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第20話「魔力調整の実習」

日曜日の朝、キオは寮の部屋でゆっくりと目を覚ました。昨夜のシュバルツとの対話で心が少し落ち着いている。


窓の外は12月らしい冷たい空気に包まれているが、今日は休日。友人たちと過ごす穏やかな一日になるはずだった。


しかし、廊下から急な足音が聞こえてきた。


「キオ!いるか?」


オーウェンの声だ。いつもより少し切迫している。


「入って」


扉を開けたオーウェンは、手に一枚の掲示を持っていた。


「これ、さっき掲示板に貼られてた」


キオが受け取って読むと、こう書かれていた:


**【緊急通知】**

**精霊召喚儀式準備のため、本日午後より魔力調整の実習を行います。**

**1年生全員、14時に第3実技場へ集合のこと。**

**担当:エルデ・グリューン・フェルナンデス教授**


「今日?日曜日なのに?」


キオが驚く。


「うん。魔力調整を教えてくれる先生が急遽2人とも学園を離れないといけないみたいで、今いる先生の人数では、儀式まで時間がないから、急遽追加されたみたいだ」


オーウェンが説明する。


「みんなには伝えた?」


「これから伝えるところだ」


オーウェンは魔法で小鳥を生み出す

光り輝く美しい鳥だ

その小鳥にキスをするかのような近さで

メッセージを吹き込む


小鳥は飛び立つと女子寮へと向かっていった


メッセージを聞いたであろう2人が

男子寮の前まで来る


「今日実習があるんですか?」


ルイが驚く。


「わあ、急だね!でも楽しみ!」


カリナはいつも通り前向きだ。


セドリックも寮の前までやってきた

彼は既に掲示を見たのか、落ち着いてる様子だった


「僕もさっき知りました。魔力調整...難しそうですね」


「大丈夫さ、みんなで一緒に頑張ろう」


キオが励ます。




午後2時、1年生全員が第3実技場に集まっていた。


この実技場は普段使われることが少なく、広々としている。壁には古代の召喚魔法陣が描かれ、天井は高く、神秘的な雰囲気を醸し出している。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。今日は急な案内でごめんなさい。集まってくれて嬉しいわ」


エルデ・グリューン・フェルナンデス先生が前に立った。50代くらいの女性で、深い緑色の髪を持つグリューン一族の教授だ。穏やかだが、その瞳には確かな強さがある。


「私は植物魔法を専門としていますが、今日は精霊召喚の準備として、皆さんの魔力調整を指導します」


先生の説明が始まる。


「精霊との契約には、安定した魔力が不可欠です。不安定な魔力では、精霊との波長が合わず、契約が失敗する可能性があります」


生徒たちが真剣な表情で聞いている。


「今日の実習では、三つのステップを学びます」


先生が指を三本立てる。


「第一に、自分の魔力を正確に感じ取ること。第二に、その魔力を安定させること。第三に、魔力を外部に放出し、制御すること」




「それでは、まず座ってください。楽な姿勢で構いません」


生徒たちが床に座る。キオも友人たちの近くに座った。


「目を閉じて、深呼吸をしてください。ゆっくりと...」


エルデ先生の声が優しく響く。


「自分の体の中を流れるもの...それを感じてください」


キオは目を閉じ、意識を内側に向けた。


すぐに、夜空色の魔力が体内を流れているのを感じる。そして...


『シュバルツ...』


心の奥で、黒竜の存在を感じる。昨日よりもさらに強く、はっきりと。


『キオ、聞こえるか』


『うん...すごくはっきり感じる』


『この場所は異界との境界が薄いようだな。特殊な場所のようだ』


周りを見ると、他の生徒たちもそれぞれに魔力を感じ取っているようだ。


オーウェンは額に少し汗を浮かべている。集中しているのだろう。


ルイは穏やかな表情で、静かに呼吸している。


カリナは微笑んでいる。精霊たちと対話しているのかもしれない。


セドリックは眉をひそめて懸命に集中している。


「それでは、ゆっくりと目を開けてください」


先生の声で、キオは目を開けた。


「皆さん、自分の魔力を感じることができましたか?」


多くの生徒が頷く。


「素晴らしい。それでは次の段階に進みましょう」




「魔力を感じ取れたら、次はそれを安定させます」


エルデ先生が説明を続ける。


「魔力は感情に影響されやすい。不安や緊張があると、魔力は乱れます」


キオはドキッとした。ベゼッセンのことを考えてしまった。


「ですから、心を落ち着かせることが重要です。深呼吸をして、心を静めてください」


再び目を閉じて、キオは深呼吸をした。


『シュバルツ、お願い...手伝ってくれる?』


『落ち着け、キオ。お前の魔力は十分に強い。ただ、心を静めるんだ』


『でも、ベゼッセンのことを考えてしまって...』


『今は考えるな。今は、この瞬間に集中しろ』


シュバルツの言葉に従い、キオは意識を現在に向けた。


周りの音、空気の流れ、自分の呼吸...


徐々に、心が落ち着いてくる。


そして、体内の魔力が穏やかに、規則正しく流れ始めるのを感じた。


「良いですね。その調子です」


エルデ先生が歩き回りながら生徒たちを見ている。


「ネビウス君、素晴らしい。あなたの魔力は非常に安定しています」


先生がキオの前で立ち止まる。


「ありがとうございます」


キオが目を開けて答える。


教授は次にオーウェンのところへ。


「リンドール君...少し無理をしていますね。体調が優れないのでは?」


「...はい、少し」


オーウェンが正直に答える。


「無理は禁物です。休憩を取ってください」


「でも...」


「精霊契約に必要なのは、安定した魔力です。今は休んでください」


教授の優しい言葉に、オーウェンは頷いた。




休憩を挟んで、第三段階に入った。


「それでは、安定させた魔力を外部に放出してみましょう」


エルデ先生が実演する。


手のひらから、美しい緑色の光が浮かび上がる。それは小さな球体となり、ゆっくりと宙に浮く。


「このように、魔力を形にします。大きさや形は問いません。大切なのは、安定していることです」


生徒たちが次々と試み始める。


黄色、紅色、青色、...様々な色の光が実技場を照らす。


キオも手のひらに意識を集中させた。


黒色の光が、静かに浮かび上がる。


『良い感じだ、キオ』


『シュバルツのおかげだよ』


『いや、お前自身の力だ』


隣では、ルイが淡い青色の光を作り出している。少し小さいが、とても安定している。


「ルイさん、上手だね」


「ありがとうございます...でも、キオ君の方が綺麗です」


ルイが恥ずかしそうに言う。


カリナは...なぜか複数の色の光を出している。


「メラメラちゃんとフワフワくんとアクアくんが手伝ってくれてるの!」


カリナが嬉しそうに説明する。赤、白、青の小さな光が彼女の周りを飛び回っている。


「すごいね、カリナ」


キオが感心する。


セドリックは必死に茶色の光を維持している。小さいが、彼なりに頑張っている。


「セドリック、無理しないで」


「う、うん...でも、なんとか...」




その時、実技場の扉が開いた。


入ってきたのは、白銀の髪を持つ見知らぬ上級生だった。

先日、図書館で見かけた2年生だ。


「失礼します。エルデ先生」


「はい、何か?」


「精霊召喚指導団から伝言です。」


上級生がエルデ先生に要件を話しているが内容は聞こえなかった


「分かりました。」


教授が頷く。


上級生はキオの方をチラリと見て、去って行った。


『あの人、なんなんだろ…嫌だな』


キオは少し気になったが、今は実習に集中しなければ。




「それでは、今日の実習はここまでです」


エルデ先生が告げる。


「皆さん、急な招集にも関わらずありがとうございます。よく頑張りました。明日から本格的な準備が始まります。体調を整えて、臨んでください」


生徒たちが拍手する。


「特に、ネビウス君、リンネルさん、そしてマージェンさん。あなた方の魔力は非常に良好です」


三人が嬉しそうに顔を見合わせる。


「モイヤー君も、諦めずに頑張りましたね。その姿勢が大切です」


セドリックが照れながら頷く。


「リンドール君は、無理をせず、自分のペースで進んでください」


「はい、ありがとうございます」


オーウェンが感謝する。




実習が終わり、5人は学校の中庭を歩いていた。


「今日の実習、どうだった?」


キオが尋ねる。


「楽しかった!精霊さんたちも喜んでたよ」


カリナが弾む声で答える。


「僕は...まだまだだな」


セドリックが少し落ち込んでいる。


「そんなことないよ。セドリックは最後まで諦めなかったじゃない」


ルイが励ます。


「そうだな。その姿勢が一番大切なんだ」


オーウェンも同意する。


「明日から本格的な準備が始まるんだね」


キオが空を見上げる。


「楽しみだけど...ちょっと緊張する」


セドリックが正直に言う。


「大丈夫。みんな一緒だから」


カリナが明るく言う。


その言葉に、みんなが笑顔になった。




その夜、キオは部屋で今日のことを振り返っていた。


魔力調整の実習は無事に終わった。明日からは本格的な準備が始まる。


そして、数日後には...


『ベゼッセンに会う...』


胸が締め付けられる。


『キオ』


シュバルツの声が優しく響く。


『怖いよ...』


『分かっている。だが、お前は一人じゃない』


『うん...』


『あいつのことよりも俺と会えることの方を考えろ』


『え?』


『その方がお前も安心するだろうし、幸せだろ?』


シュバルツのその言葉に、キオは吹き出して笑った。


『ふっ…!確かにそうだね』


『だろう?それに、恐れるな。お前には友がいる。どんな困難も乗り越えられる』


窓の外では、12月の星空が静かに輝いている。


明日から、さらに本格的な準備が始まる。


ベゼッセンとの再会も、刻一刻と近づいている。


でも、キオにはシュバルツがいるし、友達もいる


『きっと、大丈夫だ』


そう信じて、キオは明日への決意を新たにした。



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