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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
終章――ロストテイカー

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351/366

第351話 マザーシティ

 マザーシティにある反政府主義者たちの拠点。そこでは反政府主義者たちのリーダーであるエレノアが指示を出していた。そのところに部下からの連絡が入って来る。


「二人組を連れてきました」

「分かった。一人にしてくれ」


 部下からの連絡を聞いた後、エレノアは部屋に残っていた他の幹部連中を退け、一人になる。そして一人になったところで、部下の案内で二人が部屋の中に入って来た。


「君たちか……というより、一人の顔は覚えているがな」

 

 エレノアはレイとイースの顔をそれぞれ見て呟いた。

 レイとイースは戦場に降り立ってからまずクラウディア陣営の殲滅を一瞬で終わらせた。その後、反政府主義者側からも攻撃されそうになったが、レイの説得で何とか事なきを得る。その情報がエレノアの元まで伝わり、こうして呼ばれたということだ。


「覚えてたのか」


 エレノアとレイとが直接顔を合わせたのなんて一回や二回しかない。それなのに覚えているとは驚きだ。


「当然、最強の傭兵。モーグ・モーチガルドを殺したのは君の力によるところが大きい。それに反重力機関を壊したのも君だ。あの作戦を成功させたのは君のおかげだと言ってもいい。そんな人物を私が忘れるわけがないだろう?」

「……そうか」


 果たしてその現実がレイにとって良かったものなのか、それとも良くないものなのか。少なくともエレノアの視点で見れば敵の支局を破壊するきっかけとなり、狼煙を上げる合図となった事件だ。

 良い記憶だろう。

 しかしレイにとっては失くしたものが多すぎた。そして大きすぎた。


「まあこんな話もあれだ。まずは君たちのことを聞きたい。なぜレイ(きみ)が生きているのか、どこに行っていたのか、そして隣の彼女が誰なのかをね。話してくれたら、君が聞きたいことを答えてあげるよ。まあ大体察しはつくけどね」


 今更隠す理由も無い。レイはすべて話す準備が出来ている。

 レイは話しても良いか、一度イースの方を見ると微かに目を閉じて肯定の合図を出していた。


「分かった。すべて話そう」


 ノアはそう言って、中部からなぜ西部に行き、また中部に舞い戻って来たかの理由を話し始めた。


 ◆


「大体の事情は分かったよ」


 レイの話を聞いたエレノアが静かに呟いた。


「色々とあったようだね」


 軽く机を叩き、エレノアが椅子から立つ。


「つまるところ。君たちは亡霊とハカマダに会うためにわざわざ中部に戻って来たと、その認識で間違いはないかな」


 レイとしてはマザーシティに戻るということも目的の一つではあったが、動機としては合っている。


「ああ、それで合ってる」

「そうか。だが残念だ。今、亡霊とハカマダがどこにいるのかは私にも分からない」

「あんたは亡霊から言われてこの組織を作ったんだろ、あいつらに対峙するために。なのに分からないのか」


 エレノアが反政府主義者を率いているのは偶然と偶然が重なった結果だ。もともと、権威に対して反抗的な立場を取っていたエレノアは道半ばで出会った亡霊の援助を受け、中部に組織を作って欲しいと願われた。

 そしてすでに《《敵》》の術中にはまってしまった議会連合を打倒し、敵の進行を食い止める役割を引き受けて欲しい。それが議会連合を倒すために資金を提供する亡霊からエレノアへの提案だった。

 

 そして見事エレノアは議会連合を打倒し、今は敵の殲滅に当たっている。そう、東部にてその存在を顕わにしたエレネイアの刺客との戦いだ。


 その状況からエレノアは亡霊と深く関わっていると思っていたが、どうやら違うようだ。


「私と亡霊は対等な関係だ。そして私の願いである議会連合の打倒はすでに果たし、あとは亡霊からの願いを叶えるのみ。私はここでクラウディアを止めているだけでいい。それ以上の作戦は無い。故に亡霊と言葉を交わす必要も無い」

「じゃあ本当に分からないのか」

「そうだね、もう東部へと旅立ってしまったのかもしれないし、ここにいるのかもしれない。私としては少しぐらい別れの挨拶をしてくれても良かったと思っている

けれど、まあそこら辺のことは淡泊な奴だからな。仕方ない」


 その時、レイとエレノア、イースがいた部屋の扉が突然開かれる。


「よお。ここに来たからってことは、もう決めたようだな」


 開かれた扉から入って来たのは一人の男だった。見覚えのある顔。そして聞きなれた声。


「出迎えには少し遅かったな、ハカマダ」

「はっは、そう言うな」


 レイとハカマダが軽く笑った。

 そしてハカマダが来たことでそれまで退屈そうな顔をしていたイースが笑顔になり、しかし前のように飛びつくことはせず、微笑んだ。


「来たよ、ハカマダ」

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