第21話「儀式に向けて」
すみません
短めです
魔力調整の実習が始まってから数日後の月曜日、学校全体に緊張感が漂っていた。掲示板には大きな紙が貼られている。
**【精霊召喚儀式について】**
**実施日時:〇月〇日
**場所:召喚大広間**
**対象:1年生全員**
「いよいよか...」
セドリックが掲示板の前で呟く。その声には期待と不安が混ざっていた。
「あと二日ね!うーん!どんな精霊さんに会えるのか楽しみ!」
カリナは相変わらず明るく、わくわくが止まらないという顔をしていた
キオは掲示を見つめながら、胸の奥で不安が膨らむのを感じていた。
『ベゼッセンに会う...』
心臓が嫌な鼓動を打つ。
『キオ』
シュバルツの声が優しく響く。
『言っただろう。俺のことを考えろ』
『ふふ...そうだったね。君に会える。君に会える』
『それでいい』
キオはひたすらシュバルツのことを考え、気持ちを落ち着けた
その日の魔法理論の授業は、精霊召喚についての最後の講義だった。シュトゥルム先生が教壇に立ち、厳粛な表情で話し始める。
「皆さん、いよいよ精霊召喚儀式を迎えます。今日は最後の確認をしましょう」
生徒たちが真剣な表情で聞いている。
「精霊召喚は、皆さんの魔法人生において最も重要な出来事の一つです。生涯のパートナーとなる精霊との出会い。これは運命的な瞬間なのです」
先生の言葉に、教室全体がより一層静まり返る。
「儀式では、シュバルツ一族の専門家の方々が指導してくださいます。特に主任指導者であるベゼッセン・シュバルツ・ヴァーグナー先生は、精霊召喚の第一人者です」
その名前を聞いた瞬間、キオの体が硬直した。
オーウェンがすぐに気づいて、キオの方を見る。ルイも心配そうな表情を見せた。
「大丈夫か?」
オーウェンが小声で尋ねる。
「...うん」
キオは何とか答えたが、声が震えていた。
シュトゥルム先生は気づかずに続ける。
「儀式の流れは以下の通りです。まず召喚陣の前に一人ずつ立ち、自分の魔力を解放します。そして精霊界との接触を試み、相性の良い精霊を感じ取ります」
「先生、質問があります」
エルヴィンが手を挙げた。
「はい、フォルケ君」
「もし、精霊が現れなかったらどうなるんですか?」
「良い質問です。その場合は、後日再度儀式を行います。焦らず、自分に合う精霊をゆっくり探すことが大切です」
先生の説明に、生徒たちが少し安心したような表情を見せる。
授業が終わると、キオはすぐに席を立とうとした。
「キオ」
オーウェンが呼び止める。
「昼休み、屋上で話さないか?」
その真剣な表情に、キオは頷くしかなかった。
昼休み、屋上には5人が集まっていた。12月の冷たい風が吹いているが、誰も気にしていない。
「キオ君、今朝からずっと元気がないね」
カリナが心配そうに言う。
「あの...ベゼッセンっていう先生の名前を聞いた時から、顔色が変わった...ように見えて」
セドリックが遠慮がちに指摘する。
キオは俯いて、何も言えなかった。
「キオ君」
ルイが優しく声をかける。
「私たち、友達ですよね。何か辛いことがあるなら、聞かせてください」
その言葉に、キオの目に涙が浮かぶ。
「僕は...」
声が震える。
「ベゼッセンっていう人が...怖いんだ」
4人は戸惑いながら顔を見合わせる
「ただその理由については...」
キオは必死に言葉を紡ぐが、言葉が出てこない
「ごめん...みんなに話をする為の勇気がわかないんだ」
「無理に話さなくてもいい」
オーウェンが優しく遮る。
「気持ちの整理ができたら、ちゃんと説明するから。少しだけ待って欲しい…今、言えることは、ベゼッセンは...僕にとって、とても辛い記憶と結びついている人なんだ」
「分かった」
オーウェンが力強く頷く。
「なら、僕たちはキオのそばに居る」
「え?」
「一人にはさせない。そのベゼッセンという人がいても、キオが安心できるように僕たちがそばにいる。どんな時も」
オーウェンの言葉にカリナも元気よく頷く。
「そうよ!私たちがついてるもの」
「キオ君は一人じゃないです」
ルイも優しく微笑む。
「僕たち友達ですから。困った時は助け合うのが当然です」
セドリックも真剣な表情で言う。
キオの目から涙がこぼれた。
「みんな...ありがとう」
『本当に、良い友達に恵まれたな』
心の中でシュバルツが優しく語りかける。
『だから言っただろう。お前は一人じゃない』
ちゃんと心の整理をつけなければいけない
みんなにちゃんと話せるように
そう思うキオだった
夕方、寮に戻る途中、キオとオーウェンは少し離れて歩いていた。
「キオ、本当に大丈夫か?」
オーウェンが心配そうに聞く。
「うん...みんながいてくれるから」
「もしそのベゼッセンという人がキオに近づいてきたら、すぐに僕が対応する。安心してくれ」
「ありがとう、オーウェン」
「それと...キオの精霊、楽しみにしてる」
オーウェンが笑う。
「お互いにね...楽しみだね」
「ああ…僕もキオもきっと凄い精霊と出会えるだろうな」
オーウェンはいたずらっ子のような笑みを浮かべる
「そうだね!みんなを驚かせようね」
キオも微笑んだ。
その夜、キオは部屋で一人、窓の外の星空を見ていた。
『シュバルツ、明後日だね』
『ああ。待ちに待った時だ』
『怖いけど...君もみんなもいてくれるから、頑張れそう』
『怖いものなど何も無い…大丈夫だ』
キオは少し考えてから尋ねた。
『ベゼッセンに会うのは怖いけど...君に会えるのは楽しみだよ』
『俺もだ。長い間、心の中でしか話せなかった。でも明後日からは、本当に側にいられる』
『そういえば、君はどんな姿で現れるの?』
『人間の青年に近い姿で顕現しようと思う。完全な人間ではなく、竜人のような姿だがな』
『竜人...』
『人に近い方が一緒に居やすいだろう?』
キオは頷いた。
『うん、そうかもしれないね。あの...シュバルツ、お願いがあるんだけど』
『何だ?』
『僕が怖くて…どうしようもなくなったら、助けてくれる?』
まるで子供のようなお願いにシュバルツは笑った
『当然だ。嫌だと言ってもそばにいて守ってやる。』
その言葉に、キオは安心して目を閉じた。
『ありがとう、シュバルツ』
『礼を言うのはこちらの方だ。お前と共にいられることが、俺の喜びだ』
夢の中で、誰かの優しい手が頭を撫でてくれた気がした
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