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第16話「みんなでひとつに」

昨日、勉強会について色々と話が出来たキオは

今日の授業にいつも以上に意欲的だった。

午後は魔法実習の時間で、今日のテーマは複数人で協力して魔法を使用すること学ぶというものだった




「おい、貴様ら!集合だ!」


ヘルムート・アイゼン先生の豪快な声が体育館に響く。

相変わらず筋肉隆々で、その存在感は圧倒的だった。


「今日は連携して魔法を使うことの基礎を学ぶ!」


先生が力強く宣言すると、生徒たちの表情が引き締まった。いつもの通り、アイゼン先生の授業は気合が入っている。


「魔法とは個人の力だけではない!真の強さとは、仲間との連携から生まれるものだ!」


アイゼン先生の背中には、見えない炎が燃え上がっているような迫力があった。


「戦場では一人で戦うことなど稀だ!味方と協力し、お互いの長所を活かし、短所を補い合う!それが生死を分ける!」


先生の言葉には熱が込められていた。

その実戦経験から来るであろう言葉に、生徒たちは真剣に聞き入った。


「だが今日は戦闘ではない。まずは基礎中の基礎、魔力を同調させる練習からだ!」


がッ!ごッ!と音を鳴らしながら拳をにぎったり、ポーズを決めたりしている先生を見ていると

昔観た某有名な作品(美しい女性と野獣の物語)に登場する顎が割れた赤い服の男を思い出す


「二人一組になって、魔力を合わせて光の輪を作る。簡単に聞こえるが、実際にやってみると難しいぞ!」


先生が左手と右手を前にかざしそれぞれの手に魔力をまとわせる

魔力は炎のように揺らめいていた

両の手を合わせると揺らめいていた魔力の光が安定した

炎のようだった魔力が光の塊のような形となっていた


「見ろ!左手と右手の魔力を微妙に調整して、一つの形にまとめている。これが二人でやるとなると、相手の魔力を感じ取り、自分の魔力を調整する技術が必要になる!」






「それでは、二人一組でペアを作れ!」


生徒たちがざわめき始める。キオは少し迷ったが、オーウェンが声をかけてくれた。


「キオ、一緒にやろう」


「うん、もちろん」


キオは頷いたが、ふと教室を見回すと、セドリックが一人で困っているのが見えた。ルイとカリナは既にペアになっている。


「あれ、セドリックのペアは...?」


「ああ、今日はフリッツが風邪で休んでるから、人数が奇数になってるのかもしれないな」


オーウェンが説明した。

確かに、よくセドリックとペアを組んでいるクラスメイトの姿が見えない。


そんなセドリックにキオは声をかける


「セドリック、僕たちと一緒にやらない?3人でも大丈夫だと思うよ」


キオの提案に、セドリックの顔が明るくなった。


「いいんですか?でも、先生は二人一組って...」


「先生に聞いてみよう」


オーウェンがアイゼン先生に向かって歩く。


「先生、3人のグループでも構いませんか?セドリックが一人になってしまうので、僕たちと一緒に練習させていただきたいのですが」


先生は少し考える素振りを見せた。

腕を組んで、教室を見回す。確かにセドリックが一人で困っている。


「うむ...3人での魔力調整は、バランスを取るのが非常に難しい。一人でもタイミングを間違えれば、全体が崩れる可能性があるが…」


しばらく考えた後、先生が決断した。


「よし!挑戦してみろ!ただし、安全第一だ。無理をせず、基礎からしっかりと段階を踏んで練習するように!」


「ありがとうございます!」


三人が感謝の気持ちを込めて頭を下げた。




「まずは僕たち二人で基本を確認しよう」


オーウェンが提案する。


「僕が光を出すから、キオはそれに合わせてみて」


「うん、わかった」


オーウェンが手のひらに小さな金色の光を作り出す。

温かそうな、太陽みたいな光だった。


キオも自身の手に魔力をまとわせ、そっとオーウェンの手を近づけた

その瞬間「わあ」と小さく声を漏らした。


「オーウェンの魔力、なんかすごく優しい感じ」


「キオのも力強くていいね。でも全然怖くない」


二人の魔力が触れ合うと、最初は波打っていたがだんだんと安定していく。

金色と夜空色の光が混じり合って、綺麗な光の玉ができた。


「おお、きれい!」


セドリックが目を丸くして見守っている。


「じゃあ、セドリックも一緒にやろう?」


キオが手招きする。


「でも、僕が入ったら壊れちゃうかも...」


「大丈夫だよ。最初からうまくできる人なんていないって」


オーウェンが笑いかける。




「それじゃあ、セドリックも魔力を入れてみて。無理しないで、ちょっとずつでいいから」


キオが声をかけると、セドリックがそーっと魔力を近づける。茶色の暖かい光が、金色と夜空色の玉に近づいていく。


でも最初はうまくいかなかった。三人の魔力がぶつかり合って、光の玉がぐにゃぐにゃと揺れていた。


「あ、やっぱりダメだ!」


セドリックが慌てて手を引こうとする。


「待って待って!そのまま!」


キオが慌てて止める。


「魔力を引っ込めちゃダメ。もうちょっと弱くしてみて。それで、僕たちの光がどっちに回ってるか見てみて」


「回ってる...?」


「そうそう!玉のようにみえるけど、魔力が時計と同じ方向に回ってるんだ…感じない?」


キオが指で輪を描いて見せる。


「あ、ほんとだ!」


ゆっくり目をとじてキオとオーウェンの魔力を意識すると

ぐるぐると魔力が動いているのを感じた

セドリックが驚いたように目を開ける


そのコツが分かると、少しずつうまくいくようになった。


「あ...あああ!」


セドリックが嬉しそうな声を上げた。三人の魔力がぴったり合った瞬間だった。


綺麗なオレンジ色の光の玉が宙に浮いている。温かみがある夕暮れのような光だった。


「やったね!セドリック、すごいじゃないか!」


「ほんとに?僕にもできた?」


セドリックが信じられないという顔をしている。


「ああ!セドリックの魔力、すごく温かくていい感じだ」


オーウェンも嬉しそうだ。




少し離れた場所では、ルイとカリナのペアが練習している。


「ルイ、もうちょっと強くして!」


「え、こう?」


ルイがびくびくしながら魔力を強くする。


「そうそう!でも今度は急すぎるの。もっとゆーっくり...」


カリナが手をひらひら動かして説明する。


「アクアくんも『びっくりしちゃう』って言ってるのよ。精霊さんって、急に変わるのが嫌いなの」


「精霊さんの気持ちも聞いてるんだね...すごい」


ルイが感心する。


「当たり前でしょ!精霊さんたちはお友達だもの」


カリナの魔力とルイの魔力が混じり、なんだか優しいピンク色の光ができた。

お母さんのお料理みたいに温かい感じだった。


「わあ、きれい...」


「ルイの魔法って、お家みたいに温かいのね」


二人とも自分たちの作った光にうっとりしていた。




一方、エルヴィンとマルクは別のペアで練習していた。


「ゲルプ一族の魔法理論によれば、魔力の流れを一定にすることが重要とされているのだが」


エルヴィンがなんだか難しいことを説明をしながら魔法を発動する。


「なるほど、確かに安定感がありますね」


マルクが感心しながら応じる。


二人の魔力は技術的には完璧で、教科書通りの美しい光の玉を作り出していた。

黄色と青色の光が規則正しく混じり合い、黄緑色の光の玉を作っていた


「理論的には申し分ないな」


「さすがはフォルケ君だね」


二人はどや顔だった




しばらく練習が続いた後、アイゼン先生が各グループを見て回った。


「うむ、みんななかなか良い出来だ!」


先生がキオたちのグループにやってきた。


「3人での連携、予想以上に上手くいっているじゃないか!」


「ありがとうございます」


三人が嬉しそうに答える。


「特に君」


先生がセドリックを見る。


「最初は不安そうだったが、最後は見事に調和していたぞ。大切なのは、技術だけではない。相手を信頼し、自分も信頼される気持ちが重要なのだ」


「はい...ありがとうございます」


セドリックが感動した様子で答える。


先生はルイとカリナのペアにも声をかけた。


「君たちの魔法は温かみがあって良いな。特に、精霊との協力が自然にできている」


「ありがとうございます!」


カリナが弾んだ声で答える。


「精霊魔法は、本来こうあるべきなのだ。支配するのではなく、協力する。君の故郷の魔法は、とても美しいと思うぞ!」


先生の言葉に、カリナの目が輝いた。




「基本ができたところで、もう少し応用的な練習をしてみよう」


アイゼン先生が新しい課題を提示した。


「今度は、魔法障壁を共同で作ってみろ。敵の攻撃を防ぐという想定だ」


先生が実演してみせる。両手で大きな光の盾を作り出し、それを自在に動かして見せた。


「一人で作る障壁よりも、複数人で作る障壁の方が強固になる。ただし、連携が取れていないと逆に弱くなることもある」


「よしやってみようか」


「うん」


オーウェンの言葉にキオが頷く。


「僕も頑張ります」


セドリックも意欲的だ。




最初の試みは大失敗だった。

三人がバラバラのタイミングで魔力を出したから、障壁がぐにゃぐにゃの変な形になってしまった。


「あちゃー、全然ダメだ」


キオが苦笑いする。


「タイミングが合ってないね」


「僕が『せーの』って言ってみようか?」


オーウェンが提案した。


「いいね!」


「お願いします」


「せーの!」


今度は三人同時に魔力を出すことができたけど、今度は魔力の強さがバラバラで、障壁に大きな穴が開いてしまった。


「あー、僕の魔力が弱すぎたかも」


セドリックがしょんぼりする。


「そんなことないよ。魔力の量なんて関係ないって」


キオが慌てて励ます。


「そうだぞ!大事なのは、みんなで合わせることだ」


オーウェンも頷く。


「今度は、僕がお手本出すから、二人ともそれに合わせてみてくれるか」




三度目の挑戦。オーウェンが落ち着いた魔力を出して、キオとセドリックがそれに合わせるように頑張ってみる。


最初はやっぱりぎこちなかったけど、だんだんコツが分かってきた。


「あ、なんかいい感じ!」


キオが嬉しそうに言う。


「セドリック、その調子だ!」


オーウェンも励ます。


そして、ついに綺麗な障壁ができあがった。

三人の魔力が混じって、オレンジ色の透明な盾が空中にふわふわ浮いている。


「うわあああ!できたできた!」


セドリックが思わず大声を出した。


「やったね!」


「すごくきれいだな!」


キオとオーウェンも大喜びだった


同じくルイやカリナ、エルヴィンやマルクののほうもうまくっていっているのか

あらゆるところで様々な光が生まれていた



最後に、アイゼン先生が全体に向けて話した。


「今日の授業で、みんなそれぞれ協力した魔法を見せてくれた」


先生の視線が各グループを順番に見回る。


「技術的に完璧なもの、温かみのあるもの、力強いもの。どれも正解だ」


「唯一の正解はない。大切なのは、仲間と心を通わせ、お互いを信頼することだ」


先生の言葉に、生徒たちが真剣に聞き入った。


「今日学んだことを忘れるな。いつか、この技術が君たちの命を救うかもしれない」




実習が終わった後、キオたち5人は一緒に更衣室に向かった。


「今日の魔法、楽しかったね!」


セドリックがにこにこしながら言う。


「セドリックも最初はドキドキしてたのに、すぐうまくなったよね」


キオが嬉しそうに言うと、セドリックは照れて頬を赤くした。


「えへへ...二人がいてくれたからだよ」


「私も楽しかった!ルイとの魔法、すっごくうまくいったの」


カリナがぴょんぴょん跳ねながら言う。


「カリナの精霊魔法も、不思議だったけどすごかったです。精霊さんたちと話すの、今度もっと教えてね」


ルイがお願いすると、カリナは大喜びした。


「もちろん!メラメラちゃんたちも、ルイと友達になりたがってるもの」


「君たちを見てると、魔法って面白いんだなって改めて思うよ」


オーウェンがしみじみと言った。


「君たちと一緒にやる魔法は全然違う感じがする」


みんなが照れくさそうに笑った。




「そういえば、今日気づいたことがあるんだ」


キオがふと思い出したように言う。


「何?」


みんなが「何何?」って感じで寄ってくる。


「みんなでやる魔法って、その人らしさが出るんだね。僕たちのは力強い感じだったし、ルイとカリナのは温かい感じだった」


「あ、ほんとだ!」


カリナが手をパンと叩く。


「私たちの魔法、お家にいるみたいな暖かさだったものね」


「それぞれ違うんですね...面白いなあ」


セドリックがしみじみ言う。


「だから一緒にやると楽しいのかもな」


オーウェンが頷く。


「一人じゃ作れないものが、みんなでなら作れるんだね」






その夜、寮の部屋でキオは今日も出来事を振り返っていた。


『キオ』


シュバルツの声が心に響く。


『今日はどうだった?』


『みんなで協力して作る魔法って難しいけど、できたときに感動するよね』


最近寒くなってきたので少し厚めの服に着替える


『セドリックも最初は不安そうだったけど、最後は本当に上手くできていた。オーウェンの言葉もすごく安心するし…楽しかったよね』


『お前も相手に合わせるのが上手かったな』


『最初は力加減めちゃくちゃだったけどね』


『はははっ…はじめはそういうものだろう』


『そう。みんな違って、みんないいってね?でも、一緒になると、一人では作れない素晴らしいものができる』


キオは心から満足していた。


『明日もきっと新しい発見があるだろうな』


『オーウェンが持参する古代魔法の資料も楽しみだ』



そんなことを考えながら、キオは心地よい疲労感と共に眠りについた。


そんなキオの気持ちとは裏腹に

窓をうちつける風は冬の訪れを告げていた



最後までお読みいただきありがとうございます。

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