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流星騎士  作者: 渋谷かな
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神に立ち向かう

 宇宙空間。


「すまない! 我々は、自分の星座を守りに行かせもらうぞ!」


「ごめんなさい! 私たちも惑星に帰らなくては!」


 約20人いた銀河騎士たちは、一人、また一人と自分の惑星や星座に帰っていく。


「仕方がないよ。それぞれの惑星や星座がなくなってしまっては、銀河の騎士は力が出せなくなってしまうんだから。」


 守護星や星座は、銀河の騎士たちの力の源であった。


「後は頼んだぞ。おまえたちなら、昴を助け、無を倒せるはずだ。」


「おお! 任せとけ!」


 そう言うと、金星の騎士ヴィーナスたち全ての銀河騎士たちが、自分の惑星、星座を守るために輝く光の彗星になって飛び去った。


「さあ、神を斬りにいこうか。」


「ルナったら、素直に昴を助けにいこうって、言えばいいのに。」


「私たちは、これで普段通りですからね。」


 月には、ブラックホールが発生していないので、月の騎士のルナ、アルテミス、セレーネーは自由に動くことができた。


「よし! ツクヨミを倒して、昴を助け! カグヤ姫様を救出するぞ!」


「おお!」


「・・・・・・。」


「ルナもやってよ?」


「やだ。恥ずかしい。」


 夜の月の支配者ツクヨミの策略により、最終的に最終決戦の地、月へは月の騎士の3人しか向かうことはできなった。



 月。


「早いな。以前、出会った時より、スピードが何倍にもなっている。」


 金色の輝きが猛スピードで月に到着した。


「ツクヨミ様!?」


 少年が、夜の月の支配者ツクヨミの元にやってきた。


「ツクヨミ様! 悪いことはやめてください!」


「こら! 無礼だぞ! 月の神であらせられるツクヨミ様に無礼な口の利き方は許さないぴょん!」


 夜の月の精霊の黒うさぎが少年に抗議する。


「やめなさい。黒うさぎ。」


「でも・・・・・・。」


「太陽と月と星を宿し、宇宙を導く存在の彼には、我々の気持ちは分からないのだよ。」


 見妙な理解を示す夜の月の支配者ツクヨミ。


「どうだろう? 昴くん。君も元は月の騎士だ。同胞として、私と一緒に全宇宙をより良き方向に導かないかい?」


 少年に、仲間になれと迫る、夜の月の支配者ツクヨミ。


「お断りします! 自分の思い通りにしたいからって、かぐや姫様を誘拐したり、悪魔やモンスターを使って、人々を困らせて、救いの手を伸ばして、自分は良い人を演じる偽善者なんか、信用で生きる訳がないでしょうが!」


 純粋な少年は成長し、悪の甘い誘いを、きっぱりと断る。


「そうかい。残念だね。君には、地球の騎士として、私の役に立ってもらいたかったのに。」


 本当に残念がる夜の月の支配者ツクヨミ。


「あくまでも、私と戦うと?」


「はい。戦います。それに僕一人で戦う訳じゃない。きっと惑星と星座の騎士の皆さんが助けに来てくれるはずです。」


 少年は、仲間が助けに来てくると信じていた。


「それはないわよ。ニャア~!」


 宇宙魔王の宇宙猫のクロアナが現れる。


「だって、銀河の騎士たちは、今頃、ブラックホールに吸い込まれないように全力で惑星や星を守っているでしょうからね。オッホッホー!」


「なんだって!?」


 少年が頼みにしていた応援は来ない。


「じゃあ、アマテラス様が来てくれるはず。」 


「姉上は、もう一人の弟の相手をしているので、身動きは取れないんだよ。」


「そ、そんな!? 僕一人だけ!?」 


 心の外堀を埋めていく、夜の月の支配者ツクヨミの計略に、絶望のどん底に落とされる少年。


「昴くん。これを見てくれたまえ。」


 夜の月の支配者ツクヨミは、地球の映像を映す。



 地球。


「ツクヨミ様に、地球を統治してもらおう!」


「救世主だ! メシアだ!」


「人間の権力者は、自分のことばかりだ!」


「ツクヨミ様! 万歳! 万歳! 万々歳!」


 地球では、何もしない権力者に憤慨したクーデターが起こり、被災した人々を助けたツクヨミの求心力は絶大なものであった。



 再び、月。


「どうだい? 私は地球人にも支持されているんだよ。地球人の君とも、仲良くできると思うんだけどね?」


 夜の月の支配者ツクヨミは、孤独になった少年の心に無を流し込みにかかる。


「た、確かに地球人を助けてくれたの感謝しますが、あなたが攻め込まなければ、人々は被害にあうこともなかったんですよ!?」


「でも、困っている人々を助けない、地球人の権力者より、助けている私の方がマシだと思うけどね。」


「そ、それは・・・・・・。」


 ドンドン追い詰められていく、孤独な少年の心。


(落ちる! こいつも、もう少しで無に落ちるぴょん!)


 余裕で展開を眺めている、夜の月の精霊の黒うさぎ。


「・・・・・・。」


 自分には誰もいない、一人ぽっちなんだという気持ちが、少年は何も喋れない所まで精神が追い込まれ、無に落ちてツクヨミの手先になろうとしている。


(・・・・・・昴。・・・・・・おい、昴。)


 その時、少年の心に声が聞こえてくる。


(昴! おまえは一人じゃないぞ! 私たちがいるじゃないか!)


(私たちは、4人で月の騎士団ですよ。)


(アルテミスさん! セレーネーさん!)


 無に呑み込まれようとした少年の心に、語り掛けた希望の光は、月の騎士たちであった。


(安心しろ。おまえが無になったら、私が斬ってやる。)


(ルナさん! ・・・・・・そうだ! 僕は無になったりしないんだー! うおおおおおおー!)


ピカーン


 特に容赦ない月の騎士ルナ節が、少年の心に入り込んだ無を、友情の絆の光で晴らす。


「私のマインドコントロールにかからないとは!?」


「僕の心の中には仲間がいるんだ! 僕は一人じゃない!」


 完全に吹っ切れた少年。


「弱い人間の心につけ込むな! 必殺! プレアデス! スラッシュ―!」


 輝く星の剣で斬りかかる少年。


「イクリプス。」


「なっ!? 星の輝きが失われていく!?」


 少年の星の輝きを、夜の月の支配者ツクヨミが奪っていくので、慌てて距離を取る。


「これだけのことができる力があるのに、どうして、こんな酷いことばかりするんですか?」


「別に心が弱いのは、人間だけではない。神だって・・・・・・。」


「えっ?」


 夜の月の支配者ツクヨミにも、これだけのことを考え行動する理由があった。


「おまえに分かるか? 姉は太陽神、弟は自由奔放。それに比べ、私は夜の支配者。昔は人々も月を崇めてくれたが、今となっては寝ている時間に出ている月など、誰も見てくれない、寂しい存在なのだ。」


 夜の月の支配者ツクヨミは、自分の孤独、夜を月で照らすことの虚しさを感じていた。


「分かるか! 誰にも必要とされない存在の悲しみが!」


「クッ!?」


「月を人々の憧れに戻さなくてはいけない! 月は闇の象徴ではなく、夜を守る優しい光だ! 月の本来の役割は人の心を落ち着かせ、優しさを育てる光なのだ! 月の神である私が軽んじられる謂れはない!」


 これが今回の壮大な計画の動機であった。つまり、太陽は、命を育てる光に対し、月は、心を守る光であるが、人々は太陽ばかり感謝していたことが、夜の月の孤独感を大きくしてしまった。


「私は、もうすぐ陽の当たる場所へ行く。私が昼も夜も全てを支配する。人々が、私をだけを敬う世界に作り直す! これは新たな世界の創生なのだよ!」


 完全に無の悪意に呑み込まれている夜の月の支配者ツクヨミの主張。


「・・・・・・。」


 少し黙って考え込む少年は、やはり納得のできない違和感を感じていた。


「それは違うよ! 月は闇じゃない!」


「なに!?」


 少年は自分の考えがまとまった。


「確かに、あなたの月というポジションは、地味かもしれない。それでも、きっと誰かは、夜の月を「きれいだと」眺めている人がいるんだ! 決して、あなたのことを忘れたりはしない!」


「いいや! そんな奴はいない! 私は、ずっと一人で冷遇されてきたのだ!」


「そんなことはない! だって、僕は夜の月に語り掛けてきたんだから!」


「なんだと!?」


 少年の告白に、戸惑いを見せる夜の月の支配者ツクヨミ。


「僕は勉強もできないし、運動神経もない、お金持ちの家にも生まれていない。僕の夢は宇宙飛行士になることだって言ったら、バカにされるし、なれないって否定されるし、いじめられて殴られるし。」


 少年は、少年で日常生活に息苦しさを抱えて生きていた。


「・・・・・・でも、僕は宇宙が好きだ! 歪んだ人間に傷ついた時、夜の月を見て、僕は癒されていたんだ! 明日も頑張ろうと、銀色の光に夢や希望を貰っていたんだ! だから、あなたは一人じゃない! あなたを好きな人はたくさんいるんだ!」


 少年は、ムーン・ライトを浴びて、ヒーリングし、日常生活のストレスを癒していたのであった。


「わ、私が気づいていなかっただけだというのか!? 私は、私は!?」


 神であるツクヨミの心が乱れる。


ピキーン!


(チャンス!)


 一瞬のツクヨミの動揺を宇宙魔王の宇宙猫のクロアナは見逃さなかった。


「月は闇じゃない! みんなを優しく照らす光だー!!!!!!」


 少年の熱量のこもった一言が、夜の月の支配者ツクヨミの、閉ざされた心をの扉を開けようとしていた。


「シャドー・ムーン。」


 ツクヨミの必殺技により、少年の体から意思が弾き飛ばされ、無重力に、ただ意思のない物として浮いている。


「はあ・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・。」


 しかし、勝利したはずの夜の月の支配者ツクヨミも息を荒くして様子が変だった。


「ダメよ。ツクヨミ様。神なのに、そんなに心が弱くては。簡単に無を流し込めたわ。ワッハッハー!」


 宇宙魔王の宇宙猫のクロアナが、大量の無をツクヨミに流し込み、無で覆って操ってしまう。


「ツクヨミ様!? こらー! クロアナ! ツクヨミ様に何をしたぴょん!?」


 夜の月の精霊の黒うさぎが、ツクヨミの異変に気付き抗議する。


「うるさい! ウサギの分際で、全宇宙の支配者の私に意見する気か!? 皮を剝いであげましょうか?」


「ヒイイイイイー!?」


 恐怖で物陰に隠れる月の精霊の黒うさぎ。


「おまえなんかに構っている暇はない。どうやら次のお客さんの到着らしい。」


 その時、月に三つの銀色の光が降り立つ、月の騎士ルナ、アルテミス、セレーネーたちだ。


「昴!?」


 最初に見たのは、宙に浮いている少年の姿だった。


「ようこそ、月の騎士のみなさん。私の月へ。」


 宇宙魔王の宇宙猫のクロアナが、月の騎士たちを歓迎する。 


「私の月?」


「猫が喋った!?」


「おまえは、一体何者だ!?」


 月の騎士たちは、初めて、クロアナに対面する。


「私? 私は、宇宙魔王! クロアナ様だ! この世は、私がいただこう! ニャア~!」


 遂に、自称、宇宙魔王が、本当の全宇宙の支配者になる時がきたのだ。


「なんだ!? なんだ!? 訳が分からなくなってきた!?」


「も、も、もしかして!? このカワイイ猫ちゃんが、黒幕なの!?」


 さすがの月の騎士のアルテミスとセレーネーも混乱する。


「ぶっ殺そう。それで全てが終わる。」


 早々に事態を理解した月の騎士ルナは剣を抜く。


「やれるものなら、やってみなさいよ! やれ! ツクヨミ!」


「ガオー!」


 宇宙魔王の宇宙猫のクロアナが、無の無限の力で、夜の月の支配者ツクヨミを自由に操れる。


「あれが!? ツクヨミ様なの!?」


「いつものツクヨミ様じゃない!? 化け物だ!?」


 ツクヨミの体からは、無が溢れていた。


「良かった。神じゃないなら、斬ってもいいな。」


 神でも、化け物でも、斬る気満々の月の騎士ルナ。


「射撃する! ムーン・アロー!」


 月の騎士のアルテミスの月の矢を撃ち、開戦する。


「ゴット・ムーン・ライト!」


 10倍以上の月の光の雨嵐で反撃してくる、夜の月の支配者ツクヨミ。


「噓でしょ!? ギャアアアアアアー!」


「ムーン・バリア!」


 月の騎士セレーネーが、月の銀色のバリアを張って、なんとか身を守ろうとする。


「圧倒的じゃない。私のツクヨミ様は。アッハハハハー!」


 見ているだけで宇宙魔王の宇宙猫クロアナは笑いが止まらなかった。


ピキーン!


「はっ!? もう一人いた月の騎士がいない!?」


 視界から月の騎士ルナの姿が消えていたことに気づいた。


「気づくのが遅かったな。この猫野郎。」


「しまっ!? ギャアアアアアアー!」


 月の騎士ルナが現れ、一振りで宇宙魔王の宇宙猫のクロアナの首をはねる。


「やったー!」


「これも、あなたたちが騒いで、敵の注意を引き付けてくれたおかげよ。」


「その通り!」


「ワッハッハー!」


 月の騎士たちの友情の絆のコンビネーションの勝利であった。


「これで、全てが終わっ!?。」


 しかし、昴の体に意識は戻らず宙を漂い、夜の月の支配者ツクヨミは無に覆われたままだった。


「終わる訳がないでしょ!」


ニュヌヌヌ! 


 次元が歪み、無の圧縮が始まり、猫の形を形成していく。


「バカな!? 確かに首をはねたはずだ!?」


「残念ね。私は、悪意の無の集合体。首をはねられたぐらいで死ぬ訳がないでしょ! オッホッホー!」


 宇宙魔王の宇宙猫のクロアナが復活する。


「チッ、本当に化け物かよ。」


 つづく。

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