
「よし。金星に寄ろう。」
「・・・・・・。」
月の騎士ルナの意見は無視されて、月の騎士たちは金星に寄ることになった。
(ドンマイ。ルナさん。)
プライドを考えると、少年は決して月の騎士ルナに声をかけることはできなかった。
惑星タコ。
「・・・・・・。」
傷ついたタコの騎士オクトパスは、宇宙の海の塩水の入った、タコの生命維持装置に入っている。
「ワッハッハー! 派手にやられたな! オクトパス! タコが触手を失ったら、タコとは言えないな! ワッハッハー!」
月の騎士たちにコテンパンにやられたタコの騎士オクトパスをあざ笑う、タコの騎士クラーケン。
「・・・・・・。」
返す言葉がないのか、タコの騎士オクトパスは黙って耐えている。
「触手に電気を流すなど、誰でも思いつくレベルだ。俺の開発した新型タコを見て驚くがいい。ワッハッハー!」
タコの騎士クラーケンは、新兵器ではなく、タコ本体を改良したという。いったい何をしたのであろうか。
金星。
「おお! よく来た! 月の騎士たちよ!」
金星にたどり着いた月の騎士たちを、金星の騎士ヴィーナスが出迎える。
「フン、最近来たばかりだろうが・・・・・・。」
「なんか言ったか?」
「別に。」
会えば月の騎士ルナと金星の騎士ヴィーナスはケンカばかりやりあっていた。
「なんなら、ここで勝負をつけたやってもいいんだぞ?」
「望むところだ! やはり騎士は剣で語らうものだ! どちらが宇宙最強か決めようではないか!」
挑発と宣戦布告を行う二人。
「やめい! 私たちは争いに来たのではない。助けを借りたくて来たのだから。」
「クッ!? 命拾いしたな。ケッ。」
二人の間に水星の騎士マーキュリーが割って入り止める。
「すごいな。ルナを止めたよ。さすがマーキュリー。」
「私たちは、ルナを止める気にならないもんね。」
「これも宇宙の神秘だぴょん!」
月の騎士のアルテミスとセレーネー、月の精霊のうさぎは感心した。
「アハハハハッ・・・・・・。」
少年は笑うしかできなかった。
「いいだろう。ツクヨミ討伐に力を貸してやっても。」
「本当? ありがとう!」
「ただし・・・・・・そこの口の利き方が分かっていない、生意気な騎士道を汚している奴が、私に頭を下げてお願いするというのであればな。」
「なに!?」
援軍の要請に条件は、無礼な態度の月の騎士ルナの謝罪であった。
「私に!? おまえなんかに頭を下げろというのか!?」
この条件は、月の騎士ルナにとっては屈辱的なものだった。
(どうする? 究極の選択だ。ルナ一人でもツクヨミを倒せるかもしれないが、ヴィーナスと二人で戦ってもらった方が勝つ確率が上がる。でも、どうやってルナを説得すればいいんだ!?)
水星の騎士マーキュリーは冷静に状況を分析する。
「さあ! さあ! さあ! どうする? ルナちゃん?」
「誰がおまえなんかに頭を下げるか!」
交渉決裂に思えた。
「ルナさん。」
その時、少年が月の騎士ルナに声をかけた。
「全てはかぐや姫様を助けるためです。ヴィーナスさんにも助けてもらましょうよ。」
「うっ!?」
少年の月の正当な支配者のかぐや姫様を助けるためという言葉に、騎士であるルナは言い返すことができなかった。
(ほ~。ルナの痛い所を突いたな。あの少年、少し見ない間に、成長したものだ。)
金星の騎士ヴィーナスは、少年の成長を喜んだ。
ピキーン!
(なんだ? 月の騎士のはずなのに、少年の中に大きな星の輝きを感じる!? 何かあったのか!?)
金星の騎士ヴィーナスは、少年が牡羊座の騎士アリエスと出会ったことにより、一つの星の輝きを放つことを感じ取った。
「・・・・・・分かった。全てはかぐや姫様のためだ。」
「ありがとうございます! ルナさん!」
月の騎士ルナはプライドを捨てた。
「おい。そこのゲス女。力を貸せ。かぐや姫様を助け出したら、おまえの首をいただくからな。」
「おまえは、子供か!?」
ペコリ。最後に頭を下げてお願いはするが、月の騎士ルナの言葉には棘があった。
「ゴホン。まあ、いい。私に頭を下げたのだからな。私も月に行こう。」
「やったー!」
「これから、よろしくね!」
金星の騎士ヴィーナスが仲間に加わった。
「それにしても、名前は昴だったっけ?」
「はい。陽月昴です。」
「よく、ルナに意見したな。怖くなかったのか?」
「はい。僕はルナさんを信頼しています。ちょっと口は悪いですが、困っている時は助けてくれますから。」
少年は、月の騎士ルナのことを信じていた。
「アッハッハッハ! だとよ。」
「うるさい。切り刻むぞ。」
月の騎士ルナは照れ隠しに口が悪かった。
「あの、ヴィーナスさん。」
「なんだい?」
「僕は、宇宙の争いを終わらせる騎士になりたいんです! そのためには弱いままじゃいけない。強くなりたい! もっと、強くなりたいんです!」
少年は、タコの騎士オクトパスとの戦いでも、仲間の足手まといだったことを悔やんでいた。
「俺は必ず強くなる! 大好きな宇宙の平和を守りたい! 悪い者を倒したいんです! 本当の僕は戦いたくない。でも戦わなきゃならない! 戦わないと戦いが終わらないのが、僕なんかでも分かるんです!」
実践を繰り返してきて、死地を実感した少年の言葉には生きている実感がこもっていた。
「気に入った。いいだろう。こいつは借りていくぞ。」
「ありがとうございます!」
金星の騎士ヴィーナスは少年の稽古に付き合うことにした。
宇宙空間。
「まずは、どれだけ強くなったか見せてくれ。」
星を傷つけたくないので、宇宙空間で修行を始める金星の騎士ヴィーナスと少年。
「はい!」
(動け。動け! 動け―!)
少年は、自分の意思で宇宙空間で360度回転飛行を行う。
「えい! やあ! たあー!」
そして剣を振り下ろし、振り上げ、突き、横から斬る。
(これは驚いた!? 月の騎士といっても名ばかりだった地球人の少年が、こうも早くに宇宙空間に順応するとは!?)
少年の成長速度は、金星の騎士ヴィーナスの想像を遥かに凌駕していた。
「惑星の神秘の力も使えるかい?」
「はい! 月よ! 我に力を与えたまえ! ムーン・ライト!」
少年は月の光をぶっ放す。
「どうですか?」
「いいんじゃないか。後でアルテミスやセレーネーからも月の神秘の使い方を教わるがいい。そうすれば矢も回復もできるようになるだろう。」
「はい! ありがとうございます!」
純粋ゆえに素直に金星の騎士ヴィーナスのアドバイスに耳を傾ける少年。
「もしかして、星の神秘も使うことができるのかい?」
「星の神秘?」
金星の騎士ヴィーナスは少年の中の星の輝きの核心に触れる。
「使えません・・・・・・でも、宇宙で迷子になっている時に、牡羊座の騎士アリエスさんに出会って、宇宙飛行の方法を教えてもらいました!」
「アリエスだと!?」
牡羊座の騎士アリエスは星座騎士団の12星座将軍の一人である。
「はい。とっても気さくで笑っている親切な人でしたよ。」
ピキーン!
「おしゃべりはここまでだ。タコさんのお出ましだ。」
金星の騎士ヴィーナスは宇宙タコを感知した。
「で、デカい!?」
少年の目の前に現れたタコは、通常の10倍はある巨大サイズだった。
つづく。




