第20話 初めてのお出かけ
やわらかな風が、街の並木道をゆっくりと揺らしていた穏やかなある日。
まだ小さなヴァイスを抱きかかえ、優衣は大きな公園へと向かう。
今日は、ヴァイスにとって初めてのお出かけだ。
公園の入り口をくぐると、視界いっぱいに広がる芝生が目に飛び込んでくる。
あちこちで犬を連れた人たちがのんびりと散歩していて、ボールを追いかけるわんこの元気な声が聞こえてきた。
「ほら、ヴァイス。ここが公園だよ」
そっと地面に降ろすと、ヴァイスはおそるおそる一歩を踏み出し、鼻をくんくんと動かす。
草の匂い、土の匂い…。安息の空間ではない初めての外の匂いに、小さな耳がぴょこぴょこと揺れた。
しばらく芝生を探検したあと、優衣は池の方へと歩みを進めた。
水面は日差しを受けて、きらきらと宝石のように光っている。
その水辺には、数羽のカルガモたちがゆったりと泳いでいた。
ヴァイスは目をまん丸にして、水面をじっと見つめる。
カルガモが首を伸ばして水をすくい、時折「クワッ」と鳴くたびに、ヴァイスの尻尾が小さく揺れる。
その表情はまるで「なんだあれは?」と言っているみたいだった。
優衣が少し離れた場所で見守っていると、カルガモの一羽がバサッと大きく羽ばたき、空へと飛び立った。
その瞬間、ヴァイスはびっくりして耳を伏せ、ちょこちょこと優衣の足元へ駆け寄ってくる。
「びっくりしたね。でも大丈夫だよ」
優衣がしゃがんで撫でると、ヴァイスはほっとしたように鼻を鳴らし、優衣の足元にちょこんと座った。
暖かな風が二人を包み込む。
ヴァイスにとって、この日見た芝生の匂いも、水辺のきらめきも、カルガモの羽音も——
全部が、初めての宝物になった。
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