星座騎士
宇宙、牡牛座付近。
「えい! やあ! たあ!」
少年は必死に剣を振って修行していた。
「うんん。」
牡牛座の騎士タウラスは、宇宙に起こっている微妙な変化を感じ取り緊張していた。
「どうしたんですか? タウラスさん。」
「うん? そうだな。おまえの修行を速めた方がいいかもしれないな。」
マイペースではなく、宇宙の緊張を感じ取った牡牛座の騎士タウラスは、少年を早く一人前の星座騎士にしようと決めた。
「昴。今のおまえは月の騎士だ。」
「はい。師匠。」
少年の鎧は銀色の月の光を放っていた。
「まずはプレアデスの説明をしよう。巨人族の神アトラスと海のニンフであるプレイオネの間に生まれた7人姉妹の女神の総称だ。」
「あの・・・・・・僕は男なんですけど?」
「そこは俺に言われても。」
月の精霊の銀うさぎがいれば、宇宙の神秘だぴょんと言っているだろう。
「ゴホン。」
気を入れなおす牡牛座の騎士タウラス。
「姉妹の名前は、マイア、エレクトラ、タイゲタ、アルキオネ、ケラエノ、アステローペ、メローペの7人だ。」
これらがプレアデス星団を形成して、少年の星を率いる者としての宿命である。
「剣を振る時に、星座の軌道を描くように剣を振るんだ。そうすれば、星が答えてくれるだろう。」
「はい! タウラス師匠!」
少年は剣を構える。
「よし! やってやる! 星の軌道を描くんだ!」
少年の剣がプレアデス星団を剣で軌道を描いていく。
「えい! やあ! たあ!」
最初はバラバラだった少年の剣が、強い気持ちに呼応していく。
「マイア! エレクトラ! タイゲタ! アルキオネ! ケラエノ! アステローペ! メローペ!」
一人一人の名前を呼ぶ度に剣を振り、剣の軌跡はプレアデス星団を描いていく。剣の軌跡が星々の光を導き、プレアデスの星々が応えるように輝いた。
「おお! これは正に、プレアデスだ!」
牡牛座の騎士タウラスも少年の星の輝きを描いていく剣の軌道に奇跡を感じる。
「怖いけど・・・・・・僕は逃げない! 強くなって、ルナさんたちを助けるんだ! 僕は星になるんだー!!!!!!」
強い気持ちで振り切った剣は、星の様に金色の輝きを放っていた。
「うわあ!? 鎧が星々の様に輝いている!?」
月の鎧が星の鎧に変化していく。
「おお! やはり、そうだ! 昴! おまえは月の騎士ではない! 星座の騎士なのだ!」
「僕が星座の騎士!?」
「そうだ! 今からおまえは、星座騎士プレアデスだ!」
少年は、星座騎士になった。
「やったー! 僕は進化したんだ! 僕は強くなったんだ!」
「おい。試しに飛んでみろ。星の鎧を身にまとったおまえなら、星になれるはずだ。」
「はい! やってみます!」
少年は、星座騎士になってから初のフライトである。
「飛びたい! 彗星のように! 僕は流れ星になるんだ! うおおおおおおー!」
強い思いを込めると星の鎧が黄金の輝きを放ち、少年を加速させる。
「飛べた!? 僕は星になって飛んでいるんだ!? 宇宙と一体になっているんだ!?」
黒く広がる宇宙に少年は星の軌道を描いて猛スピードで飛んでいく。流れ星のように加速すると、遠くの銀河が光の帯になって目の前を流れる。
「うわあい! 宇宙って、なんてきれいなんだー!」
何も変わらない宇宙だけど、自分が変わった少年には特別に見えた。
地球、モーリタニアのタコ解放戦線の本拠地。
「バカな!? 何を言っている!? おまえたち!? 気は確かなのか!?」
タコ解放戦線の司令官タコ・デビルが衝撃を受け乱心している。
「本当です!? 嘘などついていません!? 惑星タコは・・・・・・消滅しました!?」
「そんな話!? 信じられるか!? タコ・キング様は!? タコ・キング様はどうなされた!?」
「宇宙魔王の手下というものが現れ、一撃で、一撃で、タコ・キング様が・・・・・・。」
タコ解放戦線の司令官タコ・デビルは、主君である宇宙の支配者を目指すタコ・キ
ングの死を知る。
タコ・キングの死の続きの回想。
「タコ・キング様!?」
現れた宇宙悪魔バエルの無の光に殺された宇宙の支配者を目指すタコ・キング。
「貴様! 許さんぞ!」
「やめておけ!? 我々の叶う相手ではない!?」
タコの騎士オクトパスの無謀な突撃を必死に止めるタコの騎士のクラーケン。
「・・・・・・。」
宇宙悪魔のバエルは、二人を気にせずに、惑星タコの地面に手を置くと大地が微細に震え、光さえ飲み込まれる。
「リ・ヴォイド・ジェネシス。」
惑星ひとつを、虚無に戻す必殺技。
ゴゴゴゴゴゴゴー!
「うわあ!? なんだ!?」
大地震が起こり、地面が避けていく。
「貴様!? いったい何をした。」
「これから無の世界の創生が始まるのだ! ワッハッハー!」
ニュンンン!
そう言い残すと、宇宙悪魔バエルは小さなブラックホールに呑み込まれ姿を消した。笑い声が宇宙の闇に反響し、全ての星の光が一瞬揺れた。
ゴゴゴゴゴゴゴー!
「退避だ! 総員! 星を捨てて宇宙空間に逃げるんだ!」
「タコ!?」
タコの騎士オクトパスとクラーケンや宇宙タコの黒タコたちは、間一髪のところで惑星タコから脱出する。
「ああ~!? 我が星が!? タコの惑星が!?」
多くのタコたちの目の前で、タコの惑星は粉々に粉砕され消滅する。
「ふ、ふ、故郷が亡くなってしまった!? うわああああー!」
タコの悲劇。そして・・・・・・無の始まりである。
惑星タコ消滅の回想、終わる。
「おまえたちは何をやっていたのだ!? 私が、私が側にいればタコ・キング様をお守りすることができたのに!? うおおおおおおー!」
悔しさが抑えられないタコ・デビル。
「タコ~!? タコ~!?」
無線の後ろでは、子タコたちが泣いている。
「タコ・・・・・・。」
宇宙タコたちは絶望で落胆している。
「我々は数千の宇宙タコが地球に向かっております。受け入れは可能でしょうか?」
「ああ! 大丈夫だ! 地球は青く美しい! 我々の第二の故郷にするのに、ふさわしい星だ!」
地球は、タコから見ても、水の星なのである。
「ありがとうございます! 地球で会えるのを楽しみにしています!」
「ああ! 待っているぞ! 同胞よ!」
地球は、タコの惑星になってしまうのか。
「・・・・・・。」
タコ・デビルは、無くなったタコの惑星のことを思い出し懐かしがり目から涙をこぼした。
地球。
「プシャー!!!!!!」
人類とタコが戦いを繰り広げる地球に異変が起こった。
「ば、化け物だ!? 逃げろ!? ギャアアアアアアー!」
アメリカ大陸に巨大な鯨が現れ、海岸で潮を吹いて暴れている。
「ギャオー!!!!!!」
中国には、巨大な鳥が現れ鳴き声は超音波になり、羽の羽ばたきは竜巻を起こす。
「あんな大きな鳥は見たことがない!? ギャアアアアアアー!」
突風に飛ばされた中国人がモンゴルのゴビ砂漠で発見される。
「ガルルルルルルー!!!!!!」
ロシアには、巨大な牛が現れ、軍隊の砲撃でも、ビルでも、突進を止めることはできなかった。
「なんなの!? タコの仲間なの!? いったい地球はどうなってしまったのよ!? ギャアアアアアアー!」
地球は、タコの襲来だけだなく、巨大なモンスターにも襲われた。
ブラックホール、無の城。
「ワッハッハー! ワッハッハー! ワッハッハー!!!!!!」
暗黒空間に宇宙魔王カグヤの代理の宇宙猫のクロアナの笑い声だけが、どこまでも響いていく。
「他人の不幸は蜜の味。悲劇は私の栄養になる。」
愉快で笑いが止まらなかった。
「宇宙魔王様の力を使えば、悪魔だろうが、モンスターだろうが、全て、私の思い通りだ! オッホッホー!」
惑星タコを消滅させたり、地球に巨大モンスターが現れたのも、宇宙黒猫のクロアナの仕業だった。
「手は緩めない! 手は緩めないぞ! ワッハッハー!」
この世の春を楽しむ宇宙猫のクロアナ。
「クロアナ様!? さすがに、これはやり過ぎでは!?」
「なに?」
手下の宇宙悪魔が宇宙魔王の代理人の宇宙猫に意見する。
「ニャアー!」
宇宙猫は口を開き、可愛い鳴き声で、ブラックホールを発動させる。
「ギャアアアアアアー!」
進言した悪魔を吸い込んだら、細身の宇宙猫のクロアナが、デブ猫になる。
「聞け! おまえたち! 私は、宇宙魔王様から全権を任され、宇宙魔王様が目覚めるまでは、私が宇宙魔王なのだ!」
自分が宇宙魔王だと公言してしまう宇宙猫クロアナ。
「選べ! 私に従うか! ブラックホールに呑み込まれるか! さあ! さあ! さあ!」
そして、絶対的な力であるブラックホールを喉に持つ宇宙猫は服従か死を選ばせようとする。
「クロアナ様に忠誠を誓います!」
「我々を導いてください! 宇宙魔王クロアナ様!」
「クロアナ様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
宇宙悪魔たちのクロアナ様万歳の大合唱である。
「オッホッホー! それでいいのだ! それでいい! 世は満足じゃ! ワッハッハー!」
ご機嫌な宇宙魔王の代理人の宇宙猫のクロアナであった。
「この世は私のものだ! オッホッホー! オッホッホー! オッホッホー!」
もう全ては、宇宙猫のクロアナのものだった。
火星付近の宇宙空間。
「私の仲間を返してもらおうか?」
月の騎士ルナが火星にたどり着いた。
「返せと言われて返すと思いますか? タコさんたち! やっておしまいなさい!」
「タコ!」
火星の騎士マーズの号令で赤タコたちが開戦のタコを告げる。
「タコタコ!」
無酸素の宇宙空間なのに、赤タコは火を吐いて月の騎士ルナを攻撃してくる。
「見ましたか! これが火星の神秘です!」
火星の騎士マーズがうさぎの代わりに神秘を担当する。
「フン。そんなもの、私に効くか!」
「タコ!?」
月の騎士ルナの剣は、赤タコの火を切り裂いていく。
「そこまでだ! こいつらがどうなってもいいのか?」
「ルナ! 助けて!」
「捕まっちゃいました。アハッ!」
火星の騎士マーズは、捕虜にしていた月の騎士のアルテミスとセレーネーを前面に出す。
「アルテミス!? セレーネー!? 卑怯だぞ! 惑星騎士のやることか!?」
月の騎士ルナは、火星の騎士マーズの作戦を非難する。
「何か文句でもある? 火星の騎士だから、情熱的じゃないといけないの? 惑星騎士は人質を取ってはいけないルールでもあるの?」
ギャップ萌えな、火星の騎士マーズ。
「・・・・・・。」
人質を取られて手も足も出ない月の騎士ルナ。
「ルナ! 私たちに構わないで! マーズをぶっ倒すのよ!」
「こらー! そんなことを言ったら、ルナちゃんは我々を気にせずに、マーズを斬りにかかるでしょうが!?」
「おい。聞こえているぞ。」
長い付き合いなので、月の騎士アルテミスとセレーネーはルナの性格をよく理解している。
「好きにしろ。」
人質を取られて、月の剣から手を放す月の騎士ルナ。
「ルナ!?」
「ありがとう! 骨は拾ってあげるからね!」
「いや。私がやられたら、次は用済みのあんたたちだと思うんだが?」
「ギャアアアアアアー!」
「それは嫌!?」
危機でも仲の良い月の騎士の三人。
「仲間思いね。友情? 絆? それが何になるというの? ただピンチになっただけですよね?」
時には、愛は足枷になる。
「さあ! タコちゃんたち! 思いっきり焼いちゃってください! 月の騎士焼きですよ!」
ギャップ萌えを試みる火星の騎士マーズだが、赤タコは火はしっかりと使う。
「タコ!」
赤タコたちが月の騎士ルナに役熱の炎を吐いた。
ニュンンン!
その時、次元が歪み、火はブラックホールに消え去る。
「なに!?」
ブラックホールから何者かが現れる。
「何者だ!? おまえは!? 月からの増援か!?」
火星の騎士マーズは、最初は夜の月の支配者ツクヨミからの援軍かと思った。
「私は、宇宙魔王様の配下の宇宙悪魔マルバス。」
現れたのは、宇宙悪魔のマルバス。
「火星を無にするためにやってきた。」
悪魔の目的は、火星の無化であった。
「はあっ? 何をふざけたことを言っているのよ!?」
自分の星を無くすと言われて火星の騎士マーズは激怒した。
「おまえなんか! 燃やしてやる! 必殺! マーズ・スラッシュー!」
火星の騎士マーズは燃え盛る火星の剣で斬りかかる。
「なに!?」
しかし、宇宙悪魔マルバスは体を無にして剣撃を透き通らせる。
ピキーン!
「危ない!」
月の騎士ルナは危険を察知した。
「こら!? 離せ!? 子ども扱いするな!?」
月の騎士ルナは火星の騎士マーズを捕まえて、宇宙悪魔マルバスと距離を取る。
「黙れ。あいつの正体が分からない。それにあいつは何かを宇宙に散布しているぞ。」
「なんですって!?」
目では見えない、微妙な宇宙空間の変化を月の騎士ルナは感じ取っていた。
「無ウイルスだ。感染したものは無に還すのだ。」
不敵な宇宙悪魔マルバスであった。
つづく。




