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捨てられるもの  作者:
1/1

誰の夢

その広大な地下施設には轟いている。 怒りが、憎しみが、悲しみが。 不気味な警報と共にあらゆる負の感情が渦巻くその場に駆け回っている者がいた。髪は少しくせ毛で黒色。顔はフードを深く被りよく見えない。左手に鞘に入った剣を持ち、右手と術者用のコートは返り血を浴び深紅に染まっている。


 

 

 



 

 


 


 

 『おい!!もう限界だ!これ以上留まれば無事どころか生きて戻ってこられないぞ!』

左耳につけている通信用の魔力結晶石から伝わる怒号が頭の中に鳴り響く。

少年は露骨に嫌な顔をしながらも渋々左手を結晶石にあて、言葉を念として魔力とともに流し込む。

 『うるさいなぁ…直接頭に流れ込むんだから音量でかくしなくてもいいじゃん!ただでさえ長時間の戦闘で疲れてるってのに…死なない程度に戦闘不能にするのも結構大変なんだぞ?』

 『のんきなこと言ってる場合か!今は何とか連中を撒けてはいるが…いいか?かなり強大な魔力がいくつもお前の元に向かって行ってるぞ!』

 『強大ってどれくらい』

 『細かい数値はもっと近づかなきゃわからないが…少なくとも魔力量はどれもお前以上だ』

 『ふーん』

 『ふーんってお前なぁ…』

 『まあいけるでしょ。魔力量が上のやつにあったことないわけじゃないし、お前の補助魔法だってある。それに戦ってみてわかったけど、ここのやつら、魔力はあってもまるで使いこなせてねえ。大人の力を持った子供みてえだ。多分、力を持たされてるんだろうな…それか、本人の魔力を限界以上に上げる技術でもあるのか…』

 『どのみち禁術レベルのろくでもない研究だろうな…』

 『ああ、間違いないね。ってなわけで、力はあっても技術がないなら俺の敵じゃないね!』

 『私だってお前の力を信頼してないわけではないが万が一はある。それにさっきからなにか…ザザ…』

 突然テレビの砂嵐のような雑音が鳴り響く。

 『ん?なんだって?』

 『やっぱり…おそらくだけど、そこはあらゆる大きな魔力に溢れすぎているんだ。だから通信にノイズが入るんだろう』

 『お前でもか』

 『ああ。ライブ会場で糸電話する位な。そのうち補助魔法も途切れ途切れになるだろう。これからは一人で戦うことになりかねないぞ。それに俺達には目的があるだろう』

 『そうだな』

 少年は後ろを振り返る。そこには見立てでは齢10程の少女が力なく立ち竦んでいた。その眼には深い絶望と微かな希望が映し出されている。少年は深い溜息を吐いた。

 『他のやつらは既に手遅れか化け物になっちまってたのは糞だが…この子一人だけでも救えただけましか。本当は全員施設ごとぶち壊してやりたかったんだがな』

 『できなくはないだろうが無駄だろう。こいつらの影響力は大きすぎる。拠点だってここだけじゃないだろうし…まだ身体強化のみで攻撃魔法を使ってないから残った魔力からお前を特定することはできないだろうが、完全に敵対するとなるとまずまともに生活できなくなるぞ。』

 『小国敵に回す方がまだましかもな!』 

笑いながら冗談めかして言ったが実際その通りでもある。

 『笑えない冗談だな、とにかくおれたちは隠密行動に徹するべきだ。脱出経路は今やっとできたから、すぐ動けるか?』

 『もちろん!流石は俺の相棒だね!これからも頼むぞ!』

 そう答え少年は少女にハンカチで拭いた手を差し伸べる。

 「よし!今からここを出るよ。歩けそうかい?」

 「う、うん…!」

 そうして少年が少女の手を取り前を向いた瞬間、少女の口から悟ってしまったといわんばかりに声が漏れ出る。

 「あっ…だめ…」

 『ザザ…ますぐそこからは゛な゛れ゛ろ゛!!!!』

 「は?」 

ドゴォォン!!

つぶやいた瞬間三方の壁を暴力の化身ともいえる程の荒々しい人型の巨体が突き破ってきた。すぐさま振り向き親指、人差し指、中指を少女に突き出し不透明な防御結界を作り出した。が、

ゴッッ

重い拳を受け、間一髪ガードした左腕はミシミシと音を立てながら少年は壁を突き破り後方に大きく吹き飛ばされる。

 『無事か!』

 『ああ、左腕はつぶれたけどな』

少年はそう言い左腕に治癒魔法をかけ治療する。

 『ここの壁は対魔力の素材が使われている。攻撃魔法への対策はもちろん、全力じゃなかったにしろお前の身体強化越しの斬撃でも壊せない壁だったのに体で突き破ってくるなんて…』

 『つまり、魔力抜きの純粋な身体能力だけであのパワーってわけか…なめてんな』

悪態をつきながら立ち上がる。

 『少女は無事か!?』

 『ああ、ありったけを込めて作りだした結界だからな、当分は壊れないだろうよ』

 『全く…俺たちさっきまで小部屋に潜んでたってのに、すっかり大広間になっちゃったじゃねえか。おまけにこんな吹き飛ばしてくれちゃって、調子乗んじゃねえぞ!』

 そう言い放ち、身体強化を全開にする。余剰分の魔力が雷のように体中に迸る。そして大きく踏み込み50メートルはあろう道を二歩で突き進み少女に一番近い怪物を右腕で殴りかかる。

「オラァッッ!!」

 3メートル程の巨体を吹き飛ばし、そのまま流れるように残り二体に目を向け、右前を左腕で殴り飛ばし、左には後ろ回し蹴りで吹き飛ばした。少女の安否を確認し、魔力を眼球に集中させ琥珀のような金色の目で怪物たちを見るが、彼らはすぐに立ち上がった。

 「ダメージがないわけじゃねえが耐久力はありそうだな…こりゃちょっとしんどいぞ~」

 『・・・く゛そ゛!』

雑音でよく聞こえなかったが声の焦り用で何となく察してしまった。轟音と共に攻撃魔法と人のようなものが二体天井を突き破ってきた。少年は握っていた剣を抜き、自身と少女に放たれた火球状の攻撃魔法を切り飛ばし、左手に持った鞘で術者へ向けて跳ね返した。魔法が敵に直撃した瞬間爆発が起き各々に距離を取らせ、膠着状態が作り出される。

 「人の形は留めているが、理性はなさそうだな…」

少年はそう分析する。少年は冷静だった。どんな状況だろうが冷静さを欠いて良い方向には運ばないと良く理解しているからだ。わかっていてもどうにもならないのが普通ではあるが少年は違った。それゆえ理解してしまったのだ。もう全力を尽くして戦うほか選択肢はないのだと。

 『ありったけの補助魔法、今頼めるか?通信できるうちによお』

 『まさか、戦うのか?だめだ!さっき話しただろう!!』

 『ごめんな、俺がもう少し強かったらこの場を切り抜けられたかもしれなかったのに』

 『…何でお前が謝るんだよ。もう隠密作戦なんてもんは終わりだ。例えこの場は凌げたとしてもここで戦った事も、ここに彼女がいたこともばれる。生きて脱走した彼女をやつらがそのまま見逃すと思うか?こうなってしまったらもうお前だけでも…』 

言い切る前に少年は相棒の声を遮った。

 『確かに俺だけで逃げることに徹すれば逃げれるかもな。でも、俺たちは救いにここまで来たんだ。ましてや今目の前には俺を信じ、希望を持ち、俺がその命を救えるかもしれない人がいる。これを捨てられる理由なんて俺には見つけられないよ』

 『例えどうなろうとな』

 『…いつもそうだけどお前はかっこつけすぎなんだよ、』

 『いつも見てるならわかるだろ?』

少年は雑談と変わらない、落ち着いた話し方と表情で問いかける。

 『ああ、お前はそういうやつだし今までも何とかしてきたな』

相棒が言うと共に少年の体が補助魔法で満たされる。これにより一定時間体は再生し続け身体能力も大幅に上昇する。少年の魔力と混じりあい、魔力の波動が吹き荒れる。

 『またな』

それを最後に通信が途絶えた。だが少年に恐れはない。この魔力を感じ一人じゃないと確信できたからだ。そうして少年は全力を出して戦う。正面からくる巨体二匹を左へ右へ切り伏せる。剣に炎をまとわせることで傷口を燃やし続け再生を遅らせる。瞬間少年へ向け火球が左右からが放たれる。が、切り伏せた勢いを殺さずにそのまま左手に逆手に持った鞘を掲げ地面に突き立てる。それを中心として半径2メートルに氷結魔法を発動させ瞬時に氷の壁を作り上げ、防ぐどころかそのまま火球をも凍らせてしまう。地面から鞘を抜き、右手の剣を後ろに引いている体勢を利用し、そのまま前の巨体へと全速の刺突攻撃を行う。それだけでは巨体はとまらない。貫かれたまま両腕で少年をつぶそうとする。が、切っ先に魔力を込め、爆発魔法を発動させる。巨体の体は中心から四散され、その爆発の勢いを使い少女の元へと戻ってきた。そして少女を囲う結界の外側へ手を向け、魔法を発動させる。氷結(ひょうけつ)陽炎(ようえん)烈風(れっぷう)魔法を同時発動させる。まず竜巻を作りその中に鋭く凝縮された氷と炎の刃を混ぜ込み、近づく者を迎撃する複合魔法を練り上げ結界を包み込み戦闘が終わるまで維持し続ける。

 「うわっこれ思ったよりくるなぁ~」

少年はそうぼやいた。無理もない。本来人が一度に扱う魔法は多くて2、3個だ。魔力量の問題もなくはないが多くは技術が原因だ。常人なら脳の処理が追い付かず、数が増えるにつれ発動すらできないのだ。ましてや今少年は身体強化と防御結界にも力を注いでいる。もっとも、この2つは1度発動させてしまえば破られない限り負担は少なく維持もしやすいのだが少年の負荷が大きいのは言うまでもない。だが後悔はなかった。

 『ちょお~っと時間かかるかもだけどもう少しだけまっててね!』

不安げな結界内の少女にそう笑いかける。

 「さてと、こっからが本番かな」

そう言い敵を見つめ直す。

敵の増援が来ることを感じ取っていたのだ。

その中でも、ひと際大きい気配が近づいていることも…


 少女は平均的な家庭に生まれ育った。特段裕福というわけではないがそれでも十分すぎるほどに幸せだった。親も兄弟も環境も幸せを享受するには充分であったが日常は突然奪われる。少女はさらわれてしまった。一瞬だった。一家とのつながりがあるものが日にちが立って初めていなくなったことに気付く程に。少女がその年代で平均以上の魔力を持っていたというだけで。もちろん少女以外の家族は処理されている。記憶の消去に関する実験を行った後。施設にとらわれ、寮の大部屋のような場所へと入ると他にも子供たちがいた。同じ被害者達だ。彼女らは身を寄せ合い、藁にも縋る思いでここからの帰還を夢見た。これを知ってか研究者たちは実験が済めば家に帰すと約束した。当然、その約束が守られることはない。逆らわれるのが煩わしかったのだろう。実験の目的は外部による能力の成長への干渉によるもの。ドーピングの少し先のようなものだろうか。だがこの表現では目的の根源である意義を表すことはできない。それは人間という種の進化である。人類の長い歴史からすると魔力を扱えるようになったのは最近といえる。今はまだ人が魔力を制しているが、いずれ崩壊しかねない。そのため強大な魔力にも耐えうる肉体を完成させるため、成長途中の子供たちを利用しているのだ。実験の内容は意外にもハードな内容ではなかった。一日に一定量の魔力を体に取り入れるというもの。錠剤だったり点滴だったり時には部屋中を故意魔力で埋め尽くしていたがそれ以外は特に何もなかった。労働を強要されるわけではなく、範囲は限られているが自由に動くこともできる。外の情報が遮断されているわけではないのでテレビや雑誌などの娯楽も豊富だった。以外にも苦痛だらけではなかったため少女たちには希望が宿る。しかし、それは一瞬にして打ち砕かれることとなる。最近体調が優れないと話していた仲間が突然亡くなった。少女たちは深く悲しんだがそれも長くは続かなかった。一人、また一人となくなっていくものがいれば、朝起きると大人に成長しており、その次の日には形容しがたい化け物の姿へと変貌している者もいた。そんな地獄の日々が続き、三年が経つ頃にはあれだけ居た仲間たちも少女一人になってしまった。もう何人見送ったかもわからない。なぜ自分だけ今もなお無事なのかも。

 『いっそ私もそっちに行ければいいのに…』

心の中で何度思ったかわからない。そんな、いつ精神に限界が来るかわからない日に彼は突然現れた。焦った表情をして走り回ってる研究員たちを見ても何も感じていなかったが彼の顔と声を感じた瞬間なくしていたものを取り戻したかのように涙があふれた。

ドオォォォン…

 「お?ここの壁はもろかったな?経費削減かあ~?」

 『今更金の心配なんかするわけないだろう。そんなことより目標はいるか?私の見立てではそこらだと思うんだが…』

 「冗談じゃん…てか不気味な監獄ばっかで今すぐ出たいんですけど…なんか中に居るっぽいし…」

そういいながら周りをきょろきょろする彼と目が合った。

 「居たぞ、生きてる。健康には見えないが、命に別状はなさそうだな。」

今までテレビや雑誌で見たどんなものよりも綺麗に見える金色の瞳を見て少女は圧倒され、呆然とした。しかし彼の言葉で現実に引き戻される。

 「俺は・・・君は?」

 「…レイナ…」

 「レイナちゃんか、ありがとう。他に誰かいたりしないか?」

 「…もう、みんないなくなっちゃった、」

 「そうか、、、通りで何も見えないわけだ…」

そういうと同時に彼の瞳がフッと金色から黒色へと姿を変える。

 「少し眩しいぞ」

彼の手から白く暖かい光が溢れだした。その光を浴びた途端、さっきまで感じていた重苦しい感覚が嘘のように晴れていった。体を蝕み続けていた魔力が消えていったのだ。

 「嘘…どうして、、、」

 「すごいだろ」

彼はニッと笑みを浮かべ私の頭に手を当てた。

 「もう大丈夫だ。お兄さんが来たからな!家に帰るよ!」

 『プッ、お兄さん…』

 思わず声を挙げる

 「誰がガキだ!ぶっ飛ばされてーのか!」

 『何で一人でしゃべってるんだろう…?』

困惑気味な少女の顔を見て察したのか直ぐに表情を戻して彼は手を取ってくれた。急いで出口へ向かをとすると何やら雑音のような声が隣の監獄から聞こえた。

 「アユミちゃん…」

私がつぶやくと彼は耳につけている宝石のような物に手を当てる。すると光を放ち始めたそして異形の者へと向けられる。それは一対の手足があり、二足歩行という点以外、ぱっと見人との共通点が見当たらないほどだった。

 「これは…」

そういう彼の眼は金色に戻っていた。

 「どうにかなるか?」

 今度は私にも声が聞こえてきた

 『無理だな。お前もわかっているんだろう?もうほとんど体が魔力と一体化してしまっている。魔獣と大差ないな。昔強大な魔力にさらされて右腕が魔獣のようになった者がいたらしい。マウスでも同じようなことが起きてたな。いずれも変化した部分が元に戻ることはなく、寿命も極端に短くなったようだ。おそらくはそれと同じことが全身に起こっている。こうなってしまってはお前の、いや、誰の治癒魔法でも浄化魔法でも戻すことはできない。ほっといてももうすぐ時間が来るだろうが、俺たちにできることがあるとするなら楽にしてやることくらいだな』

 「ああ…」

そういうと彼は先ほどと同様白い光をアユミに向ける。アユミの体から魔力が抜け落ちていき、体が崩壊していく。しかし苦痛の声は聞こえず最後まで安らかな顔をして消え去っていった。最後に感謝の言葉が聞こえたような気がしたが気のせいだろうか。

 「魔獣化とかの類の実験だったのか?」

 『それなら成功しているだろう。この子は放置されてたみたいだし、目的はまた別にありそうだな』

 「フンッ気色悪いことこの上ねーな」

 『同感だ』

 「あの…ありがとう…」

 「うん?」

彼が振り向く

 「ときどき聞こえてきたの…助けてとか、おわらせてとか…でも、私には何もできなかったから…」

彼が優しく微笑んでくれた。

 「君は本当に心優しい子だね。いいんだよ、僕は君たちを助けるためにここに来たんだから!」

そういうと彼は私に手を向け不透明なガラスの膜のようなもので包み、お姫様抱っこの形で抱えられた。そうして目の前の道を理解不能な速度で突き進む彼の顔は自信と希望で力強く満ち溢れていた。


 彼が戦っている。さっきの膜と違い、硬い壁のようなもので覆われている。彼を応援したいが外の風も音も感じず、声も届かないようだ。しかしどうしても伝えたいことがあった。なぜ感じ取れたか不思議だが、何か恐ろしいものが近づいてきていることを。


やべえか?

少年は思った。後ろの少女も感づいてるらしい。それもそのはずだ。何も複雑な理由はない。強すぎるのだ。気配が。

 『この魔力…俺の二、三倍じゃすまなくね?』

そう考察するなり方針を切り替える。様子見ながらの持久戦は不利だと断定し一撃必殺でこの場を収めることとした。まだ気配は遠くにあるため雑魚共をいなしながら右の剣に魔力を込め続ける。だが、どうやら楽観的だったようだ。

強大な魔力を感じる方角から攻撃魔法が放たれた。何とか反応し、剣を逆手に持ち腕と共に前方にクロスさせ、防御結界も張り巡らせた。しかし結界は破られた。かろうじて踏みとどまったものの全身からは白煙が立ち上っている。すぐさま少女の安否を確認した。幸いあちらの結界は健在だ。これは吉報だったが直ぐに打ち消される。

 『今の…実体を伴った熱線か何かか?どう考えても上級魔法だな、』

見渡すと怪物どもの数が目に見えて減っている。射線上に居たものが軒並み消し飛んだのだろう。対策を考える間もなく術者が音もなく目の前に現れる。

 「ほう、今のを食らって生きているか」

ッツ―!

またもや吹き飛ばされた。それも今のは魔力を応用した攻撃魔法ではない。

 『純粋な魔力の衝撃波だけでこの威力かよ、』

少年は驚愕したが絶望はしていない。向こうの攻撃がこちらの耐久を上回っただけ、こちらの攻撃が通用しないと決まったわけじゃないと冷静に判断し、仕掛けに行く。鞘を置き剣のみで切りかかる。

 「アンタ、上級術者だな?それもかなりハイレベルの。そんなすげえ奴が何でこんな陰気臭えことしてんだあ!?」

鋭い斬撃を両手杖を左手に持ちながらいなし術者は言う。

 「お前に話して何になる?諦めてないことには感心するが無謀な試みは頂けないな。」

そういいながら右手で術を発動させようとする。その瞬間術者の右手が吹き飛ばされる。

 「なに?」

動揺を隠せない。

手を貫いたのは少年の剣ではない。地面に置いてあった鞘だ。爆発魔法と烈風魔法で方角を定め飛ばし、切っ先を氷結魔法で尖らせ補強。任意のタイミングで解き放ったのだ。

 『クソッ!こいつの特攻は陽動だったのか!』

できた隙は一瞬だった。一瞬で右手を再生して見せ体勢を戻そうとするが、少年にとってはその一瞬で充分だった。

 「遅え!」

少年の斬撃は決まり、右わき腹から左肩へ切り上げた。その衝撃で術者は大きく後方へと吹き飛ぶ。

 「チッ!流石に硬えな」

少年の言う通り攻撃は通ったが致命傷には至ってない。数秒もあれば復帰してくるだろう。次で仕留めると心に決め、魔力を集中させる。


 「だめ、もうやめて、逃げて!」

少女は心からそう願った。想像を絶する苦痛を受けておきながらなお、他人を慈しむ心を忘れてはいない。一度は彼が押しているように見えたが二度目はない、いつの間にか輝きに満ちていた彼の体からは光がかすれている。続いていた再生も止まり、傷ついた体で立ち向かっている。


私のために


 『私はまた何もできないの?』

彼は私に笑ってくれた。傷ついているのに。彼は私をかばってくれた。なにも知らない人なのに。嘆きが止まらない。どうして?怒りが収まらない。激しい無力感に苛まれる。

 『もう…むりだ…』

少女の心は沈みゆき…

「イヤッ!」

 少女は彼の瞳に移る輝きを思い出した。目をつぶっても、暗闇に沈んでも、決して色あせることはなく、脳裏に移るその輝きを。

 「私はもう失いたくない!」

少女は立ち上がる。

 「私は大切な人をまもりたい!」

少女は拳を握る。

 「ただ守られるのは嫌だ、」

少女の体に魔力が満ちていく。

 「私だって、彼を、私のヒーローを…」

防御結界が打ち破られ、複合魔法が消し飛ばされる。

 「そのためなら…私は!!!」

少女の中にはもうない。怒りも、憎しみも、悲しみも。すべて捨て去り残ったものは、


慈愛。


 「はっ!?」

 「なんだと…?」

刹那、白く暖かい光が戦場を包み込む。

『私が、、、守る、、!!!』


少女は目が覚めた。ベットの上に布団をかぶっていた。窓を見るとカーテンの隙間からは木漏れ日が顔を出している。ドアの向こうからは話し声が聞こえ、朝食の匂いが鼻に通る。

 「誰を?」

上体を起こした彼女の頬には涙が伝う。

何かを忘れている。ただの夢とは思えない、朧気ながら感じたあの輝きを。



初めまして。皆さんこんにちは。さざなみです。どうでしたか!笑 私の人生初の小説になります笑 小説書いてみるか?と思い立ちすぐに書いたものなので書き方も常識も何もわからず書いてみました笑 いい出来かはわかりませんが楽しかったです!頭の中に思い浮かんでいたものを書いたのでもちろん続きもありますよ!何なら三部作くらい笑 本当は最初はもっと短めにしようと思っていました。あとからちゃんと過去偏として書こうと思っていたんですけど、書いてると止まりませんね笑 さて、今回の話は本編の少し前になりますので一話らしいのは次から始まります!世界観の説明やその他設定については次回から詳しく描いていくつもりです!それ以外でも気になることがあればその時点で答えれる範囲で答えていくので教えてください!最後まで読んでいただきありがとうございました!

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