禁じられた森【カナイア】
レイ様の意地悪!!
すぐに追いかけてきてくれると信じていたのに。
ううん。追いかけてこなければいけないのよ!
だって私はヒロイン。レイ様を攻略出来る唯一無二の存在。
その私を蔑ろにするなんてありえない!!
いくら闇魔法で操られているとはいえ、キャラクター補正?がかかっていたら、多少の理性は残っているものでしょ。
「お、お嬢様。あの……本当に入るんですか?」
昨日、モブ達が話しているのを聞いた。
一角の森と呼ばれる立入禁止禁止区域には魔物が住んでいる。
洞窟にしか咲かない花を見に行ったとき、魔物に襲われたと懐かしそうに話していたけど、私は聞き逃さなかった。
あの!!悪役令嬢も一緒にいたということを。
なんて女なの!!魔法も使えないモブ平民の子供を殺そうとするなんて!!
レイ様が助けに来てくれたらから良かったものの、一歩間違えれば……。
そんな非道で最低な人間が、我が物顔でこの国を出歩いているのが我慢ならない。
国民の意識を乗っ取って、自分の過ごしやすいように奴隷扱いしているんだわ!!
悪役令嬢。必ず私が貴女を断罪してあげる!!
「いいこと!!必ず!レイ様に助けに来るようにするのよ!ヒロインを助けるのは王子様の役目。義務なんだから!!」
「しかし……」
「私に逆らうの?」
かざした手の平から雷を起こせば、侍女の顔は強ばる。
その手で触れようとすれば大袈裟に一歩下がって逃げた。
「無能なあんたでも、レイ様を呼ぶことは出来るわよね?」
「は、はい!!」
「ふふ。じゃあ早めにお願いね。私の美しい美貌に傷でもついたら大変だから」
暗い森の中に足を踏み入れる。
背筋がゾクリと凍り、不気味な雰囲気が漂う。
木々が高く陽の光が差し込まないから、余計にそう感じてしまうのだ。
前に進むことを躊躇ってしまうような、先の見えない暗さ。
酸素が薄いのか呼吸が辛い。
雨が降ったかのように地面はぬかるんでいる。
方向感覚が狂ってしまいそうなほど、辺りは同じ樹しかない。
先に進むにつれて指先が震え出す。
本能が恐怖していた。森に住む魔物に。
──ふ、ふん!どうせ下級や中級でしょ!!
雑魚魔物なんかに負けるほど私は弱くない。
カナイアは公女として非常にレベルの高い教育を受けて、魔法の才能だってある。
訓練と称して領地の魔物退治も経験していた。
雑魚如きに遅れをとるはずがない。
私は美しいだけでなく、強さも兼ね備えている。
その私が魔物に恐怖?
いいえ、そんなことないわ。魔物のほうが私に恐れをなして逃げるのよ。
光魔法を持っていなくても、主人公は存在そのものがチート。
本能で生きる知能の低い魔物は、私の強さを感じ取る。
どんな魔物が現れたって、私の敵ではない。
「早く来ないかな、レイ様。私の勇姿を目にしたらきっと、ドキドキして私のことばっかり考えるようになっちゃう」
そんなことになったら大変じゃない。
四六時中、私のことを想って、顔を会わせれば人目もはばからず愛を囁いたりするのね!
嫉妬に狂った悪役令嬢は、私とレイ様の愛のパワーでやっつける。
それこそが正しい世界の在り方。
だって私はヒロインなんだもん。
死ぬはずだった魂がゲームの世界に転生するなんて、物語の主人公にしかありえない奇跡。
そう!私は今、奇跡の世界で生きているんだ。
舞台となるリーネットには史上最悪の悪役令嬢もいる。
キャストは勢揃い。ストーリーも出来上がっている。
あとは私が悪役令嬢を討ち、レイ様とラブラブで幸せな未来を築くだけ。




