表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第二章――第二次典痘災害『下』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/366

第300話 最大火力

 衝撃波の反動によってレイは空へと吹き飛ばされる。それを追ってバルバトスが体を伸ばした。まるで洪水が襲い掛かるようにヘドロがレイを追いかける。しかしヘドロが追いかける先には電磁機構砲台を構えるレイの姿があった。

 直後、バルバトスの体に電撃が走る。そして雷に打たれたかのように消し飛んだ。しかし電磁機構砲台によって消滅させたのはレイを追いかけていた体の一部に過ぎず、それだけで殺せたわけでは到底ない。

 バルバトスは遺跡中から細い触手を何本も伸ばし、レイを追う。それに対処するため、レイは電磁機構砲台を何十発と連続で撃ちこんでいく。地面には穴が空き、建物は倒壊し、バルバトスの体は消し飛ぶ。

 しかしバルバトスは生きている。肉片の一つでも生きていれば再生は可能。

 

 レイは伸びて来る触手をすべて処理し終えると、バルバトスによって溶かされ傾いたビルの窓を突き破ってその中に入る。衝撃波によって打ち上げられた勢いのまま窓や壁を一緒に破壊して入ったレイは、中の物を破壊しながら転がってようやく止まる。

 場所はビルの二十階程度だろう。今のバルバトスであれば数十秒ほどで到達可能な高さ。レイは電磁機構砲台の連続射撃によって内部から破裂した右腕を見る。すでに機械で作り上げた外装ははじけ飛び、中の骨や肉が見えている。

 だがその事実自体どうってことはない。

 レイはビルの中にある機械部品を引き寄せて右腕に装着していく。ケーブル類でそれらを巻き付けて再度固定し、再度『それ』が使用可能出来る段階まで回復させる。と同時に、ビルの下層から激しく物音を響かせながらバルバトスが接近する。同時に、ビルの外壁をヘドロが包み込み、レイの逃げ場を失くしていく。

 レイの回復が済むと同時に、バルバトスはレイのいる階層の床にヒビを入れて、突き破って現れた。しかし、バルバトスがレイのいる階層にまで侵入する前に、電磁機構砲台を真下に向けて撃ちこんでいた。

 直後崩れるビル。レイのいる階層から地下まで穴が空き、全体が軋む。同時にビル全体を包み込んでいたヘドロが窓を割って階層の中に流れ込む。レイは全方位に向けて電磁機構砲台をレーザー砲のように撃ちこみ、ビル諸共すべてを消滅させる。その代償としてレイのいる階は上の階を支える柱をすべて失った。

 レイが今から逃げることも間に合わずビルは上から崩れ行く。その中で上層の床にひびが入り上の階の様子が確認できた時、レイの目には蠢く黒と緑が混ざったような液体が見えた。

 すでにバルバトスは学習している。レイが全方位を囲まれた時、右腕に装備したその武器で丸ごと焼き尽くすと。だから息をひそめ、攻撃の余波で上層が崩れるのを待って攻撃のタイミングを伺っていた。

 そして上層が崩れ、床にヒビが入るのと同時に階層の床を浸していたヘドロがレイのいる階層へと流れ込む。崩れ去る瓦礫の隙間からバルバトスはレイの元へと飛び掛かり、しかしレイは電磁機構砲台を真上に向けて撃ちこむことで回避する。

 ただ、あくまでも真上の敵を消滅させただけ、上層階の床一面にバルバトスはいた。崩れ去る瓦礫に混じってバルバトスは斜めに流れるようにして下り、レイに近づく。

 同時に、連鎖的にビルは上から崩れ、その衝撃に耐えられなくった下層も同時に崩壊していく。それは一瞬でビル全体の崩壊へと繋がる。その崩壊の中、身動きの取れなくなったレイを囲うように、ビル全体にヘドロがまとわりつき、隙間から侵入する。

 蠢くヘドロが順調にレイを取り囲む一方、レイは状況の対応に苦戦していた。

 瓦礫の隙間から突如として現れるヘドロ。地面は崩れ、落下している。上か下かも、自分が今どの方向を向いているかすらも曖昧な空間の中で、レイは感覚のみでヘドロが来るであろう場所を予測し、電磁機構砲台で消し飛ばす。

 

 だがそれでもヘドロが一斉に来れば対処の仕様が無い。側面からだけでなく上や下からも来れば電磁機構砲台といえど間に合わない。事実、ビル全体を覆っていたヘドロが瓦礫の隙間を通ってレイの元まで到達した時、視界はすべてバルバトスによって塞がれた。

 一斉に距離を詰めるバルバトスに対し、レイは電磁機構砲台を連続で撃ちこむことで対処を試みるが、間に合わない。衝撃で弾けとんだ個体や隙間を抜けて来た破片がレイの体に付着する。

 このまま行けば肉を削ることでしかこのヘドロから逃げる手段は無い。ただ、あくまでもそれは今までの装備であったのならば、という前提での話だ。今は塑性粒子によって作った外套で防御している。

 ヘドロは外套に接触すれど溶かすことはできず、また張り付くことすらもできずに振り落とされていく。同時に、その僅かな時間の中でレイは電磁機構砲台の力を十分に活用し、周りに存在していたバルバトスを消失させる。

 そして同時に地面へと着地し、瓦礫の上にレイが上って周りを見渡す。電磁機構砲台によって周りは荒地になっていた。瓦礫が積み重なり、場所によっては深い穴が空いている。

 しかしこれだけの光景を作り出して尚、バルバトスは生きている。瓦礫の隙間から湧き出てゆっくりとレイに近づく。全方位から染み出すようにしてその数を増やしながら現れ、近づく。

 一方でレイは瓦礫の中から機械部品を選び、右腕に巻き付けることでもう一度電磁機構砲台が使えるように補強していた。その時、レイが足場としていた足場の隙間からヘドロが現れレイに付着する。

 しかし塑性粒子によって作られた外套により―――。


「…………」


 レイは静かにその異常を確認していた。

 ヘドロは塑性粒子の外套に張り付きこそできないものの確かに溶かしていた。塑性粒子の強度が下がったわけではない。これは物体を溶かし自らの栄養とするバルバトスの能力が進化したことで起きた異常だ。

 このままではレイを殺せない、食べれないと判断したのだろう。まずバルバトスに知能があるのかは分からず、真偽も不明だが、レイを簡単に殺せる次元にまでまた進化したというわけだ。

 だが今の段階はまだ溶かすのみで外套に張り付くことはできない。よって永続的に溶かすことはできず、飛びついては溶かし、また飛びついては溶かしを繰り返している状態である。

 レイは試しに電磁機構砲台から狙撃銃へと姿を変え、自らの足元にいるバルバトスの破片に向けて撃ちこんでみる。爆破が足元で置き、煙が上がる。確かに弾丸は撃ち出され衝撃を与えられた。しかし煙が収まって見えたのは傷一つないバルバトスの破片だ。

 すり減ってもいない。先ほどと同じ質量のままそこにいた。

 もう狙撃銃には対応した。いずれ電磁機構砲台にも対応されるだろう。驚異的なことこの上ない。じりじりとバルバトスの質量を減らしていく作戦は、その異常な成長速度とこの進化によって阻まれる。しかし一撃で仕留めようとすればその質量を前に屈する。

 絶望的な状況だ。

 

 しかし一つ、この遺跡に残る生命体はレイが最後だろう。つまりレイを殺しにバルバトスは体のすべてを動かすはずだ。ここに勝機を見出すにはあまりにも小さいが、現状、レイがバルバトスを殺しきれるとしたらこの状況しかない。

 他の生物も、テイカーもおらず、前哨基地にはすでにミケたちはいない。周りの被害など考える必要は無く、今持てるレイの最大火力でバルバトスを仕留めきる。その最終段階としてレイには目指すべき場所がある。

 

 ドーム状の建物に向けて電磁機構砲台を撃ちこんだ際に使った電波塔。今はバルバトスに根本を侵食され、傾いている。しかしまだ使える。レイは今からあの電波塔の頂点まで移動し、バルバトスに最大火力をぶち込む。

 すでに周りでは瓦礫の中からヘドロが染み出してレイにゆっくりと迫ってきている。

 そしてあの電波塔まで行く際にバルバトスは障害として立ちはだかるだろう。しかし今のレイにはここで生き残り、次にやりたい目標がある。当然、ここで死にはしない。

 

「…………ラウンド4、ここで終わらせる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ