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4章

よろしく

翌朝。教室の空気が、昨日と違っていた。視線が、明確に多い。隠そうともしていない。

「……噂、回るの早いな」

席に座る前からわかる。チェスの件は、もう学年どころか生徒会経由で校内に流れている。

「おはよ、白斗くん」

夏芽が、いつもと同じ調子で声をかけてくる。でも、その目は笑っていない。

「生徒会から、連絡来てる」

「……だろうな」

「放課後、第一会議室。逃げたら即ペナルティ」

軽く言うが、内容は重い。

「ペナルティって?」

「未履修扱い。ゲーム科だと、ほぼ退学コース」

「選択肢、ないな」

「ええ。最初から」

それ以上は言わなかった。言わなくても、十分だった。


第一会議室は、校舎の最上階にある。無駄に広く、無駄に静か。扉を開けると、そこにいた。

月城彩葉。

生徒会長席に座り、書類に目を通している。

「来たわね」

「拒否権はなかった」

「正解。判断が早いのは好きよ」

彩葉は書類を閉じ、こちらを見る。

「では、正式に通達するわ」

淡々と、感情を挟まず。

「神埼白斗。あなたは本日付で生徒会主導特別プログラムに参加する」

「……内容は?」

「簡単よ」

彼女は指を鳴らす。壁のスクリーンに、映像が映し出された。

《学内順位変動戦・β(ベータ)テスト》

《形式:強制参加型オーディナルゲーム》

《賭け対象:ポイント・単位・権限》

嫌な単語ばかり並んでいる。

「これは?」

「次世代ルールの実験。勝者は上へ、敗者は下へ」

「拒否は?」

「ないって、さっき言ったでしょう」

彩葉は小さく首を傾げる。

「安心しなさい。あなた一人じゃない」

画面が切り替わる。参加者一覧。そこには、見覚えのある名前があった。

「RiotDog……」

「ええ。あなたに負けた彼も参加」

「趣味が悪い」

「因果応報よ」

そして、最後に表示された条件。

《敗北条件:負債発生》

《規定値超過時、退学処理》

胸の奥が、静かに冷える。

「……本気だな」

「もちろん」

彩葉は、椅子から立ち上がる。

「この学園は、才能を守らない。使えない才能を切り捨てるだけ」

真っ直ぐに、こちらを見る。

「あなたがIFかどうかは、もう重要じゃない」

「じゃあ何を見たい」

「――壊れるかどうか」

一瞬、空気が止まった。

「強すぎる才能は、扱いづらい」

「だから試す?」

「だから壊すか、飼うかを決める」

残酷で、正直な答えだった。

「参加は、明日から」

「準備期間は?」

「不要でしょう」

そう言われて、否定できない自分がいる。

「最後に一つ」

彩葉が言う。

「このゲーム、途中棄権はできない」

「……」

「途中で思い出しても、遅いから」

彼女は背を向け、扉へ向かう。

「逃げ場はないわ、神埼白斗」

「最初から、なかったさ」

そう返すと、彩葉は一瞬だけ振り返った。

「その顔」

わずかに、口元が緩む。

「やっぱり、嫌いじゃない」

扉が閉まる。一人残された会議室で、俺は深く息を吐いた。

(……戻る気は、なかったはずなのにな)

けれど。胸の奥で、確かに何かが目を覚ましている。桜花学園は、俺を普通のままでは、いさせてくれない。

さて、白斗の退学の危機です。入学したばかりなのにね、、。最近は文字数を気にしながら書いてます。

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