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小惑星群の盛り合わせ  作者: 月卜鞠
彗星のカナッペ
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誤字とAI

 私は文筆家だ。

 自分で言うのもはばかられるが、結構いい文章を書く。

 実際、熱心な読者を幾人か持っていて、ネットの場で発表すると、毎度評価のコメントを頂く。有象無象とは一線を画す筆力があるのだ。

 しかし、自分で認めるところの大きな悪癖があるせいで、まだ世に知られるような評価は得られていない。

 その悪癖とは、誤字である。

 私はタイピングで文章を入力するのだが、どうしても気が早い分、「偉大」を「医大」とか、「人間」を「二年円」とか、ミスしてしまう。

 文章の見直しも怠っていないつもりであるが、やっぱりそこも気の早さ、あるいは早く文章を世に届けたいという心の熱さが仇を為すのか、見落としてしまう。

 そうして、後から誤字に気づき、ひっそりと訂正するのだ。

 よろしくない、よろしくない。文章をネットに放った瞬間こそ、最も人の目につくのであるから、初期状態の誤字が知らず知らずの内に大きな幻滅を買っていて、得られるはずだった評価を失っていることもあるだろう。だから私はまだ、名文筆家として評価されていないのだ。

 どうしたものか……と悩んでいたのだけど、最近、画期的な改善策を見つけた。

 それこそ、AIであった。


 AIは良い。見落としを生んでしまう私の目と違って、無機質に、徹底的に、全ての文字に目を通してくれる。

 そして最近のAIはよくできたもので、文章の流れも汲んでくれる。「医大」も不自然な熟語じゃないが、いいやこの文脈であれば「偉大」だろうと、そういうところまで判断して教えてくれる。

 AIを見つけて以来、私の誤字癖は劇的に改善した。手順は簡単、AIが「この文章のどこにも誤字は見つかりませんでした」というまで、チェックと訂正を繰り返すのだ。

 完成した瑕疵のない文章を見て、私の気持ちも晴れ晴れとした。これで読者につまずきのない読書体験を届けられる。AIを感性的な面でも全面的に信頼したわけじゃなくとも、彼に評価を行わせると「著者の熱い想いが込められた、素晴らしい文章です」とコメントを返してくれる。

 いよいよ、私が正当な評価を受ける日も近くなっただろう。そうして私が文筆に込めた信念が、もっと世に広まればいいと思う。

 今日も私は、文章をネットに投稿した。


『偉大なるヒエロ・グリフト神を信奉しないものは人間に非ず。異教徒は死後、地獄で永遠の炎に焼かれるものであり……』

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