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流星騎士  作者: 渋谷かな
20/20

再び、宇宙へ

 月。


「昴。あなたは地球に戻る時が来ました。」


 無を倒し平和になった月。


「無との戦いで、エネルギーを使い過ぎたので、月の騎士を続けるだけのエネルギーが尽きようとしているのです。」


 少年は、戦いの中で、太陽、月、星の騎士となり活躍したが、その性で、エネルギーを使い過ぎ、宇宙に留まることが出来なくなってしまったのだ。


「月の神秘の終わりだぴょん。」


 月の精霊の銀うさぎも、月の神秘エネルギーはどうすることもできない。


「そうなんですか。悲しいですけど、お別れですね。」


 素直な少年は、月の仲間との別れを受け入れる。


「昴!? 帰るな!? 帰らないでくれ!?」


「寂しくなりますね。せっかく仲良くなれたのに。」


「・・・・・・。」


 月の騎士アルテミス、セレーネー、ルナも少年との別れを悲しんだ。


「ルナ。あんたもなんか言いなさいよ?」


「昴、戻ってくるんだろ?」


 月の騎士ルナの言葉は、少年を信頼しているから。


「はい! 何年かかるか分からないですけど、僕は宇宙に戻ってきます!」


 その問いに答える様に、少年も諦めることはなかった。


「必ず月に戻ってこいよ。覚えていてやる。」


 素直に待っているとは言えない、月の騎士のルナ。


「はい!」


 ルナの言葉に、自分も仲間だと認めてもらえたと、満面の笑みを見せる少年。


「どうも、みなさん、ありがとうございました。」


 遂に別れの時である。


「昴!? 俺は別れたくないぴょん!?」


「う~ん。じゃあ、地球に来る? 美味しい人参はあるよ?」


「いや。俺は持ちの方がいいぴょん。」


「ワッハッハー!」


 やはり月の精霊の銀うさぎは、月のうさぎでしかなかった。


「あの・・・・・・かぐや姫様。」


「なんですか? 昴。」


「最後に、ブラックホールに吸われてしまった、猫を助けてあげたいと思うんですが、いいですか?」


 元、自称、宇宙魔王の宇宙猫のクロアナは、無から開放され普通の猫になったが、ブラックホールに呑み込まれて消えてしまった。


「クスッ。優しいのですね。あなたは。いいでしょう。ブラックホールから戻って来れる様に導きます。安心して、見つけてきてあげてください。」


 月の女王かぐや姫が、ブラックホールから引き揚げてくれる。


「行こうか。ラスト・ミッションだ。」


「昴が行くなら私たちも行くよ。」


「みんなで探した方が早く見つかりますからね。」


 何も言わなくても、月の騎士のルナ、アルテミス、セレーネーが、宇宙の迷子猫を探すのに付き合ってくれる。


「はい! ありがとうございます!」


 こうして少年は、最後に宇宙での思い出ができたのであった。



 地球。


「人類とタコとの和平条約が締結されました!」


 最初は、侵略者だった宇宙タコだったが、共に宇宙モンスターと戦い、地球を救ったことから、共存の道を進むことになった。


「すいません! こっちも向いてください!」


「はい。ニコッ!」


 記念の写真撮影を行っているのは、条約を結んだ、人類代表の国連事務総長と、地球と宇宙のタコの代表になったタコ・デビルであった。 


(・・・・・・長老様。あなたは、こうなる未来が見えていたのですね。)


 ジーンっと、今は亡き、タコ長老の教えが、タコ・デビルの心に響く。


「それでは、和平条約を締結パーティーを行います! 美味しい! タコ焼きと、人間焼きを、お食べください!」


 決して、生きた人間をぶつ切りにして具にする訳ではない。


「おお! 人間の形をした鉄板に生地を入れて、中にアンコを入れて焼くんですね!」


 例えると、たい焼きと同じである。


「美味しい! 人間焼きも美味しいですね!」


「タコ焼きも美味しいですよ!」


「ワッハッハー!」


 人類とタコは、仲良くタコパーして、地球の平和を祈ったのであった。



 地球。夜。少年の家。


「ニャア~。」


「ダメだよ!? クロアナ!? 浮いちゃあ!?」


「ニャア?」


 元宇宙猫のクロアナは、たまに地球の重力を無視して浮いてしまうらしい。

 

「ここは地球だから、誰かに見られたら、大変なことになっちゃうよ。」


「ニャア。」


 クロアナを月には居場所がなさそうだったので、少年が地球に連れてきて、ペットとして飼うことにした。


「はい。ご飯だよ。」


「ニャア! ムシャムシャ!」


 普通に宇宙猫だったクロアナが、地球のキャットフードを、美味しそうに食べている。


「美味しい?」


「ニャア~!」


 大満足のクロアナ。


「うさぴょんも地球に来ればよかったのに。」

 

 惜しいことをした月の精霊の銀うさぎ。 


「今日も、きれいだ。」


「ニャア。」


 月を見上げる少年とクロアナ。


「この世に価値のない者なんてないんだ。」


 夜空に浮かぶ月が、今日も少年を照らしている。


「確かに僕は、宇宙が好きなだけで、何のとりえもない普通の人間だ。」


 少年の宇宙での騎士として過ごした時間は、まるで夢のようだった。


「でも、光は夜にもある。だから、僕は歩き続けられるんだ。」


 自分なんか、どうせ僕なんかは何もできない、と自分を卑下していた、自分自身に自信がない少年は、もういない。


 ピカーン!


 少年の心と、月の光が共鳴する。


(ありがとう。昴。)


(また会おうね。)


(・・・・・・チッ、待たすなよ。)


 その時、月の光が一瞬強くなり、月の騎士たちの感謝と祝福のメッセージが聞こえてくる。


「はい! 必ず、会いに行きますからね!」


 少年は光の戦いを終えて、それでも宇宙を好きでいてくれた。少年は本物に宇宙が大好きなんだ。


「ニャア!」


 猫のクロアナも、少年を応援してくれている。



 その後の少年。


「太陽は地球から約1億5000万km離れた巨大な恒星で、主系列星の「黄矮星」に分類されます。直径は約140万kmで地球の109倍、質量は地球の約33万倍、表面温度は約5772K(約6000℃)です。」


 少年は、自分の夢を叶えるため、月の仲間と再び会うために、宇宙飛行士になるための勉強を一生懸命する。


「クソッ!? 宇宙に行きたいだけなのに、なんで英語がいるんだよ!?」


 宇宙ステーションでは、多国籍な人間が働いているので、共通語の英語が必須だった。


「クロアナ。おまえも宇宙に戻りたいかい?」


「ニャンニャン。」


 よっぽど地球が気にいったのか、猫のクロアナは首を横に振る。



 そして、宇宙飛行士の試験の面接が始まる。


「どうして、宇宙飛行士になりたいんですか?」


「はい! 宇宙に行くことが、僕の子供の頃からの夢です! それに、月に僕が行くことを、待っていてくれる、仲間たちがいるんです!」


 少年は、臆することなく、面接官の顔色を窺うことなく、自分の意見を堂々と言う。


「はへっ!?」


 思わず、面接官が鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしてしまうくらい。


「月には誰が待っているんですか? かぐや姫?」


「はい! 月の女王に、月の神、月の騎士たちです!」


「わ、分かりました!? 退席してください。」


「ありがとうございました!」


 少年は、面接室から退室する。


(僕はやれることはやった。後は神のみぞ知るだ。・・・・・・どうか、受かりますように。)


 その夜、少年は流れ星に願い事をした。



 面接室。


「変わった子でしたね?」


「そうですね。でも、月に行きたいという強い気持ちは伝わってきましたよ。」


「う~ん。知識の試験もトップ合格だし、最年少の宇宙飛行士となれば、マスコミも大々的に取り上げてくれて、寄付やスポンサーも集まり、宇宙開発が進みますしね。どうしましょう?」


 面接官たちは、合格者の選考に悩んでしまう。


「いいじゃないですか。彼を宇宙に行かせてあげましょう。」


 その時、偉い人が声をあげた。


「彼には借りがあるので。」


「えっ? 何か言いましたか?」


「いいえ。何も。」


 その人は、どこか月の神ツクヨミに似ていた。



 試験の結果発表の日。


「やったー! 試験に合格したぞ! ヤッホー!」


 勉強を頑張った少年は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補者選抜試験に合格した。


「ニャア!」


 本当は、大学卒以上で、科学技術・医療・航空などの分野で3年以上の実務経験が必要。現在、日本の宇宙飛行士の最年少は29才。


「これで宇宙に行ける! みんなに会えるんだ!」


 真面目にやっていると、少年がおっさんになってしまう。ということで、高校生か、20才前後で宇宙飛行士の試験に合格したとしよう。



 宇宙飛行士、無重力適性テスト。


「すごい!? まるで宇宙人みたいですね!? 宇宙にいたことがあるんですか?」


 少年は、まるで陸地よりも楽に、無重力空間で自由自在に動いている。


「あはははは・・・・・・。」


(実は、宇宙に行ったことがありますとは言えない!?)


 少年は笑うしかなかった。



 夢を叶える時。


 ロケットの打ち上げのカウントダウンが始まる中、コックピットの少年は、かつて見上げた轟音と炎を、今度は体中で感じている。


――5。


――4。


彼は静かに目を閉じ、胸に手を当てる。


(みんな、もうすぐ会いに行きます!)


かつて祈った少年の心臓の鼓動が、今、確かな運命(Destiny)の音として響く。


――3。


――2。


「リフトオフ!」


――1。


0!


 ホールドダウン解除。ロケットが重力を振り切り、天を突き上げる。


地上からの歓声が響く中、少年の瞳は静かに夜空を捉える。


 僕は、流星になった。


 終わる。

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