2章
めっちゃ遅れました。他の方の本を色々読んでたので結構書き方が変わっていると思います。第三者目線(作者目線)でなく、登場人物目線での語り部が増えています。
1
桜花学園の校門は、無駄にでかい。威圧という言葉をコンクリートで成形したら、たぶんこんな感じになる。
「……ほんとに学校か、これ」
思わず独り言が漏れる。ゲーム科が有名、設備が世界最高水準、大企業直轄。噂は聞いていたが、百聞は一見にしかずだった。門をくぐった瞬間、空気が変わる。視線が、刺さる。制服姿の生徒たちが、ちらり、ちらりとこちらを見る。敵意ではない。もっと厄介な――値踏みだ。
「編入生?」
「知らない顔だな」
「どこのランク?」
ひそひそとした声が、耳に届く。どうやらこの学校では、人を見る前に“数値”を見るらしい。
「白斗くん、立ち止まらないで。遅刻は印象が悪いわ」
隣から、澄ました声。白坂夏芽。今日も完璧な制服の着こなしで、涼しい顔をしている。
「別に急いでないだろ」
「私は急いでるの。生徒会に顔を出す約束があるから」
「……生徒会?」
思わず眉をひそめると、夏芽は一瞬だけ、意味深に口角を上げた。
「ええ。桜花学園は、実力主義の極致。その象徴が――生徒会、よ」
嫌な予感しかしない。
2
教室に入った瞬間、ざわめきが一段階上がった。担任の教師が黒板を叩く。
「静かに。今日から編入生が来ている。神埼白斗だ」
名前を呼ばれ、前に出る。数十人分の視線が、再びこちらを貫く。
「自己紹介、簡単でいい」
「あぁ……神埼白斗です。よろしく」
それだけ。拍手も、歓迎もない。代わりに聞こえたのは、失望に近い空気だった。
「……普通じゃね?」
「見た目も地味」
「期待外れか」
心の中で、少しだけ肩をすくめる。その評価のままでいい。むしろ助かる。席に座った瞬間、後ろから声がした。
「なあ、編入生」
振り返ると、短髪の男子が肘をついてこちらを見ていた。目が、獣みたいに光っている。
「この学校、初日から“確認”されるって知ってるか?」
「確認?」
「実力だよ。ゲーム科なんだから、当たり前だろ」
クラスの空気が、微妙に張りつめる。ああ、来たか。
「放課後、VRルーム。軽く一戦だ」
「断ったら?」
「弱いってことで確定」
雑だな、と思う。だが、この学校ではそれが正しいのだろう。
「……わかった」
短く答えると、周囲がざわついた。
「お、乗ったぞ」
「自信あるのか?」
「無謀だろ」
夏芽が、前の席からちらりとこちらを見る。
止める気はなさそうだった。
3
放課後。VRルームは、まるで闘技場だった。観戦者が集まり、簡易的な賭けまで始まっている。コイン、ポイント、時には私物。
「第十七条、か……」
脳裏をよぎる校則。自己責任。完全自己責任。
「ビビってる?」
対戦相手の男子が笑う。ハンドルネームが表示された。――《RiotDog》。
「別に」
「強がりは嫌いじゃない」
フルダイブ開始。視界が切り替わる。都市型ステージ。遮蔽物多し。銃撃戦特化のマップだ。
(……懐かしい)
感覚が、自然に馴染む。思考が、静かに研ぎ澄まされていく。
だが――(出すな)
自分に言い聞かせる。全部は、要らない。相手が先に動く。直線的で、読みやすい。最短距離で詰め、撃つ。あえて急所は外す。
「っ!?」
相手のHPが、ぎりぎりで止まる。
観客がどよめく。
「終わりだ」
最後の一発。勝敗は決した。現実世界へ戻る。静まり返るVRルーム。
「……勝者、神埼」
誰かが呟いた。
「な、なんで……」
「RiotDog、負けたぞ?」
「編入生、何者だよ」
夏芽が近づいてきて、小声で言う。
「やりすぎ」
「……抑えた」
「それでその評価なら、先が思いやられるわね。ほんとに記憶喪失なの?」
「体が勝手にね、、」
その時。
「面白いものを見せてもらったわ」
凛とした声が、空間を裂いた。振り向くと、そこにいたのは――静かな笑みを浮かべた少女。制服の着こなし、立ち姿、視線。すべてが“上”の人間のそれだった。
「生徒会長だ」
「うそ……本人?」
少女は俺をまっすぐに見つめる。
「神埼白斗。
あなた――盤の外にいるつもり?IFなのでしょう?」
自分にだけが聞こえるように声を抑えて言った。
心臓が、一拍遅れて鳴った。
(……やっぱり、逃げ切れないか)
こうして俺は、桜花学園という名のゲーム盤に、正式に置かれた。
はい。生徒会長来ました!!!!!!
生徒会長っていいですよねぇ。
というわけで、次回は生徒会長様とのチェス的な対戦ですっ!
お楽しみに!




