表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第三章――西部事変

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

339/366

第339話 最強の男

 研究所の壁を突き破り、レイの体が遥か後方へと吹き飛ばされる。しかしその途中でクッションのようなものに受け止められて止まる。


「大丈夫」


 レイが見ると横にはイースの姿があった。そしてレイを受け止めていたのは記憶合金。


「ああ」

 

 レイは答えながら体勢を整える。その際にイースが口を開いた。


「外套の男、協力してくれると助かる」

「構わない」

「ありがとう」

「当然だ」

 

 会話を終えると同時に地面が砕け、レイとイースの姿が一瞬にして消える。直後、イースとレイは研究所内の壁を再度突き破りながら、今度は機械型モンスターと正対する。

 その際、レイがマナの方をを見るとまだ逃げられていなかった。マナは傷ついた様子で頭から血を流し、クロエは強化服が壊れ、サンシャに至っては右腕が無かった。たった数秒でこれだけの被害。

 だがクロエとサンシャはマナを守るために全力を尽くし、その数秒を稼いだ。レイとイースが戻るまでの間を。そしてレイとイースが戻り、機械型モンスターの注意は二人に向けられる。 

 その間に二人に逃げ出してもらえばいい。

 基幹システム周辺ならばモンスターもいないはず。遺跡の外まで逃げることができなくとも二人の戦いの余波で死ぬことが無い場所まで逃げることならできる。そして機械型モンスターがクロエとサンシャを攻撃しようとした瞬間、壁を突き破って現れたレイとイースがそれぞれ機械型モンスターを攻撃する。イースは記憶合金を使い、レイは突撃銃を撃ちこむ。


「合わせて!」

「ああ」


 イースが記憶合金を操り、機械型モンスターの胴体に埋め込まれた電磁砲を防ぎながら一気に距離を詰める。記憶合金は防御から攻撃へ、電磁砲の攻撃を防ぎながらも防御する分に余分だった記憶合金を刀のような形状に変化させ攻撃に転用する。 

 しかしながら、機械型モンスターに振り降ろされた刀は力場装甲によって阻まれ――無い。レイが振り下ろされる瞬間に会わせて突撃銃を撃ちこみ力場装甲を破壊していた。

 そしてイースが刀を振り下ろす。その瞬間、イースの腹部当たりで爆発が起こる。突如として起きた爆発によってイースは吹き飛ばされた。だがレイが瞬時に突撃銃を構えモンスターに向かって撃ち込む。

 弾倉を使い切り、一時的に撃てなくなろうと構わない。ひたすらに撃ち続ける。しかし引き金を引いたところで、レイの腹部当たりに違和感が走る。そして違和感の招待をレイが見て、理解した瞬間に爆発が起き吹き飛ばされる。

 

 幸い。レイは自身に何が起きたか理解できていた。そのおかげで塑性粒子の壁を作り被害を軽減、それでいてアーティファクトである強化服の防御性能もあり負傷は無い。

 

(力場装甲……座標指定にしては早いな。機械らしい演算速度だな)


 爆発する際、レイの腹部には力場装甲があった。小さく、敵から攻撃を守るための盾ではないと瞬時に理解できる大きさ。力場装甲と空中で固定し、レイの動きを阻害する障害物として置いたのか、その可能性も考えた。

 しかし力場装甲を自らの体から離れた場所に、それもレイの腹部当たりにピンポイントで置いたという事実が疑念を生んだ。力場装甲を自らから離れた場所に展開するのは相応の装置と演算処理が必要になる。そして今、レイの相対している機械型モンスターには力場装甲を遠方に展開する装置も、できるだけの演算処理能力も持っている。

 それだけの力を有していて敵の防御だけに力場装甲を使うか。レイならば使わない。

 攻撃に転用できるよう使う。


(力場装甲を圧縮させて爆発させているのか)


 原因究明は一瞬だった。レイの腹部に展開された力場装甲は一瞬にして縮み、その圧力によって爆発した。それによって生じた一時的な空間の歪み、もし生身で巻き込まれれば接触した部位が捻り、千切り飛ばされるだろう。

 しかしレイは直前に塑性粒子で壁を作り、尚且つ旧時代製の強化服で守られていた。

 レイは無傷のまますぐに戦線に復帰する。

 同時にイースも戻る。


「ハヤサカ。まだ逃げてないんだね」


 イースが機械型モンスターの背後で壁に背を預けながら観戦しているハヤサカに言う。


「逃げる必要が無いというのに退く理由が無いだろう?」

「あっそ」


 記憶合金がイースの体を包み込み、装甲のような形へと変化する。それま機械のような、あるいは昆虫のような。奇しくも目の前の機械型モンスターに見た目が似ていた。

 よく見てみると記憶合金は完全に装甲として停止しているわけではなく、常にイースの体を流動していた。常に、ゆったりと流れる水のように記憶合金はイースの体を包み込んでいた。

 あの形態こそがイースの本懐。常に薄着だったのは恐らくこれが関係しているのだろう。

 

 レイとイースは共に戦ったのがこれが初めてだというのに目を合わせず、しかし息の合った動きで機械型モンスターの手を的確に封じていく。力場装甲の圧縮による爆発、というからくりを見抜いた以上。同じ手はもう食らわない。

 同じくイースも爆破の原因に気がついており、常に衝撃を逃がし続けれるように流動している記憶合金の装備で対処している。


 機械型モンスターが力場装甲を展開すればレイかイースのどちらかが破壊し、機械型モンスターの元まで迫る。逃げるように後ろに飛べばイースが後ろにいるハヤサカを狙う。

 当然、機械型モンスターはハヤサカを守るために力場装甲を展開しなければならず、己の防御が二の次になる。相手がイース一人であれば、ハヤサカを攻撃しようとしている以上、同時に機械型モンスターを攻撃することは不可能。

 しかし今はレイがいる。

 機械型モンスターが力場装甲をハヤサカを守るために展開した瞬間、レイが機械型モンスターの元まで迫る。一応、機械型モンスターも突撃銃の弾倉が切れたタイミングをぎりぎりまで見計らって己が身の防御に力場装甲を回していた。

 そして突撃銃の弾丸が切れ、ハヤサカに攻撃が届きそうになるとぎりぎりで力場装甲を展開し防御。機械ならではの迷いのない論理的且つ正確な対処。レイの突撃銃は止められ、ハヤサカへの攻撃も止められる。

 しかしレイにはもう一つ武装が残っている。

 懐から格納状態であった刀を引き出し、展開する。一瞬にして機械型モンスターの元まで距離を詰めたレイの腹部に、前と同じように力場装甲が展開される。だが圧縮が始まるよりも早く、塑性粒子で力場装甲を包み込んだ。

 力場装甲は塑性粒子によって爆発を抑えられる。そしてレイは何にも阻まれず機械型モンスターの元までたどり着く。

  

 小さく、しかし訓練された動きで刀を構えた。その瞬間、レイの周りで力場装甲が展開される。恐らくハヤサカに割いていた分を攻撃が止んだためレイに回したのだろう。

 一瞬で構築される力場装甲の壁。そして圧縮していく幾つかの力場装甲。

 しかしレイはそのどれよりも早く、抜刀すると共に機械型モンスターを下から上へと切り捨てた。だがそれだけで機械型モンスターが確実に行動を止めることは無い。稼働は止まらず、力場装甲の展開も止まらない。

 しかし機械型モンスターの敵はレイだけでない。

 次の瞬間、記憶合金が触手のように伸びて機械型モンスターを破壊した。


「……」


 中途半端に圧縮されていた力場装甲は破裂するように消え失せ、モンスターが機械片となって散らばる。同時に、イースはハヤサカとの距離を詰めた。


 その瞬間――。


「よーし第2ラウンドだよ」


 ハヤサカの掛け声と共にハヤサカの目の前に分厚く、それでいて大量の力場装甲が展開される。記憶合金によって何とか突破を試みるがイースはハヤサカの元まで辿りつくことはできず、力場装甲の圧縮によって吹き飛ばされる。


 同時に少し離れた場所でその様子を見ていたレイは久しぶりに気分の悪い汗を掻いた。

 ただそれも当然のことだった。

 研究所の壁から、床を割って、天井を突き破って、先ほど破壊した機械型モンスターと全く同じ個体が数十体と現れたためだ。一瞬見た限りその数は50を下らない。その奥に控えているのはもっと多いはずだ。


 直後、レイの周辺に力場装甲が展開される。周囲、全方位を囲むように、逃げ場がない。

 レイが塑性粒子による全力の防御を試みた。


 その時、レイの周辺にあった力場装甲が蒸発した。そして音もなく、気配すらなく、いつの間にかレイの目の前には一人の男が立っていた。

 男は自身の周りで展開される力場装甲を指先すら動かずに蒸発させていく。非現実的な光景、しかし目の前の人物はそれを可能にしている。ただレイはその現状に違和感を覚えなかった。

 当然、目の前にいたのはそれを可能とする人物。


「あんた……」

「少年……私も加わろう」


 《《スカーフェイス》》は僅かに振り向いてレイを見た。そしてその僅か後、無傷のイースが壁を突き破って舞い戻る。そしてスカーフェイスの姿を見た瞬間に口の端を僅かに釣り上げた。


「スカーフェイス。来てくれたんだ」

「前は断ってすまなかった」

「いいよ」


 スカーフェイスがここにいるという事実。そして装備に損傷が見られるという事実。

 スカーフェイスはダグラス・ボリバボットを殺し今ここにいる。どうやら戦いには勝ったようだ。


「準備はいいか、少年」

「ああ」


 スカーフェイスの問いかけに対して、レイは自信ありげに答えると横に並び立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ