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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第三章――西部事変

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343/366

第343話 テイカーフロント基地

 車両を丸二日走らせ続けたレイたちは完全都市ライバックの近くにあるテイカーフロントの基地にまで辿り着いていた。近くに都市は無く、物資の補給も大変ということでテイカーフロントの基地は最低限の設備だけを備えた簡素なものだったが、それでもイナバからの指示によってレイたちに最大限の支援を用意していた。

 テイカーフロントの基地に辿り着いたのが今日の昼。今すぐに出発すれば今日中に完全都市ライバックへと辿り着くだろう。しかし長旅の疲労もあり、休むのが普通だ。

 完全都市ライバックは特別災害指定個体としてあまりにも危険がある。休養を取り、装備を整え、それから行った方がよい。しかし、レイ達は意味も無く先を急ぐ。生き急ぐように、死に急ぐように。

 今日の早朝について準備が整ったのが昼前。夕方には完全都市ライバックに辿り着くだろう。


 すでにイースは準備を済ませ、レイが来るまでの間テイカーフロントの基地内にあるベットで寝ている。一方でレイは最後の用件を終わらせていた。


 テイカーフロント基地内にある部屋。防音設備などが整えられた部屋でレイはある人物と電話していた。


『イナバ。何かあったのか』

『大きな出来事ではないですが、一つお伝えしておきたいことがありまして』


 レイはテイカーフロントの基地に着いたらイナバに連絡するようにミケから一報貰っていた。何かしらの用件があることはその時点で分かり切っており、ある程度準備を終えて落ち着いたことにこうして連絡している。


『それで、事件の内容は』

『ヘズ教に関してのものです』

『………』


 レイが基幹システムを奪取してから今に至るまでの三か月間。この間にヘズ教の動きは活発になっている。抑止力となっていたハヤサカ技術研究所が消えたのが大きな要因だったのか、それとも別の理由があったのか。少なくとも基幹システムを奪い合うあの事件を機にヘズ教は活発になった。

 その動きには財閥とテイカーフロントの両方が警戒しており、情報収集が進められている。 

 その続報が入った、というところだろうか。


『その推測であっていますよ。レイさんにあまり関係が無いので話すか迷いましたが、一応、必要になると思いましたのでこうして連絡させていただきました』

『そうか』

『はい。レイさんも知っているかと思いますが、調査の結果ヘズ教が東部発祥の組織だと分かりました』

『……そうか』


 大きな驚きはない。ハカマダから聞いた話、アーネスが呟いた言葉。それらすべてを合わせ、レイの推察力ならばその程度のことは容易に想像できたからだ。


『まあその程度のことでは連絡いたしません。今回はそれ以上の情報が入ったので知らせようと思いまして』

『頼めるか』

『ええ。そのために連絡したのですから』


 イナバはそう言って話し始める。

 ヘズ教は中部で反政府主義者と戦いを繰り広げているクラウディアという組織と同一の組織ということが一番に伝えられた。

 そしてその情報から西部で財閥とテイカーフロントが力を合わせ、反政府主義者と力を《《表面的に》》合わせるという話が出ているということ。反政府主義者側もそのことに関して好意的な返事をくれていること。

 そしてヘズ教の拠点を見つけ、近々スカーフェイスと共に襲撃を開始すること。

 

 それらのことを淡々と伝えられた。


『以上です』

『助かる。その辺の情勢は知っておきたかった』


 レイは完全都市ライバックに行った後、経済線を越える。そのため中部の情勢などには知っておく必要がある。何しろ議会連合が潰え、今は反政府主義者とクラウディアが戦っているのだ。

 中部に行ったとして自らの立ち位置を決める必要がある。

 ただここで一つ疑問が浮かぶ。別にその報告は完全都市ライバックから帰った後でもできた。なのにわざわざテイカーフロントの基地についたら連絡してくれ、などとおかしな話だ。

 レイが返ってこない可能性を危惧しているのならばもっと別の言葉をかけるべきだろう。まるでもう会えないかのような、そんな様子を感じさせる。


『なんで今、その話を俺にしてきたんだ。別に帰ってからでもいいだろ』


 イナバからの返信は僅かに間を置いた。


『勘ですよ』

『勘?』

『ええ。今伝え忘れればもう機会が無いと、そう思いました』

『俺が帰ってこないと?』

『はは。違いますよ。ただ帰ってこないとは思っています。ただ死ぬとは思っていません。私はこれから忙しくなるので通話には出れません。なので今の内に伝えておきたいと思いまして』

『これが最後だ、と』

『そうです。あくまでも勘でですが』

『色々と感謝してる』

『こちらこそ』

『じゃあな、イナバ』

『さようなら。レイさん』


 通話が切れる。

 これで最後の仕事を終えた。

 後は完全都市ライバックへと向かうのみだ。

 

 ◆


 昼頃。レイとイースが整備された車両の前に立っていた。


「もう用意は済んだのか」

「うん、寝た」

「良く寝れたか」

「完璧」

「ははっ。そうか」

 

 軽く言葉を交わし、レイとイースは車両に乗り込む。今から半日ほどかけて完全都市ライバックの元まで向かう。

 車両の整備が完璧に行き届き、必要なものはすべて荷台に積まれてある。あとは向かうのみ。レイがハンドルを握り締めると一度息をはいた。そしてゆっくりと吸い込むと車両を完全都市ライバックに向けて走らせた。

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