第349話 再び、超える
数十分後。
レイが統括管理人格のいる部屋に戻って来る。
「案外長かったね」
先に質問を終えてレイが来るのを待っていたイースが言う。
「思ったよりも長引いてな」
思ったよりも、思いのほか、連絡すべき人物がいたし、話すこともあった。こうして思い返してみると西部ではかなり多くの人と会ってきた。どうやら中部と同じ運命は辿らなかったらしい。
「遅れてすまなかった」
「いいよ」
その瞬間、部屋の一面を覆っていた半透明の壁の一部が開く。そして開いた部分に音も立てず一機の飛行ユニットが張り付く。
統括管理人格が飛行ユニットの隣にアバターを出現させ、レイ達を招く。
「さて、そろそろ時間も無くなってきました。お乗りください」
これに乗ればすぐに中部へと移動する。次に西部に戻って来るのはいつか、もしかしたら戻らないかも、戻れないかもしれない。片道切符にもなり得る。そのことを重々承知している。
だがすでにレイは覚悟を決めていた。
止まることは無く、飛行ユニットの傍まで近づく。同様に、イースは統括管理人格に一言「さっきはありがとう」とだけ述べると飛行ユニットに乗り込んだ。レイもその後ろに続こうとすると、統括管理人格が制止した。
「少しお待ちいただけますか。今、運んでいた品物が届きました」
一体なにを、とレイは疑問に思いながら統括管理人格の手に握られたものを見た。いつ持ったのか分からないが、いつの間にか握られていた。それにはどこか見覚えがある。
「最後の戦い。今まで共にした《《相棒》》がいなければしまりません。なので今、工場に残っていたたった一つの完成品をあなたに差し上げます」
統括管理人格が持っていたのは一つの義手。レイが『それ』と呼び、Quantaと呼ばれている兵器だった。
「いいのか」
「ええ。私からのプレゼントですよ」
レイが差し出されたQuantaを受け取る。
「レイさんが前に使っていたQuantaをさらに強化したタイプです。扱い方、基本的な性能に違いはありません。質だけが上がっています。加えて、レイさんの体に残るQuantaの残骸、それと結合してさらに性能を高めます」
「…………そうか」
バルバトスとの戦いの後、レイの右腕が弾けとんだあの時。『それ』は使用不可能な状態になっただけでレイの体の中には残骸として残っていた。今渡された強化版のQuantaはその残骸と結合し、さらに性能を高める。
「ありがとう」
「戦地へと向かう者に対しての当然の支援です」
レイが飛行ユニットの開口部に体の半分を入れる。その時に振り向いて統括管理人格を見た。
「助かる」
「はい。ではまた」
「ああ、またな」
レイが飛行ユニットに乗り込むと自動で開口部が閉まり、飛行ユニットが動き出す。
飛行ユニットの内部にはベットや椅子などが用意された簡易的ながらも長距離の旅にも耐えうる構造になっていた。レイは飛行ユニットの中を歩き、そして待っていたイースを見つける。
「じゃあ行こうか」
「そうだね」
レイとイースは軽く拳を打ち付けあった。
その後、飛行ユニットは中部へと向けて動き出した。
第三章 『西部事変』――終




