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間話4 ルイ視点 「初めての会話」

いつもの朝、ルイは相変わらずカリナとセドリックと一緒に座っていた。


「今日の魔法史の授業、楽しみね」とカリナ。


「各家の竜の話だって、ほんとに居たとしたらすごいよねー。僕も見てみたいな」とセドリックもワクワクしている。


ルイは楽しそうな2人を見て思わず笑ってしまった時、教室がざわめいた。振り返ると、キオが席を立って、こちらに向かってくるのが見えた。


「へ?こっちに来る?」


カリナが驚いたような声を上げる。


『え?』


ルイは少し困惑した。なんで?どうして?


「あの...」


キオがルイのそばまで来て、恐る恐る声をかけた。


ルイは驚いた。まさか自分に話しかけてくるなんて。教室で、みんなの前で。慌てて立ち上がって、セドリックも同じように立ち上がる。


「は、はい!」


声が震えてしまう。周りの視線も感じる。どうして?どうして私に?


「えっと...ルイ・リンネルさん、ですよね?」


ルイは愕然とした。まさかキオに名前を呼ばれるとは思っていなかったから。


「はい...その、キオ・シュバルツ・ネビウス様」


自然に「様」をつけて、深々と頭を下げた。セドリックも慌てて同じように頭を下げる。


「あの、そんなに畏まらないでください。同じクラスですから」


キオが慌てて手を振って、ルイはますます混乱した。同じクラスでも、身分は違う。どうしてこんなことを?


「でも...」


「僕たち、以前にお会いしたことがありますよね?」


その言葉に、ルイは目を見開いた。まさか...覚えているの?でも、どうして平民の私のことを?


「あ...はい。えっと、確か七年くらい前に...」


小さな声で答えながら、心の中は混乱した。まさか覚えているなんて。関係ない世界の人だと思っていたのに。


「あの時は本当にありがとうございました。ずっとお礼を言いたかったんです」


ずっとお礼を言いたかった、という言葉に、ルイは胸がいっぱいになった。ずっと?本当に?


「そんな...大したことでは...」


頭が真っ白になりながらも、謙遜の言葉が出てくる。


「いえ、僕にとってはとても大切なことでした。迷子になって怖くて泣いていた僕を、温かく迎えてくれて」


キオの真摯な言葉に、ルイは衝撃を受けた。大切なこと、だと思ってくれていた?まさか、あの時のことを?


「覚えていてくださったんですね...」


信じられない。覚えていてくれたんだ。


「もちろんです。あの時の料理、とても美味しかったです。ご両親にもよろしくお伝えください」


キオが微笑むと、ルイは涙が出そうになった。料理のことまで覚えていてくれてる。


「はい...父も母も、喜ぶと思います」


そんな二人の様子を見ていたカリナが、興味深そうに口を挟んだ。


「ルイ、この前話してた子供の頃の話って、これのこと?」


カリナの無遠慮かつ失礼な発言に、ルイは慌てた。


「カリナ!」


「何よ、別にいいじゃない。あ、私カリナ・マージェン。この国の出身じゃないから爵位とか身分とか?わからないのよね」


カリナはキオに向かって人懐っこく手を振った。


「キオです。よろしくお願いします」


「ほんとすっごい美人さんね。ルイが言ってた通りだわ」


「カリナ!」


顔が真っ赤になる。


セドリックも気まずそうに視線を逸らしてから天を仰いでいた。


「それでこっちがセドリック・モイヤー。ルイと同じ町の出身なのよ」


カリナの紹介で、セドリックが恐縮しながらキオの方に向き直ると頭を下げた。


「セドリック・モイヤーです。恐れ入ります」


「キオです。丁寧にしなくても大丈夫ですよ」


キオは親しみやすく答えたが、セドリックは「それは流石に...」と零し、困ったような表情を見せた。ルイも同じ気持ちだった。


その時、突然後ろから声がした。


「キオ」


振り返ると、金髪の美しい少年が近づいてくる。王族のオーウェン様だ。


「おはよう。こちらの方々は?」


ルイとセドリックの緊張が最高潮に達した。


「はい。ルイさんたちです」


キオがさりげなく紹介してくれる。


「初めまして。オーウェンです」


オーウェン様は王族らしい威厳を保ちながらも、堅すぎない口調で挨拶してくれた。


「ル、ルイ・リンネルです!」


「セドリック・モイヤーです!」


二人は声を震わせながら自己紹介した。


カリナだけは相変わらずマイペースだ。


「私カリナ・マージェン!よろしく!」


「同じ学園で学ぶもの同士、僕の方もよろしくしてくれると嬉しいな」


オーウェン様の言葉に、ルイとセドリックは更に恐縮した。


「とんでもございません...」


「恐れ多いです...」


その時、シュトゥルム先生が教室に入ってきた。


「皆さん、席に着いてください。今日は魔法史について学びます」


生徒たちは急いで自分の席に戻っていく。キオも席に戻ろうとしたが、ルイに向き直った。


「また話せてよかったです。今度ゆっくりお話しできればと思います」


「はい...ありがとうございます」


ルイは震え声で答えた。今度ゆっくり?本当に?


キオが席に戻った後、カリナとセドリックに囲まれた。


「ルイ、すごいじゃない!シュバルツ一族の人と知り合いだったなんて!」


「どんな関係なの?詳しく教えてよ」


「その...私にもよくわからないんだ...」


ルイは本当に混乱していた。

今だったら苦手なトマトを目の前に出されても気づかず完食出来るくらいは混乱していた。


「でも、やっぱあの子、思ってたより普通だったじゃない」


カリナの言葉にセドリックはぶんぶんと首を振った


「普通って言っても、やっぱりオーラが違うよ。それに王族の人まで...」


「そうだね...」


ルイは複雑な気持ちだった。気にしないでいたのに。どうして話しかけてくれたんだろう。




昼休みになって、ルイは一人で図書館に向かった。さっきの出来事で頭が混乱していて、静かな場所で考えを整理したかった。


図書館は午後の光が大きなステンドグラスから差し込んで、とても美しかった。静寂に包まれていて、心が少し落ち着く。


料理関係の本が置かれているコーナーに向かった。今は料理のことを考えて、心を落ち着けたい。


「『魔法調理学基礎』...これがいいかな」


手に取った本をパラパラとめくる。でも、さっきの出来事が頭から離れない。


後ろから足音が聞こえてきた。


「あの...ルイさん」


その声に、ルイは心臓が止まりそうになった。まさか、また?


慌てて振り返ると...


キオ・シュバルツ・ネビウス様が立っていた。


「あ、キオ様」


本を胸に抱きしめながら、また来てくれたことに驚いていた。


「料理の本を探してるんですか?」


「はい...魔法を使った調理法について学びたくて」


答えながら、どうして二度も話しかけてくれるのか理解できなかった。


「将来は料理人になりたいんですか?」


「えっと...実家が洋食屋なので...いつか母の手伝いができるように、魔法を活かした料理を覚えたいと思っています」


「素晴らしいと思います。あの時の料理、本当に美味しかったです」


あの時の料理、という言葉に、ルイの心が震えた。本当に覚えていてくれる。


「ありがとうございます...」


「どんな魔法を料理に使うんですか?」


興味深そうに聞かれて、ルイは戸惑いながらも答えた。


「火力の調整や、食材の保存、味の調和などに使えるようです。でも、まだ基礎的なことしかわからなくて...」


「この本で勉強してるんですね」


「はい。でも、少し難しくて」


「もしよろしければ...僕も少しだけですが魔法について勉強してきましたので、分からないところがあったら聞いてください」


その申し出に、ルイは愕然とした。そんな、どうして?


「そんな...お忙しいでしょうし...」


「いえ、僕も勉強になりますから。それに...七年前のお礼も、まだちゃんとできていませんし」


七年前のお礼、という言葉に、ルイは混乱した。

そこまで気にしてくれているとは思わず

頭がパンクしそうだった




「あの...一つお話ししたいことがあります」


「はい?」


「ルイさんの髪色のことなんですが...」


突然の話題に、ルイは戸惑った。


「私の髪色...ですか?」


「はい。とても美しい色だと思うんです」


その言葉に、ルイは驚愕した。美しい、だなんて。


「グレーという色は...他のどの色とも調和できる特別な色だと思います。まるで、すべての色を受け入れて、それぞれの良さを引き出してくれるような」


調和という言葉に、ルイは言葉を失った。


「調和...ですか?」


「はい。白にも黒にも、どんな色にも合わせることができる。それってすごく特別なことだと思うんです」


中途半端だと思っていた自分の髪色を、そんなふうに言ってくれるなんて。


「本当に...そう思われますか?」


「はい。心からそう思います。料理もそうですよね。様々な食材を調和させて、一つの美味しい料理を作る。ルイさんの髪色は、まさにそれを表しているような気がします」


ルイは涙が出そうになった。今まで誰も、そんなふうに言ってくれた人はいなかった。


「ありがとうございます。そのように言っていただけて...光栄です」


その時、図書館の入り口の方から複数の足音が聞こえてきた。ルイは慌てたような表情を見せた。


「あの...私はそろそろ」


「はい。お疲れ様でした」


キオが微笑むと、ルイは本を抱えて足早に図書館を出て行った。




廊下を歩きながら、ルイは今の会話を思い返していた。


別世界の人だと思って気にしないでいたのに。覚えていてくれて、話しかけてくれて、髪色まで褒めてくれた。


どうして?どうして私なんかに?


寮の部屋に戻ると、カリナが待っていた。


「お帰り!どうだった、図書館は?」


「いい本が見つかったよ」


「そう、よかった!」


でも、今日の出来事は、衝撃的だった。


「ルイ、何かすごく驚いたような顔してる」


「え?」


「なんだか、びっくりしたような、困ったような...」


カリナに指摘されて、ルイは慌てた。


「そんなことないよ」


「そう?でも、何かあったでしょ?」


その夜、ベッドに横になりながら、ルイは今日のことを考えていた。


まさか一日のうちに、教室と図書館で二回も話をするなんて思わなかった。




『どうして?』


その理由がわからない。でも、嬉しかった。今まで感じたことのない、特別な気持ちだった。


『これからどうなるんだろう』


気にしないでいた気持ちが、また動き始めている。でも、それでいいのだろうか。


そんな混乱した想いを抱きながら、ルイは眠りについた。明日からの学校生活が、急に変わって見えた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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