牡羊座の騎士アリエス
宇宙空間。
「おい。私が押してやろう。」
不慣れな宇宙空間の移動に戸惑う少年に、優しく笑顔で手を差し出す月の騎士ルナ。
「いいんですか!? やったー! ルナさんの手を握れる!」
少年は、美しい女性の手を握れるのが嬉しかった。
「はい。」
少年は月の騎士ルナの手を握った。
「おまえの性で進軍が遅いんだよ! 吹き飛べー!!!!!!」
「ええー!? ギャアアアアアアー!」
月の騎士ルナはジャイアント・スイング並みの勢いで少年を水星のある方向へ放り投げた。
「スッキリした。なんて快感なんだ。アハッ!」
「鬼だぴょん!?」
快楽に酔う月の騎士ルナに怯える月の精霊のうさぎであった。
「大丈夫かな?」
「何かあったら大変だ。早く追いかけよう。」
心配してくれるのは月の騎士のアルテミスと、同じく月の騎士のセレーネーである。
「フン。」
月の騎士のルナは何とも思っていない。
「鬼。」
「なんなら、おまえも投げてやろうか?」
「結構だぴょん・・・・・・。」
(何ていうツンデレ? 薄情? 冷酷?)
月の精霊のうさぎは、月の騎士のルナが苦手だった。
宇宙空間を加速して移動している少年。
「うあああああー!」
重力のない宇宙では加速は止まることはない。
「なんてきれいなんだ! あの惑星は何かな? 星々が輝いている! 僕は大好きな宇宙に来られて幸せだな! わ~い!」
危機感よりも、少年の宇宙を愛する気持ちの方が強かった。
「まるでルナさんや、ヴィーナスさんみたいに水星になったみたいだ。」
少年の軌道は銀色の輝きを放っていた。
「・・・・・・でも、これ、どうやって止まるんだ? うわああああー!? 誰か助けてー!?」
憧れから現実に戻る少年。
ピカーン!
何かが金色に光った。
ボヨン!
「うわあ!? なんだ!?」
少年と金色の光がぶつかる。
「羊!?」
少年が止まれたのは、金色の羊と出会ったからだった。
「羊、羊と失礼な。」
「羊が喋った!?」
「宇宙の歪みを調べに来て、変な者に出会いましたね?」
金色の羊は、人間の姿に変わっていく。
「私は、牡羊座の騎士アリエス。」
現れたのは星座騎士のアリエスだった。
「あなたは?」
「助けてくれてありがとうございます。僕は陽月昴です。」
「銀色ということは、あなたは月の騎士なのですか? 宇宙空間で止まれない月の騎士は見たことがないのですが?」
「僕は月の騎士ですが、地球人なので。アハハハッ・・・・・・。」
「地球人!?」
牡羊座の騎士アリエスが、予想を上回る出来事に驚く。
「はい。宇宙が大好きで、かぐや姫様が呼んでくれたのですが、タコにさらわれてしまって困っています。」
ピキーン!
(なんだ!? この感覚は!? こんなハニカミながら笑っている地球人から、何を感じるというのだ!? この私が!?)
牡羊座の騎士アリエスは、少年に何かを得体のしれないものを感じていた。
「・・・・・・意思です。宇宙空間の無重力で自由に動くためには、自分の意思で調整するんです。左なら左、360度回転したければ、回れと願えば、自分の思う通り、宇宙空間でも移動することができるでしょう。」
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます。アリエスさん。」
素直に感謝する少年。
「ん? んん? 私は星座騎士団ですよ。あなたの惑星騎士団とは、別の騎士団です。対立することもあるのですよ?」
宇宙の勢力図は複雑であった。
「でも、僕に親切にしてくれたのは、アリエスさんが先ですよ。ニコッ!」
「た、確かに!? 不思議な地球人だ。クスッ。」
変な者を見ていた牡羊座の騎士アリエスが初めて笑う。純粋な少年に心を砕いたのである。
ピキーン!
「どうやら、お仲間がやってきたみたいですね。」
「え?」
月の騎士たちが追いついてきたのであった。
「揉めたくはないので、私は失礼します。また機会があれば会いましょう。地球人よ。」
「はい。ありがとうございました。アリエスさん。」
牡羊座の騎士アリエスは金色の星の輝きになり姿を消す。
「良い人だったな。」
星と月が出会うとき、新たな光が生まれる予兆。
「お~い! 大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。」
月の騎士たちと少年が合流した。
「あれれ? どうやって止まったの?」
「実は、かくかくしかじかで・・・・・・。」
少年は、牡羊座の騎士アリエスと出会ったことを話す。
「なに!? 牡羊座の騎士アリエスだと!?」
「はい。親切で良い人でしたよ。」
「牡羊座の騎士は、星座騎士団の将軍だ。そんな大物が単独行動していたなんて!?」
「よく無事で生きていられたね?」
「え? だから、アリエスさんは優しい人でしたよ。」
実際に接した少年と、噂からイメージする牡羊座の騎士アリエスの印象が月の騎士たちとでは違っていた。
「それじゃあ、もう一度、ワープさせてやろう。」
月の騎士ルナがジャイアント・スイングが気にいったみたいだった。
「ええー!? やめてください!? 僕は宇宙空間で自由意志で移動する方法をアリエスさんから教わったんですから!?」
さすがの少年でも、二度も投げられるのは御免だった。
「やってみろ。」
「はい! 動け! 動け! 動け―!」
(意思だ! 僕の意思で無重力の宇宙空間だけど、自由に動けるようになるんだ! 僕は水星に向かうんだ! さらわれたかぐや姫様を助けたい! 大好きな宇宙の平和を守るんだ!)
少年の意思が奇跡を起こす。
「やった! 動いたぞ!」
(僕もやればできるんだ! やれる方法さえ分かれば、僕にだって宇宙を飛ぶことができるんだ! やったー!)
少年の体が水星の方向に動いていく。
「おお!? 動いた!?」
「おめでとう!」
「これも宇宙の神秘だぴょん!」
少年は、宇宙空間の移動を覚えた。
「チッ。」
月の騎士ルナだけは納得していなかった。
「行くぞ! 水星!」
「おお!」
月の騎士たちは月へ向けて行軍を始めた。
惑星タコ。
「無様だな。クラーケン。」
タコの騎士クラーケンも月の騎士に負けて帰還した。
「うるさい! おまえだって負けだろうが!」
ライバルでもあるタコの騎士クラーケンとタコの騎士オクトパスは犬猿の仲だった。
「それは今までの話だ。俺はタコ改造を行い新兵器を開発した。今度こそは月の騎士どもを倒してやる!」
「新兵器だと!?」
「その通りだ。我らの科学力なら簡単に新兵器など作れるのだ。俺の凱旋を待っているんだな。ワッハッハー!」
タコの騎士オクトパスは笑いながら去っていく。
「・・・・・・。」
(新兵器か。確かに今のままでは月の騎士には勝てない!? 俺も何か新しいことを考えなければ!?)
危機感からタコの騎士たちは、レベルアップを試みる。
宇宙空間。
「見えた! 水星だ!」
月の騎士たちは水星にやってきた。
「水星って、以外に小さいんですね?」
「太陽系にある8つの惑星の中では一番小さいからな。」
「昼は400度、夜はマイナス200度の超過酷な星だ。」
水星の環境は、金星よりも過酷だった。
「ええー!? そんな所にどうやって水星人の人々は住んでいるんですか!?」
「水星の神秘だぴょん。」
何が何でも神秘を言いたい月の精霊のうさぎ。
「どうやら歓迎も過酷みたいだ。」
「え?」
月の騎士たちは水星の方向を見る。
水星近辺の宇宙空間。
「水星は私が守る! 絶対に月の騎士たちを近づかせるな!」
水星の騎士マーキュリー。水星を守護している。
「マーキュリー様。準備が整いました。」
水色の水タコが報告にやってくる。
「よし! 一斉射撃だ!」
「タコ!」
水星の騎士マーキュリーの合図で、宇宙空間に展開されていた水タコたちが、一斉に口から水を吐きだし、月の騎士たちを攻撃する。
宇宙空間。
「うわああああー!? 水が飛んでくる!?」
無重力の中で水は球体になり遠距離攻撃になりうる。
「気をつけろ! 水は宇宙空間では、沸騰して氷になるぴょん!」
「ええー!? 痛い!? 痛い!?」
水と思い油断した少年に粉雪のような氷の粒がぶつかりダメージを受ける。
「危ないなら早く言ってよ!?」
「これも宇宙の神秘だぴょん。」
宇宙は神秘に包まれていた。
「月の光よ! 我に力を! ムーン・ヒーリング!」
「ありがとうございます。セレーネーさん。」
月の騎士セレーネーの月の神秘の力で少年のダメージが回復される。
「さすがマーキュリー。素早い展開ね。私たちが来ることも予想していたのね。」
「ダメだ。ここから矢を放ち続けても、あの水タコの陣形を崩さないことには、じり貧だよ!?」
「私が行こう。」
月の騎士ルナが敵陣に特攻をかける。
「僕も行きます! 連れて行ってください!」
「足手まといだ。」
「確かに僕は弱い。でも、弱いままじゃ終われない! 僕も何かしたいんです! 宇宙を守るために強くなりたいんです!」
宇宙空間での移動を覚えた少年に少しの自信という成長が新しい意思を持たせる。
「・・・・・・。」
少し考える月の騎士ルナ。
「勝手にしろ。」
「やったー!」
「その代わり、自分の身は自分で守れ。私は助けない。」
相変わらず厳しい月の騎士ルナ
「はい! がんばります!」
少年の意思が、月の騎士ルナの心を少しだけ動かした。
「行くぞ。ついてこれないなら、置いていくぞ。」
「はい! 一生懸命ついていきます!」
月の騎士ルナが銀色の彗星の様に移動を始まる。
「僕だって! 僕だってやってやる! 僕も彗星になるんだ! 僕も流れ星のように! うおおおおー!」
少年も月の騎士ルナの後を追い、急加速していく。
(これが重力!? いや、違う。これが星になるってことなんだ!)
初めての自分の意思での加速。想像を超える彗星体験を少年は行う。
(これなら・・・・・・いける!)
宇宙飛行に自信を持った少年は、正面から飛んでくる水や氷の塊を自分の意思で360度回転しながらかわしていく。
「ヤッホー! 気持ちいい! 僕は宇宙で飛んでいるんだー!」
あり得ない快感が少年を絶頂させる。
「ルナさん! 僕も飛べましたよ!」
「・・・・・・フン。」
その光景に安心したのか、飽きれたのか、さらに加速をして少年を置き去りにする。
「えっ・・・・・・。」
宇宙に捨て犬の様に置いていかれる少年。月の騎士ルナは本気を出していなかったのだった。
宇宙空間、水星側。
「やはり来たか。」
水星の騎士マーキュリーは、月の騎士ルナを水や氷の宇宙の神秘では止めれないことを知っていた。
「やめろ。私たちはさらわれたかぐや姫様を探しているだけだ。武装を解除してもらおうか?」
月の騎士ルナは、戦う意思はないと表明している。
「そちらになくても、こちらにはある。おまえたちと戦う理由がな!」
水星の騎士マーキュリーが水星の剣を鞘から抜いて、月の騎士ルナに斬りかかる。
「なに?」
「私は水星を守護する者として、水星と星の民を守らなければいけないのだ!」
水星の騎士マーキュリーは、水星のために戦うという意思を背負っていた。
「なら、なおさら我々が戦う理由がないじゃないか?」
「ある! 宇宙タコと戦闘中のおまえたちを受け入れれば、我が水星もタコに攻撃されてしまうだろうが!」
宇宙の支配を企むタコ・キングの宇宙タコ軍団の猛威が、惑星騎士団の団結を揺るがしていた。
「要するに、私たちは邪魔者ということか?」
「そういうことだ! 水星を巻き込むなー!!!!!!」
ただ水星の騎士マーキュリーは、自分の星を守りたいだけだった。
「愚かな。自国の利だけを追求し、同志の他の星はどうなっても良いというのか!」
遂に月の騎士ルナが月の剣を抜く。
「どりゃあー!!!!!!」
「でやあー!!!!!!」
銀と水の輝きがぶつかり合う。
宇宙空間、タコさん側。
「へっへっへ。これで月の騎士たちが、水星に倒されてくれ、おまけに水星も倒されると、俺は何もしなくてもいい。これが漁夫の利というものだ! ワッハッハー!」
水星近辺に、タコの騎士オクトパス率いる黒タコ軍団が控えて様子を窺っていた。
「うわああああー!?」
敵軍の真っただ中に、早さに対応できずにバランスを崩した少年が突っ込んできた。
「なんだ!? 敵襲か!?」
騒然とするタコの騎士オクトパス。
「すいません!? すいません!? まだ宇宙飛行に慣れていなくって!?」
敵とも思わずに平謝りする少年。
「気をつけろよって、その銀色の鎧!? おまえ、月の騎士だな!?」
「はい。月の騎士見習いの陽月昴です。」
「なら・・・・・・死ね!」
「ええー!?」
オクトパスの触手が少年の腕に巻きつく。
「くらえ! サンダー・ショック!」
タコの騎士オクトパスの新兵器、触手の電気流しで、高圧電力が少年を襲う。
「うわああああー!」
全身を電気が流れ、かぐや姫様の月の加護を失った月の鎧では、電気攻撃に耐えきれない。
「これからは、タコ焼きではない! 月焼きだ! 焼けろ! 焦げろ!」
「ギャアアアアアアー!」
鉄板の上で焼かれる続けてきたタコたちの怨念が少年を襲う。
つづく。




