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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第一章――失楽園

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第58話 作戦

 レイは今、限られた反政府主義者しか入ることの出来ない隠れ家――のような場所で待機していた。


(疲れた…)


 ここまでの道のりを思い出して、レイは小さくため息をく、

 ロベリアからの依頼を受注した後、レイはロベリアと一旦分かれて別々に特別12管理区に入った。理由は単に、ロベリアとレイが共に行動していることがバレないためにだ。

 とはいっても。

 特別12管理区に入る前の荒野で共にいた時、どこかから監視されていたら無駄な行動とはなるが。

 そして検問なども無いため、レイは難無く中に入ることができた。その後にロベリアから伝えられた案内に沿って、ここまで辿りつくことが出来た。その際に、警備隊かPUPDか、それとも別の者達かは分からないが尾行されていたようだった。

 結局はロベリアの仲間が周囲のカメラなどを一時的にシャットダウンさせ、またレイは尾行をけたため無事、安全にここまでたどり着くことが出来た。ロベリアからの話を聞く限りでは、先に特別12管理区に入った彼女が付け狙われたりするようなことも無かったらしく、まだ分からないが、レイとロベリアが現在行動を共にしていることについてまだバレていない可能性がある。

 ともかく。

 無事にここにこれたわけだが、レイが建物の中に入るとまずはターレットが設置されてある長方形の部屋へと入り、その後は機械音声に従って移動して現在いる部屋まで来た。

 

 正方形で白い壁に囲まれている。中心には一つの机と向かい合うようにして置いてある二つの椅子。尋問室のような部屋だ。

 レイはここで10分ほど待ちぼうけを食らっている。

 しかしそれから少しして、部屋にたった一つだけある扉が開いた。


「はっは。すまない。仲間に君のことを信じてもらうのに思いのほか時間がかかってしまった」


 そう苦笑しながら入って来たのはロベリアだった。


「いや、全然大丈夫だ。それよりも仲間ってのは」

「ああ。レイが予想しているので合ってるよ」

 

 支局ビルの襲撃を行う仲間――のことだろう。恐らく、この作戦は反政府主義者の中でも知っているものが少ない、機密性の高い案剣だ。いきなりきた部外者のレイを信じて作戦に参加させろ――というのも素直にはいかないことが容易に想像できる。レイがここで待っていた15分ほど、そしてそれよりも前に着いていたロベリアはレイのことでかなり話し合っていたのだろう。

 ロベリアは平気な顔をしているが、かなり大変だっただろうと予想してレイは言葉をかける。


「わざわざすまかった」

「あ、全然いいよ」


 ロベリアは椅子に座りながらそう返して続けた。


 「君、私たちよりもやばいことしてるし」


 少し苦笑いをして、ロベリアはレイに言う。


「私たちは確かに危険思想を持ってそれを広めているけど、実際起こした事件、活動っていうのは少ないんだよ。だから懸賞金がかけられている人達も少ない。だけど君は違うでしょ?うちのハッカーが調べたらすごかったよ」


 殺しは当然のこと、マザーシティで多くの犯罪を犯してきた。当然それだけでない警備隊員を数百という規模で殺し、PUPDの隊員なんて数え切れないほど殺してきた。直接的に、数字上で容易に可視化できるほどレイのしてきたことは、議会連合にとって脅威だ。

 それでもレイに懸賞金がかけられていないのはその特殊性からか。

 いずれにしても。これだけの情報があればレイを信じることが出来る証拠となり得る。あくまでも資料上の数字や文章だが、それでも信じるに値するものだった。

 

「そうか。それは良かった」

「まあね。それよりもレイ」

「…なんだ?」

「作戦開始はもうすぐだ。作戦の概要と注意点だけ、今の内に話しておこう」

「分かった」


 するとロベリアはタブレットを取り出して机の上に置いた。そして起動させるとホログラムが浮かび上がる。


「まず。今回の作戦で最も危険で想定の難しい事案からだ。これを見てくれ」


 レイの目の前に映し出されたホログラムが移り変わり、一人の男が映し出される。


「モーグ・モーチガルド。私達の最大の障害となり得る男だ」


 聞いたことがある。というより、傭兵業をしているの者ならばこの男を知らぬ者はいない。


「生きてたのか」

「当然。彼が簡単に死ぬことはありえない。一時期、表舞台からいなくなって死亡説も囁かれていたが、やはり生きていたようだ」

「こいつが敵なのか」

「そうだね。どこに行ったのかと思っていたが…まさか評議会員の護衛をしてるとはね。私達が今回の襲撃に際して標的となる対象を調べていたら――こいつが出てきた。思わず顔が引きずったよ」

「だろうな。《《最強の傭兵》》、だったか?」


 レイの言葉にロベリアは思わず苦笑する。


「そうだね。彼は、少なくとも表舞台にいた頃はそう呼ばれていた。事実、そう呼ばれるだけの力があった。一個人が持てる中では最高のね」

「ああ」


 モーグ・モーチガルド。かつて名を馳せたソロの傭兵。依頼は必ず成功させ、確認されている限りで失敗した依頼は一つだけ。中部で活動する傭兵の中で最強、とうたわれていた男だ。

 中部では個人が持てる装備というのに限りがある。ある一定のラインから上の装備はすべて議会連合が規制しているからだ。そのためどれだけ成り上がろうと、上限がある。技術や経験でおぎなえる絶対値をどれだけ伸ばしたところでいつか限界が来る。それこそ、遺跡の最深部を探索できるような、それほどの力はこの中部にいて得ることが出来ない。

 しかし彼、モーグ・モーチガルドはただ唯一、その常識に捕らわれない。たとえ装備が弱くとも技術や経験でそれらすべてをおぎない、相手の数がどれだけ多くとも依頼を達成してきた。

 その伝説的な偉業から最強の傭兵として謳われるようになり、その名はある事件をきっかけにさらに広まることとなる。


「ま、モーグの話は一旦この辺にしておこうか。今は彼と戦う可能性があるよ、ってことを事前に知らせたかっただけだからね。後日また、彼のことについて話そう」

「ああ。分かった」


 するとロベリアはホログラムを閉じて、そして次の話を切り出す。


「次に私の仲間について紹介しようか……って」


 ロベリアがふと、タブレットに視線を落として現在時刻を見た。


「もうこんな時間か。レイ、紹介は明日にするよ。君ももう疲れだだろう?」

「……別にいまでもいいが…」

「んん~。今多分、二人ぐらい外にいるんだよね。だから帰ってこないと紹介出来ないし、たぶん帰ってくるの遅いし、あいつら」

「そうか。分かった」

「お、話が早くて助かるよ」

 

 ロベリアは立ち上がり、続けて言う。


「じゃあレイの部屋に案内するよ。あんまり広くないけど」


 部屋があるだけありがたい、とスラムで生きていた時のことを思い出してレイは少し笑う。


「何か面白いことでもあったのかい?」

「…いや」

「そう。じゃあ部屋に行くときついでに夕食も取ってこよう、今日の夕食担当はヨシュアだからかなり美味しいものが期待できるぞ、レイ」

「そ、そうか」


 ヨシュア、という人物のご飯が美味しいと言われたってレイはその人物と面識がないため反応しずらい。だがロベリアは、そのレイの反応に特に気にしている様子はない。


「明日また、私が部屋に行くからその時に紹介する。それでいい?」

「大丈夫だ」

「分かった。じゃあ行こうか」

「ああ」


 ロベリアに付いて行き、レイは部屋の外に出た。

 その後、特に何か起きることはなく、レイはベットで寝ることが出来た。

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