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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第三章――西部事変

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第311話 過去の関係

「すまなかった」


 ハカマダがレイに頭を下げる。目の前に座るレイは一本しか残っていない左腕を医療用器具で固めていた。明日には治る負傷だ。

 対面に座るレイはハカマダに頭を上げるように言う。


「いや、あんたは悪くないだろ」

「いや、イース(あいつ)が迷惑をかけたからな」

「別に他人だろ。責任を取る必要があるのか?」


 ハカマダに突然抱き着いたイースの行動を見るに、それなりに深い関係性なのだろうが、彼女が起こした行動の責任をハカマダが取るのはおかしな話だ。


「まあ確かに他人だが、昔は仲間みたいな感じだったんだよ。だからあいつを止められなかった俺にも非はあるってことだ」

「……そういうことにしておくよ。それで、イース(あいつ)は」

「今は宿にいる。多分寝てるだろ」

「分かった」


 レイが一度息を吐く。そして体から力を抜いてハカマダに問いかける。


「聞いてもいいか」

「ああ」

「ハヤサカ技術研究所についてだ」


 恐らく、イースから事情については聞いていたのだろう。なぜレイを襲ったのか、アーネスと一緒にいたこと。そしてイースがハヤサカ技術研究所に関して喋っていたこと。

 その問いの背景にあるものをすべて読み取って、ハカマダは答える。


「それを答えるためにはまずあいつのことを説明しないといけないな」


 ハカマダは一息置いて答える。


「あいつの名前はイース・マーダ。テイカーだ」


 イース・マーダ。その名を聞いた時レイが固まる。


「ほんとか……? イース・マーダって、あの?」

「あの、イース・マーダだ」


 西部で最強の三人として挙げられる三人のテイカー。ダグラス・ボリバボット。スカーフェイス。そしてイース・マーダ。


「お前だって戦ってみて分かるだろ」

「あ、ああ」


 バルバトスとの戦いで『それ』と共に腕を失い、最初の攻撃で片腕すらも破壊された。弱体化はしていたが善戦すらできなかった。ハカマダに助けられていなかったら今頃死んでいただろう。


「じゃあ待て、なんでお前はイース・マーダと関りがあるんだ」


 あのイース・マーダとハカマダとに関わりがある。その経緯を知りたいと思うのは不思議なことではないだろう。何しろ、ハカマダが弾丸を撃ちこんだことなど忘れて抱き着くぐらいだ。明らかにおかしい。

 レイの質問に対してハカマダは頭を掻きながら答えた。


「……まあいいか、ハヤサカ技術研究所に関係することだしな。確かお前にはヤマタ巷間都市とハヤサカ技術研究所に関してのつながりは話したよな」

「ああ」


 ヤザワ学術院。ヤマタ巷間都市で財閥の一つであるウニエ工業指導のもと研究を行っていた機関だ。ハヤサカ技術研究所の所長であるハヤサカはヤザワ学術院の元副所長。

 5年前にヤザワ学術院がヤマタ巷間都市って都市の一部を消滅させる事故を起こし、すべての研究は無きものになる。そしてその事故から生き残ったハヤサカが新たにヤザワ学術院の後継となるハヤサカ技術研究所を設立し、ヤマタ巷間都市の時に行っていた研究を続けている――と言われている。

 

 確証は無い、とハカマダは言っていた。その訳について今問いただすと話がずれてしまうため聞かないが、どうやらハカマダは過去にハヤサカ技術研究所、またはヤマタ巷間都市に関わりがあるようだった。

 

「前に言った気がするが、俺はヤマタ巷間都市に仕事で行ってたことがある。事件もその時に起きた」

「……そこでイース・マーダと知り合ったと?」

「察しが早くて助かる。イース・マーダとはヤマタ巷間都市にいる時に知り合った。ヤマタ巷間都市が潰れた後は離れちまったが、それからも何回かたまに会ってな」


 ハカマダが背筋を伸ばし、背後にある部屋の扉を一度見る。そしてレイの方を向いた。


「まあ、イース(あいつ)の過去については自分で聞いてくれ。俺との出会いとかを詳しく言うと必然的に教えることになっちまうからな。最後に一つ聞いておくが、アーネスとは何を話したんだ」


 イースからレイがアーネスと話していたことをハカマダは聞いていた。

 レイはハカマダの立場。ハヤサカ技術研究所についてある程度知っていることを前提に答えた。


「来世よりって知ってるか」

「……ああ」


 レイの一言でハカマダが納得する。


「じゃあこのぐらいは説明しておいた方がいいか」


 ハカマダが首をひねる。


「お前がいつも探索してる遺跡は旧時代の遺産だとか言われているが、厳密には違う。あれは《《旧世界の遺産》》だ」

「旧世界?」

「考えてみろ。あれほどの技術を持った文明がなんで滅んだ。滅び方はなんだ」

「あ、ああ」

「なぜ滅び、なぜあんな風に遺跡として点在しているのか。もし昔の奴らが戦争でもしたんならば真っ先に滅びるのは人の多い都市だ。なのになぜ道路などが無く、遺跡という都市の名残だけが残っている」

「……」

「それに些か疑問だろ。普通に考えるなら俺らはお前らが旧時代と呼ぶ時代に生きていた人間の末裔だ。なぜ情報を記録し、保存する人間が旧時代を滅ぼした原因を書かない。なぜ遺跡はああも隔絶した技術体系を持っている。もし時代が陸続きというのならば、旧時代というやつはあまりにも隔絶された発展をしている。非現実的なほどにな」

「いや、記録は残ってただろ。確か……」


 旧時代のことが示された、伝承のような話はある。

 確か、『ある時、都市は破壊され生物兵器が暴れ出し、人間は殺された』とかの冒頭から始まる話だった気がする。住んでいた都市が突然に破壊され、周辺は荒野となり、人間は逃げ、そして生き残った人たちが今の都市を築いたという話だ。


 レイがそのことについて説明すると、ハカマダは一つ頷いた。


「確かに、それは正しい情報だ。しかし思い違いをしている。果たして、その話はお前らの考える旧時代の奴らが残した話なのか?」


 やけに遠回しに説明する。

 レイは面倒になって直接聞いた。


「じゃあなんだ。『来世より』もの世界と俺らの世界は何が違う。旧時代に何が起きた。いや、旧世界だったな。なんであんな隔絶された技術体系を持っているのか、遺跡として荒野に点在しているのか、お前は知ってるのか」

「知ってるとも。だが時間切れだ。イースは嫌がるだろうが、次にハヤサカ技術研究所関係者に会った時にでも聞いたらいい、答えてくれるぞ」


 ハカマダの後ろの扉が勢いよく開かれる。出てきたのはイース・マーダだった。


「おきた……ハカマダ」


 イースはそう言いながらハカマダの背に抱きかかる。そしてイースはそのまま対面にいるレイを見つめた。


「ごめん、ね。さっき……は」


 腕を折られ、足の骨にはひびが入り。臓器は幾つかやられた。果たしてごめんで済む損害だろうか。しかしイースという人物に対して何を言ったところで欲しい返事は得られそうにないので諦める。


「ああ。構わない。だが次から相手の言い分も聞かないで攻撃するのはやめてくれ」

「それは……ごめん、なさい」


 ハカマダの肩に顎を置いて項垂れるイース。そしてイースはもぞもぞと動きながら、もう一度レイを見た。


「ふとぎもん。きみは『外套の男』を知っている?」

「外套の男……」


 レイの中にはうっすらと何を言いたいのか浮かんでいた。


「ほ、ら……バルバトスを倒した……」


 やはり自分のことだ。レイは面倒ごとになる気がしたので嘘を吐く。


「その噂自体は知ってる」

「じゃあ誰か」

「それは知らないな」

「嘘……ついてる。知ってるんじゃ、ない?」


 イースはじっと、レイの目を覗き込んだ。



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