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流星騎士  作者: 渋谷かな
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太陽

 太陽。


「よく来ました。タウラス。」


 牡牛座の騎士タウラスは気絶したままの少年を、太陽まで運んできた。


「ははあ。」


 星座騎士団の牡牛座の騎士タウラスであっても、目の前のきれいな女性の前では緊張し自由に振る舞うことができなかった。


「あなた様は?」


「私は、アマテラス。」


ピキーン!


「アマテラス!? まさか!? あなた様の正体は!?」


 名前を聞いて、怖気づく牡牛座の騎士タウラス。


「太陽神だ。」


 アマテラス(天照大神)は、光と秩序を象徴する最高神でもある。


「失礼致しました!? アマテラス様!? これまでの私の無礼な態度をお許しください!?」


 例え、星座騎士の中では、トップ12に入る牡牛座の騎士タウラスであっても、相手が神と分かれば従うしかない。


「よい。気にしていません。あなたは彼を無事に連れてきてくれました。」


 アマテラスの用事は、少年にある。


・・・・・・起きなさい・・・・・・。


 アマテラスが意思を寝ている少年に送る。


「・・・・・・ん・・・・・・んん。」

 

 寝ていた少年が目を覚ました。


「おはよう。プレアデス。」


「あなたは?」


「私は、アマテラス。太陽の神です。アハッ!」


「神様!? ああー!? やっぱり僕は死んだんだ!? ここは天国に違いない!?」


 起きたばかりで混乱している少年。


「落ち着け! 昴!」


「師匠!? 師匠も死んだんですか!?」


「バカモン! おまえも俺も死んでない! 落ち着け!」


「はい!?」


 師である牡牛座の騎士タウラスに言われて少年は錯乱をやめて落ち着く。


「良く来ましたね。プレアデス。いえ、昴と言った方がいいのかしら?」


 太陽神アマテラスは、少年の呼び方に気を遣ってくれる。


「あの、神さまが僕なんかに何の用ですか?」


「私は太陽神。太陽から離れる訳には参りません。なぜだか分かりますか?」


「太陽の面倒を見ないといけないからですか?」


「そうです。」


 太陽神は太陽そのものといっても間違いではなかった。


「太陽は命を育てる母。熱くて、こんなに危険なのに、遠く離れれば・・・・・・光は草木を育て、海を温め、天気をつくり、動物の体内時計を整え、人間の心さえ明るくする。それが太陽です。」


「すごい! 太陽って、すごいんですね! いつも普通に空にあるものだと思っていました!」


 太陽の説明を受けて、少年は生物が太陽に支えられていることに気づく。単なる天体ではなく、世界を維持する絶対的な力。


「そう、太陽は 近づけば死ぬほど危険なのに、遠くからなら命を育てる、母、そのものなのです。」


 太陽は、全宇宙で最も矛盾した存在。触れればすべてを焼き尽くす暴君。しかし、離れて見上げれば、すべてに命を与える女神。


「この世から太陽がなくなれば、生命だけでなく、夢や希望もなくなってしまいます。だから私は、ここから離れることはできないのです。」


 世界の始まりであり、終わりでもある場所。命の源であり希望の象徴。


「だから、あなたにお願いします。世界を救ってほしいのです。」


「ええー!? 僕が世界を救う!?」


 太陽神アマテラスの少年への願いは世界を救うことだった。


「僕なんかに世界なんて救えませんよ!?」


「いいえ。世界を救えるのは、昴。あなたの様な、温かく優しい心を持ったものです。」


 少年は、純粋に宇宙が大好き。他人にも優しく、どんなに辛い時でも笑うことを心掛けている。いつも明るく笑顔で前向きに、一言でいうと、善意の塊。生きる善意であった。


「今、宇宙や、あなたの故郷の地球は、無という悪意に呑み込まれて、滅ぼされようとしています。」


 宇宙魔王を名乗るクロアナの放った、宇宙悪魔、宇宙モンスターたちの猛攻を受けている。無は単なる破壊ではなく、希望や善意を消し去ろうとする存在。


「この世で無に対抗できるのは、善意だけなのです。だから、あなたの様に温かく優しい心を持った者だけが、無から世界を救うことができるのです。」


 善意こそが宇宙を救う唯一の力。


「そ、そんなことを言われても!? 善意なんて目で見ることはできませんし!?」


 戸惑ってします少年。善意は見えない力だが、無に対抗できる唯一の存在。


「そう固くなることはありません。昴、あなたに私の力の一部を貸すだけです。世界を一緒に救ってくれませんか?」


 少年の純粋な思いや行動が世界規模の影響力を持つ。


「・・・・・・。」


 一瞬、少年は考える。


(・・・・・・世界・・・・・・お父さん、お母さん、たくさんの地球の人々、宇宙で頑張っているルナさんたち・・・・・・。)


 少年は、家族や多くの人々、宇宙の仲間たちのことが思い浮かぶ。


「分かりました! 僕は世界を救いたい! みんなと仲良くしたい!」


 決心した少年の目は星々の様に輝いていた。


「ありがとう。昴。一緒に世界を救いましょう。」


「はい!」


 太陽神アマテラスと少年の意思が一つに交わっていく。小さな善意が、宇宙規模の希望になろうとしている。


ピカーン!


 少年と太陽神アマテラスの意思が一つになり、少年の体が太陽の陽に熱く光り輝く。


「なんと!? これが昴か!? なんて神々しいんだ!?」


 牡牛座の騎士タウラスには少年の姿は神にしか見えなかった。


「太陽よ! 星々よ! 月よ! 僕に力を!」


キラーン!


 周囲の空間に、星粒スターダスト が舞い始める。


キラキラキラ!


 少年の声に、太陽、星、月が呼応するように光輝く。まるで宇宙誕生のビックバンの様。流星が集まるように、全宇宙の星々の輝く光が、少年に反応する。


「太陽神の名の元に、陽月昴が命じる!」


 少年の姿に、太陽神アマテラスの姿が被り、目に太陽の紋章が灯って、背中に一瞬アマテラスの光の羽が見え神々しい。


「無を討つ、希望の流星となれ! アマテラス・シューティング・スター!」


ピカーン!


ピピピピピピカーン!


 アマテラスの光が少年の善意と共鳴し、無数の太陽の光の流星群となって降り注ぐ。


「きれいな、流れ星だ。」


  

 火星。


「どうやら俺のウイルスに感染したみたいだな!」


「クッ!?」


「嫌だ!? まだ死にたくない!? うわああああー!」


「うるさい!? 黙れ!?」


 宇宙悪魔マルバスの操る無ウイルスに、遂に月の騎士ルナと火星の騎士マーズも感染してしまった。体が無に変換され消えていこうとしている。


「おまえたちも、これで終わりだー!!!!!!」


 宇宙悪魔マルバスが、月の騎士ルナにとどめを刺そうとしていた。


ピカ!


「星?」


 その時だった。流れ星が猛スピードで近づいてくる。


「ギャアアアアアアー!」


 そして宇宙悪魔マルバスに光が触れ、全身から光の熱で燃やしていく。


「これは一体!?」


 光が強まれば、 熱が生まれ、 白炎のように輝き、善意で無を焼き払う。


「見て!? ウイルスに感染して消滅していた、私の手が生えてきた!?」


 火星の騎士マーズの消滅した手が再現される。


「どんな奇跡だ!?」


 こんな時でも素直に喜べない、月の騎士ルナの失われた美しい顔がよみがえる。


ピキーン!


「この感じは!? 昴!? まさかな・・・・・・。」


 月の騎士ルナは、神々しい光に少年を感じた。だが少年が、アマテラスの力を借りたという事実を知らない。 


「ギャアー!!!!!!」


 宇宙悪魔マルバスは、悪意を焼く神聖な太陽神の炎が悪意の無を焼き尽くし、光は消え去る。


「私たち!? 助かったの!? やったー! ルナ! 助かったよ!」


「ああ。」

 

 素直に喜ぶ火星の騎士マーズと、自分が戦って勝った訳ではないので納得がいかない月の騎士ルナ。



 金星。


「しまった!?」


 打開策のないまま剣で斬りかかる金星の騎士ヴィーナスの攻撃は、宇宙悪魔ウァサゴは姿を無にしてかわされる。


「もらった!」


 宇宙悪魔ウァサゴは、完全に金星の騎士ヴィーナスの背後を取った。長期戦で疲れがでたのか、少しずつ体力集中力を奪われていったのだ。


ピカ!


 その時、流星の様な光が宇宙悪魔ウァサゴに降り注ぐ。


「ギャアアアアアアー!」


 宇宙悪魔ウァサゴは、光の高温の熱で全身が包まれて燃やされる。


「悪意が燃やされていく!?」


 あれだけ倒せなかった宇宙悪魔ウァサゴを灼熱の光が燃やしていく。


ピキーン!


「そうか! 宇宙悪魔の弱点は、火だったのか!」


 必死で納得しようとする金星の騎士ヴィーナス。


「なんて、温かく優しい光なんだ。ダメージが消えていくみたいだ。」


 少年の優しさに包まれた金星の騎士ヴィーナスの疲れを癒していく。


「ギャアー!!!!!!」


 神々しい光は、宇宙悪魔ウァサゴを焼き尽くし消えてしまう。


「みんなは無事なのだろうか?」


 そして、直ぐに仲間の身を案じる仲間思いの金星の騎士ヴィーナスであった。



 水星。


「・・・・・・。」


 もう水星の騎士マーキュリーは動かない。


「タコ・キングよ。一気に食べてしまえ。」


「タコタコ!」


 宇宙悪魔ガミジンの操る、元宇宙の支配者を目指していた、ゾンビになったタコ・キング。


(・・・・・・う・・・・・・動かない・・・・・・。)


 水星の騎士マーキュリーはタコ・キング・ゾンビに触手で首を絞められ蹴絶寸前で、もう戦意もなく諦めていた。


「タコ!」


 パクリ。モグモグモグ。と水星の騎士マーキュリーはタコ・キングの口に放り込まれた。


ピカ!


 その時。流星の光が猛スピードで、タコ・キングに衝突する。


「タコ!? ギャアアアアアアー!」


 タコ・キングは、神々しい光の熱で燃やされる。


「なに!?」


ピカ!


 もう一つ神々しい光が流星の様に猛スピードでやってきた。


「食らってたまるか!?」


 宇宙悪魔のガミジンは必死に移動して、光を避けようとする。


ピカーン!


「ついてくるだと!?」


 しかし、ホーミング弾の様に悪意を追尾する。


「ギャアアアアアアー!」


 遂に神々しい光は宇宙悪魔のガミジンに命中し、善意の太陽の熱が悪意を燃やしていく。


「ゲホッ!?」


 光の炎に包まれたタコ・キングから、水星の騎士マーキュリーが吐き出される。


「臭い!? イカ臭い!? 汚いよ!? ・・・・・・あれ? 私、生きてる!?」

 

 確かに死んだのに生き返り、かみ砕かれたはずの体がつながっている。


「何が起こったの!? この温かく優しい光は!?」


 それに体力も回復しているという奇跡を、水星の騎士マーキュリーは体験している。


「ギャアー!!!!!!」


 宇宙悪魔ガミジンと、タコ・キング・ゾンビは燃え尽きて、神々しい光も消え去る。


「私は、夢でも見ているの?」


 目の前で起こったことは、破壊ではなく救済。助かったが自分に理解できない現象に首を傾げる水星の騎士マーキュリーであった。



 地球。アメリカ。


「ガオー!!!!!!」


 宇宙モンスターのバハムートが破壊の限りを尽くしている。


「タコタコ!? ギャアアアアアアー!」


 もちろんタコ・ビームなど、宇宙モンスターの巨大な鯨のバハムートに痛くも痒くもなかった。


「ギャオオオオオオー!」


 後は、全てが滅びるだけであった。


「もう、どうすることもできない!?」


 圧倒的な悪意の前に、人類もタコも諦めることしかできなかった。


ピカ!


 その時、天から、いや、宇宙から流れ星が猛スピードで落ちてきて、宇宙モンスターのバハムートを撃つ。


「ギャアアアアアアー!」

 

 神々しい光は太陽の高温の熱で、宇宙モンスターのバハムートを炎で焼いていく。 


「き、奇跡だ!? 天は、神は、タコを見放さなかったんじゃ!?」


 タコ長老をはじめ、タコたちは戦闘をやめて、神々しい光を見つめていた。


「なんと!? 温かく優しい光だ!?」


 戦闘や憎しみといった負の感情が心から消されていくような、清々しさを人々とタコたちは感じずにはいられなかった。


「ギャアー!!!!!!」


 あれだけ猛威を奮い誰も止めれなかった宇宙モンスターのバハムートを焼き尽くし、神々しい光も消え去る。


「終わった。終わったんじゃ! みんな! 戦いが終わったぞ!」


 無のように実体のない悪意を、すべてを焼き尽くす圧倒的なエネルギーで消滅させる力。


「タコ!」


「タコタコ!」


 それは、人々とタコの歓喜と笑顔、そして平和をもたらした。


「ありがとう! タコさん!」


「人間もありがとう! 一緒に戦ってくれて!」


 人類とタコが、同じ境遇を経験して、初めて一つになれた。


「良かった。本当に良かった。」


 タコ長老は、自分が生き残っているのが夢のようであった。


グラグラ。


 しかし、目の前で破壊されたビルの欠片が上空から落ちそうだった。


「危ない!?」


 ビルの破片の下には、小さな子供がいた。


ガタ!


 ビルは崩れ破片が子供に向けて落下してしまう。


「タコ!?」


 タコ長老は駆けていき、タコの横っ飛びで子供を吹き飛ばし、代わりに瓦礫のしたじきになってしまう。


「よ、良かった・・・・・・。」


 タコ長老は子供を救い穏やかな顔で死んでいった。


「ウエ~ン! ウエ~ン!」


 戦いが終わった後の戦場に、子供の泣き声だけが響き渡った。


 つづく。

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