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第25話「精霊との交流」

中庭での遭遇、そして寮の部屋で友人たちに支えられ

涙を流した夜が明けた。

冬の冷たい朝日が窓から差し込み、部屋の空気を白く照らし出す。

キオはベッドから起き上がると、窓を開けて深く息を吸い込んだ。


ひんやりとした空気が肺を満たし、少しだけ頭が冴える。


『昨日は、みんなに心配をかけちゃったな……』


部屋の隅の椅子に腰掛けたシュバルツが、静かに息をしていた。腕を組み、その思慮深い紫の瞳でキオを見守っている。


「おはよう、キオ」


その低い声は、朝の静寂に優しく響いた。


「おはよう、シュバルツ」


「昨夜はよく眠れたか?」


「うん……みんながいてくれて、安心できたからかな」


キオの口元に、小さな笑みが浮かぶ。


『友達がいる。シュバルツもいる。』


心の中で繰り返した言葉が、冷えた身体にじんわりと熱を灯していくようだった。


キオは顔を洗い、手早く制服に着替える。

身支度が終わるのを待っていたかのように、コンコン、と控えめなノックの音がした。


「キオ、入っても大丈夫か?」


オーウェンの声だ。


「うん、入って」


扉が開くと、オーウェンとセドリックが少し強張った表情で立っていた。


「おはよう、キオ。昨日は……その、体調はもう平気か?」


オーウェンが言葉を選びながら尋ねる。


「うん、心配かけてごめん。もう大丈夫だよ」


キオが努めて笑顔を作ると、二人は心の底からほっとしたように表情を緩めた。


「よかった……。それでね、今日は儀式の続きがあるんだ」


と、セドリックが本題を切り出した。


「続き?」


「昨日で全員の召喚は終わったから、今日は精霊との初期訓練があるらしい」


「もちろん、みんなで一緒に行こう。俺たちがお前を一人にはさせないからな」


オーウェンが力強く言う。その真っ直ぐな言葉に、キオの胸が温かくなった。


「ありがとう、二人とも。うん、しっかりしなきゃね」


キオはもう一度、今度は心からの笑顔で頷いた。



朝の光が差し込む賑やかな食堂へ向かうと、ルイとカリナがすでに来ていて、こちらに気づくとぱっと顔を輝かせた。


「キオ君!」


ルイが駆け寄ってくる。


「昨日の夜はよく眠れた?」


「うん、大丈夫。みんなのおかげ」


「よかったー!」


カリナが自分のことのように嬉しそうに手を叩く。


「今日は精霊さんたちとの訓練だって!楽しみだね!」


「今日も僕たちが一緒にいるからな」


オーウェンもキオの肩にそっと手を置いた。

その励ましが心強い。


五人でテーブルに着くと、まるでそれが当たり前のように、それぞれの精霊たちが姿を現した。


オーウェンの隣には、黄金の毛並みを朝日できらめかせ、誇り高いグリフォンが悠然と座っている。


その神々しい姿に、周囲の生徒たちが畏敬の眼差しを向けていた。


ルイの周りでは、小さな赤い炎の精霊と青い水の精霊がじゃれ合うように、くるくると舞っている。時々ぶつかりそうになりながらも、楽しげな様子は見ていて微笑ましい。


セドリックの膝の上では、ふわふわの尻尾を持つ小さなフェネックが丸くなり、気持ちよさそうに寝息を立てていた。


カリナの周りはひときわ賑やかだ。

故郷から連れてきた精霊たち――メラメラちゃん、フワフワくん、アクアくん――が

カリナの朝食を狙っているのか、元気に飛び回っている。


そして、キオの隣には、シュバルツが静かに座っていた。

その精悍な姿に周囲の生徒たちがひそひそと噂を交わすが、シュバルツは一切意に介さず、ただ静かにキオの側に控えている。


「みんな、素敵な精霊さんと契約できたんだね」


ルイが自分の精霊たちを見つめながら、優しく微笑んだ。


「うん。これから、もっと仲良くなれるといいな」


キオも頷き返し、隣にいる頼もしいパートナーを見上げた。



朝食後、キオたちのクラスは広大なドーム型の天井を持つ第3実技場へと向かった。

一年生全員を一度に訓練するのは難しいため

クラスごとに分かれて訓練が行われるのだ。


実技場に入ると、壇上に立つカスパー先生の姿が目に入った。

その周りには、シュバルツ一族の分家筋なのであろう、紫水晶のような髪色を持つ者たちが、補助指導者として数名控えている。


壇上の光景を認めた瞬間、キオの喉がひゅっと鳴り、体が強張った。


その変化に、友人たちは即座に気づいた。

みんなが自然にキオに寄り添って、そばに入れくれる


ふと、背中に確かな温もりを感じる。


シュバルツが何気ない素振りで、キオの背中にそっと手を置いていた。その大きな手のひらの温もりが服越しに伝わり、不思議と呼吸が楽になる。


『大丈夫だ。俺達がいる』


シュバルツの落ち着いた声が、心に直接響いた。


『……うん』


キオは小さく頷き、ゆっくりと深呼吸をした。

壇上のカスパー先生は、一度だけキオの方に鋭い視線を向けたが、すぐにそれを全体へと戻す。

専門家としての冷静さを保ったまま、説明を始めた。


キオは恐る恐る周囲を見回す。

壇上にいるのはカスパー先生と補助指導者たちだけ。

ベゼッセンの姿はない。


『よかった……あの人は、いないみたいだ』


強張っていた肩からふっと力が抜け、キオは小さく安堵の息を漏らした。


「諸君、おはよう。昨日は素晴らしい契約の儀式だった」


カスパー先生の声は厳格だが、確かな指導者としての威厳に満ちている。


「本日は、クラスごとに分かれて精霊との初期訓練を行う。契約は結べたが、君たちと精霊との絆はまだ生まれたばかりだ。これから互いを深く理解し、揺るぎない信頼関係を築いていかねばならない」


補助指導者の一人が、穏やかな口調で続ける。


「我々補助指導者も手伝うので、分からないことがあれば遠慮なく質問してくれたまえ」


壇上の補助指導者たちが、軽く頭を下げる。


「今日の訓練では、まず精霊との基本的なコミュニケーション方法を学んでもらう。何よりもまず、己のパートナーを知ることからだ」


カスパー先生がそう指示を出した。



「それでは、各自、精霊と向き合って」


先生の指示で、生徒たちはそれぞれのパートナーと向き合い始める。キオもシュバルツと視線を合わせた。

深い紫の瞳が、どこまでも優しくキオを見つめ返している。


「改めて……よろしくね、スバル」


キオが少し照れながら小声で言う。


「ああ、よろしく頼む」


シュバルツの口元が、わずかに綻んだ。


「お前の好きなものは何だ?」


「え?」


「『精霊を知る』訓練だろう。ならば、俺もお前のことをもっと知りたい」


シュバルツの真っ直ぐな言葉に、キオは少し考え込んだ。


「うーん……温かい食べ物、かな。それと、友達と過ごす時間」


「そうか。俺は……お前の笑顔が好きだ」


思いがけない言葉に、キオの耳がじんと熱くなる。

驚いてシュバルツを見るとニヤリした笑みを浮かべている

シュバルツはそのまま続けた。


「お前が笑うと、俺も嬉しくなる。それが、俺の一番好きなものだ」


「スバル……からかってるだろ……」


キオが顔を赤らめて軽く睨むと、シュバルツは楽しそうに肩をすくめた。


「ふむ、ストレート過ぎたか?」


意地悪く笑うその表情に、緊張がほぐれていく。


『キオ』


再び、シュバルツの声が心に響く。


『こういう会話も、大切にしていこう』


『……うん。ありがとう、シュバルツ』


周りを見渡せば、他の生徒たちもそれぞれの形で対話を試みている。

オーウェンはグリフォンのソラリスと真剣に向き合っていた。


「君は……どこから来たんだ?」


「我が名はソラリス。光と浄化を司る者。光の領域より参った。長き眠りの後、契りの君の呼びかけに応えたのだ」


その威厳ある声に、オーウェンは少し気圧されながらも頷く。


「ソラリス……いい名前だと思う。これからよろしく頼む」


「うむ。契りの君よ、共に歩もう。我は正義と秩序、そして何より、契りの君の優しき心を好む」


グリフォンの言葉に、オーウェンは少し照れくさそうに微笑んだ。


ルイは二体の精霊と交互に対話を試みている。


「あなたたち……お名前はありますか?」


精霊たちは言葉を発しないが、その代わりに光を明滅させて感情を伝えているようだ。


「温かい子と、冷たい子……だから、フレアとトロプって呼んでもいいですか?」


二つの光が、ぱっとひときわ強く輝いた。気に入ってくれたらしい。


「二人とも、これから一緒にお料理を手伝ってくれるかな?」


ルイが微笑むと、フレアとトロプは彼の周りを嬉しそうに飛び回った。


セドリックは膝の上のフェネックを優しく撫でている。


「君は……喋れるの?」


フェネックは小さく首を横に振る。言葉は話せなくても、その仕草一つひとつで気持ちを伝えてくれる。


「でも、君の気持ちは伝わってくるよ。とても優しいんだね」


フェネックは嬉しそうに尻尾をぱたぱたと振り、セドリックの手をくんくんと舐めた。


「僕、勉強を頑張りたいんだ。君も一緒に頑張ってくれる?」


「きゅん!」という小さな鳴き声が、何よりも力強い返事に聞こえた。


カリナは複数の精霊たちと賑やかに会話していた。


「メラメラちゃん、故郷を離れて寂しくない?」


「『カリナと一緒なら大丈夫ー!』って!もー、嬉しいこと言ってくれるんだから!」


周りの生徒たちは不思議そうにその光景を見ているが、カリナと精霊たちの間に流れる深い絆は、誰の目にも明らかだった。


「精霊との対話は、言葉だけではない」


カスパー先生が場内を見渡しながら説明する。


「言葉を話せる精霊もいれば、光や仕草で気持ちを伝える精霊もいる。大切なのは、相手を理解しようとする心そのものだ。それでは午前中は、精霊とじっくり向き合ってほしい。お互いのことを知り、信頼を築くことこそが、何よりの力となる」



生徒たちはそれぞれの方法で、かけがえのないパートナーとの時間を過ごし始めた。補助指導者たちが一人ひとりの間を回り、穏やかな表情でその様子を見守っている。


「いい雰囲気ですね。皆さん、早くも精霊と心を通わせ始めています」


「ええ。これなら午後の協力魔法も楽しみですね」



午前の訓練が終わり、昼食の時間になった。

訓練の熱気が残る体を、中庭を吹き抜ける冬の涼しい風が撫でていく。五人は大きな木の根元に腰を下ろし、それぞれの精霊たちもそばでくつろいでいた。


「みんな、すごく上手にできてたね!」


カリナが明るく言う。


「オーウェンのソラリス、すっごく立派だね!」


「ありがとう。でも、まだ威厳がありすぎて少し緊張するな」オーウェンが苦笑いする。


「ルイの精霊さんたち、仲良しで可愛いね」セドリックが言うと、ルイは困ったように笑った。


「ありがとう……でも、時々喧嘩しそうになるから、ハラハラしちゃう」


ルイが言うそばから、炎と水の精霊がちりちりと火花を散らすように押し合いを始める。


だが、それも一瞬のこと。

すぐに仲直りして、またルイの周りをくるくると回り始めた。


「本当に仲がいいのね」カリナが微笑む。


「セドリックのフェネックもすごく可愛いよね」


キオが言うと、フェネックは膝の上で嬉しそうに尻尾を振った。


「キオ君のスバルは……」


ルイがシュバルツを遠慮がちに見上げる。


「す……すごく威厳があって、なんだか恐縮しちゃう」


「確かに……キオ君のパートナーって感じがすごくするよね」


セドリックも同意する。


「え、僕こんなに怖い顔してないよ?」


キオが驚いて言うと、オーウェンが真面目な顔でフォローした。


「キオ、こういうのは『威風堂々たる面構え』というんだ」


「大丈夫!キオは優しい顔をしてるから、そこはスバルと似てないよ!」


カリナのフォローに、キオは思わず吹き出してしまった。


「はははっ」


その瞬間、トン、とキオの背中をシュバルツの手の甲が軽く叩いた。


見れば、シュバルツはぷいと顔を背け、腕を組んでいる。

その姿は、少し拗ねた子供のようだ。


『シュバルツ、ごめんごめん』


キオは心の中で、笑いながら謝った。



午後の訓練では、精霊と協力した魔法の実践が始まった。


「午前中、諸君は精霊との対話を学んだ」

カスパー先生が説明する。


「午後は、その絆を使って実際に協力魔法を試してもらう。まずは基礎中の基礎、光球の生成からだ」


生徒たちが次々と試み始める。

多くの生徒が精霊の力を借りて光球を作ることに成功していたが、その大きさや安定性は様々だった。


オーウェンがソラリスと意識を合わせると、彼の手から放たれたのは、まるで太陽のかけらのような眩い光球だった。

その神々しい輝きと大きさに、周囲から「おお……」と驚きの声が上がる。


ルイはフレアと協力して温かな赤い光を、トロプと協力して涼しげな青い光を、それぞれ作り出していた。


「すごい!両方同時にできるんだ!」


セドリックが感心したように見つめている。

そのセドリックも、フェネックと協力して小さな黄色い光を作り出すことに成功した。パチパチと雷の力を秘めた光だ。


「できた……!」

セドリックの顔に、達成感に満ちた笑みが浮かんだ。

カリナは、なぜか鮮やかな虹色の光を作り出していた。


「みんなで協力したの!」


メラメラちゃん、フワフワくん、アクアくんが一緒に力を合わせた結果らしい。


そして、キオとシュバルツの番になった。


「やってみるか」


「うん」


二人が静かに手を重ねると、その間に黒色の光の玉が現れた。

しかし、それはただの黒い球ではなかった。吸い込まれそうなほどの深い闇の中に、無数の星屑がきらめいている。まるで、手のひらに小さな夜空が生まれたかのようだった。

二人は顔を見合わせ、互いに微笑み合った。


「なんて……美しいんだ」


補助指導者の一人が、感嘆の声を漏らす。


「これは……空間魔法の萌芽か」


カスパー先生も、その瞳に驚きを隠せないでいた。

周囲の生徒たちも、練習の手を止め、その神秘的な美しさにただ見入っていた。



そして、実技場の片隅から――


その美しい光景を、射抜くような鋭い視線がじっと見つめていることに、まだ誰も気づいていなかった。

ベゼッセンが、訓練の様子を遠くから見守っていたのだ。




「光球が安定して作れるようになった者は、次の段階に進んでみろ」


カスパー先生が続ける。


「精霊の属性に応じた、より具体的な魔法だ。ただし、これは光球よりもはるかに難しい。生徒本人の実力と、精霊との連携が伴わねば成功しない。無理はするな」


オーウェンとソラリスが再び集中すると、空中に一本の神々しい光の矢が現れた。

浄化の力を宿した、聖なる矢だ。


「契りの君よ、見事だ」


ソラリスが満足げに言う。

ルイはフレアと協力して、小さな炎を生み出そうと奮闘していた。


「お料理の火加減の練習……!」


しかし、ルイが集中しても、ぽっと生まれた炎はすぐに消えてしまう。


「難しい……」


ルイが少し落ち込んだ表情を見せると、近くにいた補助指導者が優しく声をかけた。


「大丈夫ですよ。初日から具体的な魔法ができる方が稀なのですから。練習を重ねれば、必ずできるようになります」


他の生徒たちも挑戦しているが、魔法が暴発しそうになったり、何も起こらなかったりと、ほとんどがうまくいかない。精霊との息を合わせることが、いかに難しいかを皆が実感していた。


カリナは複数の精霊と協力し、小さな虹色の炎を生み出すことに成功していた。


「メラメラちゃんたち、できた!」

「『やったー!』って喜んでるわね!」


しかし、その炎はまだ不安定で、すぐに消えてしまう。


「もっと練習が必要ね」と、カリナは真剣な表情で頷いた。


キオとシュバルツは、空間魔法の基礎を試していた。

訓練用の台に置かれた小石を、数センチ先の空間に転移させる――それだけでも、高度な集中力が必要だった。


「もう少し……」


キオが息を詰めると、小石が一瞬まばゆい光に包まれ、数センチ離れた場所に音もなく現れた。


「すごいな、キオ」


オーウェンが感心する。


「もう転移させたのか。小石とはいえ、初日でテレポートができるなんて、聞いたことがないぞ」


生徒たちは皆、それぞれの精霊と協力しながら、真剣に魔法の練習に励んでいた。



夕日が実技場に長く影を落とし始める頃、すべての訓練が終わった。


「諸君、本日もご苦労だった」

カスパー先生が締めくくる。


「精霊との絆は、一日にして成らず。これから毎日、少しずつ絆を育てていくことを忘れるな」


生徒たちが解散し始める。

キオも友人たちと一緒に実技場を出ようとした、その時だった。

解放感に満ちた空気が、入口に立つ一人の男の存在でぴんと張り詰めた。ベゼッセンが、いつの間にかそこに立っていたのだ。


「ネビウス君」


その声に、キオの心臓が凍りつく。

だが、体が完全に強張る前に、オーウェンやルイ達がキオを守るように後ろに立つ。


そして、シュバルツの手が、再びキオの背中にそっと置かれた。

確かな温もりが、キオに勇気をくれる。


『大丈夫。みんながいる』


キオは一度だけ深く息を吸い込んだ。

ベゼッセンは、友人たちに囲まれたキオを見ると、あえて距離を保ったまま立ち止まった。


「やぁ、久しぶりだね。会えて嬉しいよ」


昨日会ったばかりのはずだが、まるで初めて言葉を交わすような口調だった。

キオは緊張に強張りながらも、何とか顔を上げる。


「今日の魔法も見事だったが、何より契約自体が素晴らしい。竜の眷属との契約は、歴史上でも非常に稀なことだよ」


その声は穏やかだったが、キオには重い圧力のように感じられた。


「……ありがとう、ございます」


喉がからからに乾き、やっとの思いで絞り出した声は、自分でも情けないほど震えていた。

けれど、昨日よりは、少しだけ強くなれた気がした。

キオの返事に、ベゼッセンは優しく微笑む。


「私はね、君に期待しているんだ。何しろ、大切な甥っ子だからね」


その言葉は優しい響きとは裏腹に、冷たい鎖のようにキオの心に絡みついた。

頬を一筋の冷や汗が伝う。


「これからも、精霊との絆を大切にするといい……それに」


ベゼッセンはオーウェンたちを一瞥してから、再びキオに視線を戻した。


「新しくできた友達との付き合いもね。……それでは、また」


それだけ言うと、ベゼッセンは静かに背を向けて立ち去った。



その背中が見えなくなった瞬間――

キオはこらえていた息を、深く、深く吐き出した。


「よく耐えたな」


シュバルツが、労わるように声をかける。


「みんな……ありがとう」


キオが小さく呟くと、オーウェンがポンとキオの肩を叩いた。


「さあ、帰ろう。今日は本当によく頑張った」


茜色に染まる廊下を、五人と五体の影が長く伸びていく。

夕日が差し込む窓の外を見ながら、キオは心の中で思った。


『僕は一人じゃない。友達がいる。シュバルツがいる』


今はまだ、叔父への恐怖は消えない。

けれど、隣を歩く友人たちの温もりと、背中に感じるシュバルツの確かな存在が、凍えた心をゆっくりと溶かしていく。



それは、冬の夕日によく似た、暖かく、そして力強い希望の光だった。


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