星を操る
宇宙、牡牛座付近。
「師匠! 僕も彗星になれましたよ!」
少年は目を星々の様に輝かせて、師である牡牛座の騎士タウラスに報告する。
「ああ。見ていたぞ。これでおまえも立派な星座騎士だ!」
「やったー! 僕は星になったんだ! 強くなったんだ! これでルナさんや、みんなを助けに行くことができるぞ!」
純粋な少年が強さを求めるのは、仲間を助けたいという思いからだった。
「星になっていってきます!」
「待て待て! 今のおまえは星の様に早く移動ができるようになったというだけだ。」
「そ、そういえば。」
確かに少年は流れ星のような彗星になることはできた。しかし、ただそれだけなのだ。
「教えてやろう。星の操り方を。」
「星の操り方!? 僕が星を操ることができるんですか!?」
「もちろんだ。おまえは星座騎士なのだからな。ワッハッハー!」
星座騎士。星を宿す者であり、星を操る者でもある。
「お願いします! 師匠! 僕に星の操り方を教えて下さい!」
「よし。その意気だ。」
牡牛座の騎士タウラスも、純粋に人助けのために強くなろうとしている弟子の姿が嬉しかった。
「前に、俺がアルデバランを放ったのを覚えているか?」
「はい! 赤い星の輝きが、どこまでも飛んでいきました!」
一等星のアルデバランは、牡牛座の牛の目に位置する。
「要領は、同じだ。自分の意思で星を動かしたいと願えば、おまえの意思に共鳴した星を操ることができるぞ。」
「ああ~! 宇宙飛行と同じですね! 以前に、アリエスさんに教えてもらいました! 自分の意思ですね!」
少年は、宇宙空間に迷子になった時、牡羊座の騎士アリエスに助けてもらっている。
「よし。やってみろ。」
「はい!」
少年は、強力なサイコキネシスの様に、星に願う。
「動け! 動け! 動け―!!!!!!」
「・・・・・・。」
しかし、星は動かなった。
「無、難しいですね? あはははは・・・・・・。」
「ゴホン。最初っから、そう、上手くいくものではない。何度も繰り返して、自分のものにするんだ。」
「はい! 師匠! 絶対に諦めません! 必ず! 星を動かしてみせます!」
少年は、気合を入れて、更に星を動かす修行に取り組む。
「動けー!!!!!!」
「そう簡単に星が動くわけがない。俺だって苦労して習得したんだからな。」
十二星座騎士であっても、星を動かすのは大変だった。
「動け! 動いてくれ! 僕は強くなって、ルナさんたちを助けに行かないといけないんだ! 頼む! 動いてくれー!」
更に少年は、強く強く強く、星に願った。
「・・・・・・。」
しかし、星は動かなった。
「やはり僕なんかでは、ダメなのか!?」
全く動かない星に、少年が諦めかけた。
ピキーン!
・・・・・・ようへ・・・・・・。
その時、少年には謎の声が聞こえてきた。
「声? 耳鳴りかな? 消えたし、まあ、いいか。」
まだ少年は声の主も、自分の運命も知らなかった。
キラーン!
動かなかった星が、遂に金色の軌道を描いて流れた。
「ええー!? 星が動いたの!?」
師匠の牡牛座の騎士タウラスもビックリの展開であった。
「やったー! やったぞー! 星を動かすことができたぞ! うおおおおおおー!」
少年は、星を操ることを覚えた。
地球。モーリタニアのタコ解放戦線の本拠地。
「タコ・デビル! おまえを司令官から解任する!」
タコ解放戦線の本部では、クーデターが起こっていた。
「なにー!? どうしたというのですか!? 長老!?」
タコ・デビルには、正に青天の霹靂であった。
「確かに、宇宙タコは強い。だが、武力により、タコが人間を支配しても、不幸の連鎖は止まらない。悲劇が続くだけじゃ。」
地球タコのタコ長老は、宇宙タコの武力行使に反対した。
「だから、私は全人類を抹殺すると言っているではありませんか? 恨みを抱く者を全て倒せば、恨みも、復讐も残りません。」
宇宙タコのタコ・デビルは、人間に愛着も親しみも馴染みもない。地球人に情を持っていなかった。
「多数決を取る。タコ・デビルの司令官の解任に賛成する者は触手を上げよ。」
ピシッ!
タコなので一匹のタコで八本の触手を上げるので、地球タコの挙手数は圧倒的であった。
「なっ!?」
地球なので、圧倒的に地球タコの方が多い。
「タコ・デビル。おまえさんは、志の高いタコのようだ。自分の目で地球の生活を見て見るがいい。賛同しないからと同胞を虐殺するような暴君にも見えないしな。」
「クッ!?」
タコ長老は見抜いていた。タコ・デビルは、タコ・キングの命令で地球に攻め込んだだけで、タコだけど騎士道精神とカリスマを持ち合わせている心のあるタコだと。
「これより地球タコの全権限を、タコ長老に委ねる! 賛成の者は触手を上げよ!」
ピシピシピシ!
満場一致でタコ長老が、地球タコの代表に決まった。
「まずは全世界で猛攻を行っている宇宙タコの侵攻を止めよう。全ての宇宙タコに攻撃停止命令を伝えよ!」
「はい!」
果たして、世界の半分を支配した宇宙タコの攻撃は止めることができるのか。
「・・・・・・。」
主君のタコ・キングを亡くし、故郷の惑星タコも消滅し、住む所がなくなった宇宙タコの大群が地球を目指している。
(これも仲間のためだ。)
気落ちしているタコ・デビルは、地球タコと揉めるのは得策ではないと考え、敢えて仲間の宇宙タコを地球に受け入れてもらうためにも抵抗はしなかった。
地球、アメリカ。
「なんてこった!?」
悲惨な光景を見たアメリカ人は頭を抱えた。
回想。
「ガオー!!!!!!」
アメリカ東部の海岸に巨大な鯨が現れて、海岸沿いに頭突き、潮吹きなどの攻撃を行い、湾岸は火の海になり、破壊の限りを尽くされた。
「鯨だ! 鯨を攻撃しろ! タコなんか後回しだ!」
アメリカ軍は陸海空軍を投入し、全力で巨大な鯨の迎撃にあたった。
「タコ!?」
宇宙タコは鯨を見上げて、あまりの大きさに絶句した。
「ガオー!!!!!!」
「ギャアアアアアアー!」
鯨の巨大な尾びれは、海からアメリカを制圧しようとタコ・ビームで攻撃していたタコを一振りで吹き飛ばす。
「ガオー!!!!!!」
猛威を奮う巨大な鯨。
「全軍! 撃て!」
「これでもくらえ!」
遂にアメリカ空軍の爆撃、陸軍の戦車からの砲撃、海軍の軍艦からの魚雷による攻撃が始まる。
ドカーン!
「ギャアアアアアアー!」
さすがの巨大鯨も、現代の強力な化学兵器に怯んだ。
「いけるぞ! 一気に畳みかけるんだ!」
「ギャオー!」
アメリカ軍は総攻撃に入る。
プシュー!!!!!!
巨大な鯨は、目隠しをするかのように大量に潮を吹きだし、目の前がホワイトアウトした。
「何も見えない!?」
そして霧が晴れた頃には、巨大な鯨の姿はなかった。
「いったい、どこへ!?」
消えた鯨は、直ぐに姿を現す。
「巨大な鯨だ!?」
メキシコで。
「ガオー!!!!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴー!!!!!!
巨大な鯨は、メキシコのテワンテペク地峡辺りの陸地に突撃し、大地震を起こしながら、陸地を海に変えて突撃していく。
「ガオー!!!!!!」
巨大な鯨は、大西洋から太平洋に貫通したのだった。
ブラックホール。
「アッハッハッハー! バハムートは、圧倒的じゃないか!」
巨大な鯨の正体は、自称宇宙魔王になった宇宙猫のクロアナが送り込んだ、宇宙モンスターであった。
「ジズとベヒモスはどうなっている?」
「はい。中国とロシアを無に化しています。」
中国。上空。
「ガオー!!!!!!」
宇宙モンスターのジズが中国の上空を優雅に飛んでいる。
「攻撃開始!」
もちろん中国軍も黙ってはいない。戦闘機で宇宙モンスタージズを攻撃する。
「ファイア!」
戦闘機からミサイルが発射される。
「ガアアアアアアー!」
ジズの鳴き声は、超音波の様にどこまでも響いていく。
ドカーン!
上空でジズの鳴き声の空気の震えに触れたミサイルが爆発する。
「なんだ!? うわああああー!?」
超音波は止まることを知らず、ミサイルに続き、中国軍の戦闘機を爆破する。
「ガアアアアアアー!」
これは地上の対空兵器も、海上からの戦艦のミサイル攻撃も同じであった。
ドカーン!
対空ミサイルはジズの鳴き声に全て迎撃されてしまう。
バサバサ!
宇宙モンスターのジズが羽を羽ばたかせれば、竜巻が発生する。
「ギャアアアアアアー!」
地上は、海上は、無数の竜巻が現れ、全てを無に還していく。
「ガアー!!!!!!」
残るのは、宇宙モンスターのジズの鳴き声だけであった。
ロシア、地上。
「グオー!!!!!!」
ロシア極東に出現した、宇宙モンスターのベヒモスは、シベリアを西に直線的に移動していた。
「ググググググググー!」
邪魔する山や湖をものともしない。ウラル山脈を掘り進み、バイカル湖を泳いで渡るのである。
「これ以上、暴れ牛を前に進めるな! 全軍! 撃て!」
もちろんロシア軍も黙ってはいない。
ドドドドドドドドドー! ドカーン!
陸と空からの一斉攻撃である。
「やったか!?」
爆発の煙幕が薄れてくる。
「なに!?」
しかし、宇宙モンスターのベヒモスは健在だった。
「グオー!!!!!!」
攻撃に怒り、前よりも凶悪になっている。
「グオ!」
ドカーン!
ベヒモスは角から稲妻のような光を放ち、上空の戦闘機を大破させる。正に雷を司る化け物であった。
「グオオオオオオー!」
角を光らせたまま、宇宙モンスターのベヒモスはロシア軍の地上戦車部隊に突撃する。
ドカーン! ボカーン!
戦車は意思に等しく、誰もベヒモスの進撃を止めることはなかった。
「グオー!!!!!!」
宇宙モンスターのベヒモスが通った後は、何も残らずに無となっていた。
再び、ブラックホール。
「アッハッハッハー!」
笑いが止まらない宇宙猫のクロアナ。
「好調。好調。絶好調じゃないか。惑星一つを滅ぼすなど、一瞬で終わる。でも、それでは面白くない。全ては、私を楽しませるための余興なのだ! ワッハッハー!」
誰も無の侵攻を止めることはできなかった。
火星、付近の宇宙空間。
「仕方がない。一時休戦よ。」
火星の騎士マーズは、目の前の脅威に対応するべく、月の騎士ルナと共闘することを選んだ。
「言っておくけど、私は火星を守らないといけないからだからね!」
「はいはい。」
子供に言い聞かせるように関心がない月の騎士ルナ。
「私が火で、あいつのウイルスを燃やして感染を防ぐから、その間に、倒しなさい!」
「偉そうに言うな。戦うのは私だぞ。」
「任せたわよ!」
これでも二人は同じ惑星騎士団員である。
「火星よ! 私に力を! マーズ・ファイアー!」
火星の騎士マーズは、火星の力を借りて宇宙空間に炎を描く、その激しい火炎は、山火事ならぬ宇宙火事であった。
「だから!? なぜ無酸素の宇宙で火が燃やせるんだ!?」
「宇宙の神秘ですね。アハッ!」
囚われの月の騎士アルテミスとセレーネーは、もはや神秘要員でしかった。
「バカな!? 私のウイルスが燃やされるなんて!?」
宇宙悪魔のマルバスは、予想外の展開に戸惑った。
「おまえには分かるまい。これが宇宙の神秘だ。」
遂に月の騎士ルナまでも、宇宙の神秘に乗った。
「フン。燃やされれば、また新しいウイルスを作ればいいだけだ。」
宇宙悪魔のマルバスは、新型の無ウイルスを生成しようとしている。
「悪いが、その前に倒させてもらう! 必殺! ムーン! スラッシュー!」
月の騎士ルナが必殺の一撃で攻撃する。
ニュンンン!
「なっ!?」
しかし、宇宙悪魔のマルバスは、体を無にして攻撃を透き通らせる。
「悪いが俺には攻撃は効かない。」
「なんなんだ? いったい、おまえは何者だ?」
「俺は・・・・・・無だ。」
「無?」
「俺は、全ての悪意の集合体だ! ワッハッハー!」
今明かされる宇宙悪魔のマルバスの正体。
「全ての悪意の集合体!? なんですか!? それは!?」
「宇宙の神秘ですねって・・・・・・ええー!?」
もう月の騎士アルテミスとセレーネーの神秘トークは笑えなかった。
「全ての悪意の集合体? なんだ、それは? ふざけているんじゃないだろうな?」
「ベクトルが違うのだよ。ベクトルが。」
「ベクトル?」
難しい話は、月の騎士ルナは理解できなかった。
「人間は物質。物理攻撃で斬ったり、破壊したり、致命傷を食らえば死んでしまう。しかし、俺は全ての悪意の集合体なので、物理攻撃は効かないし、本体となる体がなければ、火でも焼くことはできない。仮に斬られて燃やされても、悪意というのは、生きとし生けるものが全滅しない限り、永遠に悪意のエネルギーは供給され続けるのだ! ワッハッハー!」
「本物の化け物だな!?」
宇宙悪魔のマルバスの正体を知る月の騎士ルナであった。
つづく。




