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第5話「勉強会と新しい発見」


待ちに待った勉強会


勉強会ってなんか学生っぼいよね!


休日の午後、王立魔法学校の図書館には静寂が漂っていた。約束通り、キオ、オーウェン、ルイ、セドリック、そしてカリナの5人が集まって初めての勉強会を始めることになった。


「みんな、お疲れ様です」


キオが図書館の入り口で待っていると、オーウェンが最初にやってきた。


「やあ、キオ。楽しみにしていたよ」


続いて、ルイがカリナとセドリックと一緒に現れた。ルイは例の『魔法調理学基礎』の本を大切そうに抱えている。


「すみません、お待たせしました」


「全然大丈夫。さあ、奥の方の席に座ろう」


キオは5人が座れる大きなテーブルを見つけて案内した。図書館の奥の方で、周囲にはあまり人がいない。勉強に集中できそうな環境だった。


「それじゃあ、まずはルイの本から始めようか」


オーウェンが提案すると、ルイは少し緊張した様子で本を開いた。


「えっと……この『魔力を用いた食材保存法』というところが、どうしてもよくわからなくて」


キオは本を覗き込んだ。確かに魔法理論の専門的な内容で、基礎とは言いながらも一年生には難しい内容だった。


「なるほど。これは魔力を循環させる仕組みを理解していないと難しいね」


「魔力の循環って?」


セドリックが首をかしげる。


「簡単に説明すると」


キオは手のひらに小さな光の玉を作りながら説明を始めた。


「魔力というのは、ただ込めるだけじゃなくて、対象物の中でぐるぐる回らせることで長く効果を持続させられる。食材保存の場合は……」


キオは丁寧に説明を続けた。前世で学んだ魔法の知識を、現代の感覚で分かりやすく言い換えながら話す。


「あ、なるほど!つまり、食材の中で魔力がぐるぐる回り続けることで、腐敗を防ぐということですか?」


ルイが目を輝かせて理解した様子を見せる。


「その通り。でも、闇雲に魔力を込めるだけじゃダメで、食材の性質に合わせて循環の方向や強さを調整する必要があるかな」


「でも、そこが一番難しいところなんです。どうやって食材の性質を見分ければ…」


ルイが困ったような表情を見せると、オーウェンが口を挟んだ。


「ルイ、それなら僕が少し助言できるかもしれない」


オーウェンは穏やかな表情で話し始めた。


「有難いことに王族として、様々な食材を味わう機会が多いんだが、王家の料理人たちから食材について教わることがよくある。食材にはそれぞれ『気』のようなものがあって、魔力を感じる感覚で、その食材の持つエネルギーを読み取ることができるんだ」


「気、ですか?」


「そう。例えば…」


オーウェンは自分の鞄から小さな果物を取り出した。赤とオレンジの鮮やかな色合いで、バナナのような細長い形をしている。


「これはフォルゴという果物だ。この果物に軽く手をかざしてみて。目を閉じて、魔力を感じるように集中するんだ」


ルイは恐る恐る手をかざす。しばらくして目を開けた。


「何か…温かい?ような、柔らかいような感覚が…」


「それだ。その感覚が食材の性質を表している。フォルゴは甘さとスパイシーさを併せ持つ特殊な果物で、火と水の両方の属性を感じ取れるはずだ。この複雑な属性が魔力の循環方向を決める際の良い練習になる」


キオは感心して頷いた。


「さすがオーウェン、とても勉強になるよ」


そんなキオの様子にオーウェンは得意そうに笑っていた


「ところで、フォルゴって珍しい果物ですね」


ルイが興味深そうに見つめる。


「ああ、これは王家でも時々使われる果物だ。そのまま食べるというよりは、茶葉と一緒に使用することが多いな」


オーウェンが説明すると、カリナが驚いたように声を上げた。


「あ!フォルゴじゃない!私の島の特産品よ!」


「え?」


みんながカリナを見つめる。


「そうなの!私の故郷では普通に食べられる果物よ。お茶に入れるのが一般的だけど、お祭りの時は砂糖漬けにして食べたりもするの」


オーウェンは興味深そうに頷いた。


「そうだったのか。この国では珍しい輸入品として扱われているが、カリナの島では身近な果物なんだな」


その時、カリナがはいはーい!と手を挙げた。


「私もちょっと聞きたいことがあるの!私の国の魔法と、この国の魔法って、なんか違うのよね」


「どんな風に違うの?」


キオが興味深そうに尋ねる。


「えーっと、例えば火を起こす時。私の国では、火の精霊にお願いする感じなんだけど、この国では自分の魔力で直接火を作るでしょ?」


確かにこの国では基本的に自分の魔力から魔法(風や火など)を使うことが多い

もちろん精霊という存在もいるが

あまり人の身近にはいない存在である


「それは面白い違いだね。精霊にお願いする魔法か。仕組み的には、そちらの方が効率的な場合もあるかもしれないな」


精霊の力を借りれるのであるならは

自分だけでは出来ないことも精霊となら出来るかもしれない


オーウェンも興味深そうに身を乗り出した。


「カリナ、その精霊とのお願いの仕方を詳しく教えてくれないか?王族として様々な国の魔法について学ぶのは大切だろ。実際に使える人から聞くのが一番だ」


「本当?じゃあ教えちゃう!まずね、火の精霊さんに『お疲れ様です』って挨拶するの」


「挨拶?」


セドリックが驚く。


「そう!精霊さんも働いてくれてるんだから、礼儀正しくしなきゃ。それで、『少しお力をお借りできませんか?』ってお願いするの」


オーウェンは真剣にメモを取っていた。


「なるほど。礼儀正しく接することで、精霊とよりより関係を作るということか…それは確かに精霊も喜んで力を貸してくれそうだ」


「でしょ?それに、精霊さんたちってそれぞれ個性があるのよ。火の精霊のメラメラちゃんは元気いっぱいだし、風の精霊のフワフワくんはちょっと気まぐれなの」


カリナの無邪気な説明に、みんなが微笑んだ。


「カリナと精霊が作る魔法は、とても心温まるものだね」


キオが言うと、オーウェンも頷いた。


「ああ。やはり、相手との信頼関係が一番大切だと思う。カリナの精霊魔法は、それを体現している」


ひとしきり盛り上がった後

セドリックが遠慮がちに口を開いた。


「僕は魔力量があまり多くないから、効率的な魔法の使い方を覚えたいんです」


キオが答えようとした時、オーウェンが先に話し始めた。


「セドリック、その気持ちわかるぞ!僕も実は体が弱くて、長時間の魔法使用は苦手なんだ。だから効率的な魔法については、結構研究してきた」


「え!?オーウェン様も?」


セドリックは目を丸くして驚く


「ははは、僕も人の子だよ?」


オーウェンは親しみやすく笑って続けた。


「王族だからって、すべてが恵まれているわけじゃない。僕の場合、魔力量は十分あるが、その魔力による負荷を耐える為の体力がない。だから効率よく魔力を短時間で最大効果を出す方法を身につけなければならなかった」


オーウェンは実際に魔法を使って見せた。光の玉を作ったが、その光は非常に安定している。魔力をコントロールすることで負荷を減らすように工夫している。


「コツは、魔法を『かける』のではなく『育てる』ことだ。最初に小さな魔法をかけて、それを少しずつ育てていく。急激に魔力を使わないから、体への負担も少ない」


セドリックは目を輝かせながら聞いている。


「それは…僕にも真似できそうです」


「もちろんだ。一緒に練習しよう」


キオも感心して言った。


「オーウェンのやり方は、とても理にかなっているね。すごいや」


「キオの本で読んだ知識と僕の実際にやってみた工夫を組み合わせれば、より良い方法が見つかりそうだな」


その時、ルイが少し遠慮がちに質問した。


「あの…私も魔力量は多くなくて…私にも出来ることはあるんでしょうか」


オーウェンは優しい表情で答えた。


「ルイの場合、料理という明確な目標があるのが強みだと思う。僕たちは汎用的な魔法を学んでいるが、君は特定分野に特化できる」


「特化…ですか?」


「そうだ。料理に必要な魔法だけを徹底的に練習すれば、その分野では誰にも負けない技術を身につけられる。魔力が少なくても、専門性で補えるんだ」


キオも賛同した。


「それは素晴らしいアイデアだね。僕も魔法の仕組みの面でサポートできるし、オーウェンは実際にやってみた工夫を教えてくれる。カリナは精霊魔法の応用も教えてくれるかもしれない」


カリナが手をパンと叩いた。


「そうそう!料理にも精霊さんの力を借りられるのよ。火の精霊さんは火加減の調整がとっても上手だし、水の精霊さんは食材を洗うのを手伝ってくれるの」


ルイは感激した表情を見せた。


「皆さん、ありがとうございます。一人では思いつかないことばかりです」


オーウェンは王族らしい威厳を保ちながらも、温かい口調で言った。


「それが友達というものだろう。お互いに助け合い、それぞれの強みを活かし合う」


勉強会が進むにつれて、キオはこの時間がとても充実していることに気づいた。自分だけが教える立場ではなく、みんながそれぞれの知識や経験を持ち寄っている。


セドリックも、自分なりの工夫を披露した。


「僕、魔力が少ないから、日常的に魔力を鍛える方法を考えたんです。毎朝、小さな光の玉を作って、朝食を食べている間ずっと維持する練習をしています。」


「それは良い方法だね」


オーウェンが感心する。


「継続的な練習が一番効果的だ。僕も見習いたい」


「僕も真似してみよう」


キオも同意した。


勉強会の終盤、オーウェンが提案した。


「これからも定期的に勉強会をしないか?僕も勉強になったし、何より楽しかった」


「私も賛成!みんなで教え合うのって楽しいわ」


カリナが手を挙げる。


「僕も、一人で勉強するより理解が深まります」


セドリックも同意した。


「私も……皆さんから教えていただけて、とても勉強になりました」


ルイが控えめに答える。


「それじゃあ、来週の同じ時間にまたここで集まろう」


キオが提案すると、みんなが嬉しそうに頷いた。


図書館を出る時、オーウェンがキオに話しかけた。


「キオ、今日は本当に良い時間だった。君の本で勉強した知識も素晴らしかったが、みんながそれぞれの経験を共有できたのが一番良かった」


「僕もそう思う。オーウェンの実際にやってみたアドバイスがあったからこそ、本の知識だけじゃない深い学びになった」


「いつか城に来て、僕の部屋で勉強会をしないか?王族の書庫には、各国の魔法に関する珍しい本がたくさんあるんだ。カリナの精霊魔法についても、もっと詳しい資料があるはずだ」


「それは面白そうだね。でも、いいの?」


「もちろんだ。友達なんだから」


その夜、キオは寮の部屋で今日のことを振り返っていた。


『キオ』


心の中でシュバルツの声が響く。


『今日の勉強会はすごく充実していた』


『そうだな。お前が楽しそうにしているのを見ていると、俺も嬉しい』


『オーウェンの実際にやってみたアドバイスは目から鱗だったし、カリナの精霊魔法も興味深かった。セドリックの地道な努力も刺激になった』


子供のようにはしゃぐキオにシュバルツも声を響かせて笑う


キオは窓の外の星空を見上げた。


『前前世の時も友達と勉強したけど、あの時は気づかなかったな。こんなふうに、みんながそれぞれ違う知識や経験を持っていることの素晴らしさ』


『お前が成長している証拠だ。俺もお前の成長を見ているのは楽しい』


ベッドに横になりながら、キオは次の勉強会が楽しみになっていた。


特に、今日を通じて仲間たちとの関係がより対等になった気がする。自分だけが知識を披露するのではなく、みんなで教え合い、学び合う。すごく青春って感じだ


『明日からの学校生活も楽しみだな』


そんなことを考えながら、キオは眠りについた。

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