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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第三章――西部事変

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332/366

第332話 三つ巴

 レイとアーネス・ウォッチャーが目を合わせた瞬間、発砲音が鳴り響く。戦闘課職員はすでに戦闘準備を終え、敵への攻撃を開始している。テイカーフロント製の最高品質の装備を持ってアーネスに一点集中で攻撃を続ける。

 しかし弾丸はすべてアーネスの元に届く前に一枚の不透明の障壁によって阻まれている。


(力場装こ……いや、簡易防御障壁か)


 実体を持つホログラムの技術を流用し、レイが寝ていたここ一年で開発された新たな防御機構。それが簡易防御障壁だ。力場装甲よりもエネルギーを消費せず、耐久力に優れ、対応力もある。

 しかし力場装甲の上位互換ではない。それは簡易防御障壁を展開するためには多くの設備が必要となるからだ。アーネスが身に着けている、見て分かる限りの装備では力場装甲を展開するには幾つか装置が足りない。

 というより装置は人よりも大きい。もし展開するようであればアーネスの横に馬鹿でかい装置が置かれていなければ辻褄が合わない。しかし目の前で実際に起きているのだから受け止めるしかない。

 原理も理由も今のところ不明だが『ハヤサカ技術研究所だから』という言葉で自らを納得させるしかないだろう。


 撃ち続ける戦闘課職員が力場装甲の存在に気がつき、撃つ手を止めずに新しい手を繰り出そうとしている頃、レイは握り締めた突撃銃をアーネスに向ける。その瞬間、アーネスがレイを見て目を見開いた。同時にそれまで私服のような恰好だったレイの上から薄っすらと強化服が可視化されていく。瞬きをするよりも早く、一瞬にしてレイは強化服を着こんだ。

 その後、引き金は絞られる。撃ち出された弾丸は力場装甲へと着弾した。他の弾丸と同じく防がれる、しかし完全にではない。まるでガトリングかのような連射速度で一発の威力が凄まじい弾丸を撃ちこまれ続けたことで、力場装甲に亀裂が走った。

 同時に突撃銃から煙が上がり、引き金が固くなる。

 レイの持っている突撃銃は弾倉の交換を必要としないものの短時間で一気に弾丸を撃ち出すことで一時的に引き金が引けなくなる時間がある。これはものの10秒程度しかなく、すぐにまた撃てるようになる。

 

 しかしアーネスの簡易防御障壁が崩れ去さる今、その数秒すらも惜しい。

 レイが突撃銃から手を離すと、突撃銃は蛇が体に纏わりつくように、右腕の義手に武器として一時的に格納される。そして瞬時にレイはアーネスとの距離を詰めた。その右腕には同じくアーティファクトである刀が握られている。

 突如としてアーネスの前に立ったレイだが、この行動は戦闘課職員とアーネスとの間に入ることを意味している。普通ならば仲間がいて撃てない、邪魔。そう思われてもしかたないし、実際にそうだ。

 しかし元一流のテイカーとして鍛え上げられた腕を持つ戦闘課職員は突如として現れたレイには一発の弾丸も当てず、隙間を縫ってアーネスだけを撃ち抜く。一生に一度できるかどうかという神業。それを素でこなし続けるのが一流のテイカーであり、この場にいる戦闘課職員だ。

 

 戦闘課職員からの攻撃によってひび割れていた簡易防御障壁は完全に破壊され、レイとアーネスとの間の障壁は消え去った。音もなく、気配すら感じさせず、レイは横一線に刀を振った。

 後ろに飛んだアーネスは完全に刀から逃れていたが、刃先が振動し、実際の刀身よりも射程距離の長いレイの刀はアーネスの胸を切り裂く。飛び散る機械部品。そして血。


 どうやら、今回は機械人形ではないらしい。アーネスはアーネスの本体として今レイの目の前に立っている。

 

 命にも届きうる。

 レイが一歩踏み込んで追撃を仕掛けようとした瞬間、踏み込んだ足が地中に呑まれた。

 というより、地面に亀裂が走っていた。


「あっちの武器……君扱えるんだね、それ。どうやら、もう君はこっちの住民ではないらしい」


 次の瞬間、亀裂が一瞬にして広がり地中から機械の腕が飛び出す。指の一本だけでレイの背丈はあるほどに巨大な機械の腕だ。アーネスは機械の腕の後ろ側へと匿われる。

 レイはすぐに刀を振って指を切り落としその裏にいるアーネスへと距離を詰め――ようとするが、後ろにアーネスの姿は無かった。アーネスはすでにレイの遥か頭上へと。

 

 地面を割って現れた人型ロボットの頭部のコックピットへと移動していた。


「く――」


 人型ロボットは半身を地上から出したまま、レイを腕で薙ぎ払う。しかしミケからの支援もあってその量が増し、さらに硬く、厚く、強靭になった塑性粒子によってせき止められる。

 体勢を戻し、レイが続きの攻撃へと移る。しかしそれよりも早く戦闘課職員が動いた。

 アーネスの乗ったコックピット部分を狙い撃ちながら、視界を確保するためのカメラが設置されているらしき場所を的確に狙い続ける。しかしそれらすべてはコックピット付近に張られた力場装甲によって防がれる。

 その間にアーネスはロボット操縦する準備を整えると戦闘課職員への反撃を開始する。しかしその行動は寸前で止められる。戦闘課職員は力場装甲に対してすでに解答を出していた。


「任せたぞ」

「ああ」

 

 戦闘課職員同士は一言会話を交わす。その次の瞬間に戦闘課職員の中から紐が伸びる。紐は力場装甲へと粘着した。その次の瞬間には一人の戦闘課職員が紐を投げた衝撃で同じように力場装甲の元まで飛ぶと、右手に持った粘着性の特殊爆弾を力場装甲に貼り付けた。

 アーネスが次の一手を繰り出すよりも早く、特殊爆弾は起爆する。

 電磁パルス機構は当然のこと力場装甲や電磁装甲、簡易防御障壁にまでも効力を発揮する対仮想防御機構を想定され開発された爆弾だ。馬鹿でかい人型機械に搭載された簡易防御障壁ということもあり、装置は十分に詰め込めているだろう。 

 先ほどアーネスが展開していた管理防御障壁よりも高い効力を発揮している。しかし特殊爆弾の起爆と同時に簡易防御障壁にはノイズが走る。加えて戦闘課職員からの攻撃。もうすでに通常弾ではなく電磁パルス弾へと弾倉を入れ替え、効力を最大限に発揮する構成だ。

 アーネスの登場も、簡易防御障壁の展開も、戦闘課職員はすべて予想できていなかった。しかし今、最善手を繰り出せている。これは一重に遺跡で予想外の連続を乗り越えて来たテイカーとしての経験が活きている。

 すでに現役を引退した身、しかしその体はテイカーとして闘った時を覚えていた。


 一瞬にして簡易防御障壁は破壊される。

 同時に、アーネスの乗るコックピットの目前に黒い影が現れる。

 

 体勢を整えたレイが、すでに弾倉の回復を終えた突撃銃を持ってコックピットに狙いを定めていた。

 アーネスは対策を講じようとするが引き金を絞る方が遥かに早い。撃ち出された弾丸は力場装甲を破壊し、電磁装甲を貫き、なけなしの強化装甲すらも破壊して中にいたアーネスの元まで届き得た。

 突撃銃によってすべてが破壊され、コックピット内のアーネスの姿が見える――という時、コックピット内部から勢いよく火炎が吹き出し、レイすらも巻き込んで爆発する。

 爆風によってレイは吹き飛ばされ人型機械は大きくのけ反る。後ろに体重が傾いたせいでまだ地中に埋まっていた両足が無理矢理地面を隆起させながら、つま先が地上へと突き出した。

 

 レイが吹き飛ばされ背後へと跳ばされる中、後ろでは戦闘課職員が各々で武器を持ちアーネスに対して追撃を仕掛けていた。今の爆発でアーネスが死んだとは考えにくい。

 レイを遠ざけるための攻撃、防御だ。故に今ここで追撃を仕掛け、体勢を立て直す隙を与えない。

 

 戦闘課職員がそうして機械人形を爆撃しようとしたところ、荒野の、遥か遠方から飛翔してきた一発の弾丸が戦闘課職員一人の頭部を貫いた。力場装甲は展開していなかったとはいえ最高出力で電磁装甲を展開し、強固な強化装甲によって守られていた頭部が一発。

 しかし目の前のアーネスに集中していたから仕方ないことだとも言えた。

 

 今起こった事態は仲間が一人殺された、という単純な話ではない。遠方から、それも荒野の方から何者かから撃たれたのだ。モンスターか、いや違うだろう。レイだけでなく戦闘課職員すらも薄っすらとその答えに辿り着いていた時、アーネスが人型機械に取り付けられた拡声器を起動し、その声を荒野に響き渡された。


「ここで財閥の登場か! いいじゃないか!戦おう、今ここで誰が勝者となるか決めようじゃないか!」

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