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3:もしかしてこれ古い?


「……なぁ田中。なんで私入学式に来てんの? 学校行事どころか授業も全部免除されてたよね、私。」


「えぇ。ですがやはりイスズさんも在校生ですし、先達として後輩たちを導いて欲しいと思いまして。」


「そう言うのって普通、他の高3がやる仕事でしょ。」



今の私、高3ではあるけど、実質高9だよ? 6留しているわけだし。


なんかやって来てたらしい侵略宇宙人を寝ぼけながら消し飛ばした次の朝。急に田中に叩き起こされたと思えば、やって来たのは私が在学する高校。その一室だ。魔法少女一人一人に渡される個人用の部室みたいなとこだね。私は全然使ってないからパイプ椅子しかないけど。


既に9年目に突入した高校生活だけど一応身分が高校生、ここに連れてこられるぐらいは別にいいんだけどさ……。気が付いたら入学式のプログラムを渡され、そこの『在校生代表』として私の名前が刻まれていたわけなんですよ。



「……逃げて良い?」


「ご勘弁を。」



軽く聞いてみれば、眼鏡を直しながらそう返してくる田中管理官。


いや、ね? 確かに私が入学したせいで色々改革されて、魔法少女向け高校みたいになってるけどさ。それ以外の一般の子も進学してるんだよ? 変なの入ってこないようガチガチに固めてはいるけど、一般人いるんだよ? そんな子たちの前に出て在校生代表としてスピーチしろと?


死ぬぞ? 羞恥で。


この前求められたから仕方なく駅前でファンサしてた時高校生に『小学生の頃からずっと応援……、アレ?』とか言われて心臓止まりかけたからな? 新入生全員にそんな顔向けられたらほんとに死ぬぞ私。というか年齢的に幼稚園児から応援し続けてた子たちの前に“在校生”として前に出るんだぞ? もう羞恥で舌噛み切って死ぬぞ私。



「その程度じゃ死なないでしょう貴女。後死んだら日本どころかこの星が終わりますので耐えてください。一応、しっかりとした“お仕事”に分類されるため、頑張って頂ければ。」


「“上”にでも要請されたの? まぁ任されたのならやるけどさ……。他にも魔法少女何人かいたでしょう? それこそあのW人間バットにでもやらせたらいいじゃん。高2だけど籍はここに入れてあったはずだし。」


「いまだ精神病院に通院中なお二人ですし、国籍こそ日本になりましたが元スパイですので……。」



まぁ確かにそうか。


イヤでも他に何人かいたでしょ今年の高3に? 昔私を超える魔法少女になるって喧嘩吹っ掛けて来たのに一回殴ったら三下みたいになっちゃった子とか、責任感強すぎて常に腹痛と戦ってる子とか、ひやむぎ好きすぎて毎秒口に放り込んでくる子とか。


……いや最後の奴は入学式がひやむぎ大試食会になるから除外として、前者二人はまだ何とか出来るでしょうに。



「皆さん経験のある方々ですし、現在他の案件に駆り出されているそうです。」


「あー、仕事かぁ。ならまぁしかないかぁ……。でも嫌なものはやだぁ! や! や! イスズちゃんやりたくないのッ!」


「嘆いても現状は変わらないかと。あぁそれと、今日入学為される新魔法少女『桃園マシロ』の付き添いとして、西管理官も保護者の一人として出席されるそうです。式の後にはなりますが、旧交を温める時間も……。」


「ッッッッッ!!!!!」


「うわ凄い顔してる。」



どんな顔して会えばいいのさッ! こっち6留高校生ッ! あっち社会人でしかも管理官っていう超エリート官僚様ッ! なんかもう、ちゅらいッ! ちゅらいの!!! あ~~!!!!! 魔法少女になんかなりやがった中1の頃の私ぶっ殺してぇ!!!!!


おい田中! なんか良い感じでタイムマシン用意しろッ! 帰る! 過去にッ!!!



「そういうと思いまして、事前に関連研究の破棄が国連で全会一致で可決され、先月すべてのデータが消去されています。」


「は?????」


「いやだって貴女いなかったら人類数えきれないほど滅亡してますし、寝ぼけながら消し飛ばしてましたけど昨夜の規模もすごかったんですからね……?」



そ、そうなの? ……いやちょっと待てッ!


表向きは一応仲良くやってくれてるアメリカちゃんはともかく、中国やロシアもゴーサイン出したのッ!? 私らもっかい冷戦みたいな状況になってんのに!? そこだけ仲良く出来たの!?!?!? は????? だったらもう喧嘩せずにウチにスパイ送りこんでくるの辞めろッ!!!


……あ、でも。W人間バットちゃんたちみたいに見た目だけ良い子は別にウェルカムかも。“教育”したら仲間になってくれるかもだし。



「止められませんので別にいいですが、事前報告だけはお願いしますね。本当に。新しく入って来た魔法少女に仕事割り振った次の日に長期入院とか、事務官が発狂しますので。」


「私みたいにこの年でフリフリきゃぴきゃぴ魔法少女するのと、どっちがいいか聞いてあげて♡」


「……まだ仕事で発狂する方が精神的にいいかもしれませんね。」


「解るでしょ、私の気持ち。だったら引退させて♡」


「駄目です。」



はぁ、まぁ実際、魔力使えなくなるまで現役張らなきゃってのは解ってるんですよ。


未だ私達は、『根本的な解決策』に辿り着いていない。魔力への適性がある子を妖精の力を借りてより活性化し巨悪に立ち向かう『魔法少女』っていう存在は産まれたけど、魔物とか怪獣とか秘密結社とか宇宙人。こいつらみたいな『悪』に対する解決策は一切上がってきていないのだ。


一応何度か大本叩き潰すために遠征して目に入るもの全てを殴り飛ばすとかもやってみたんだけど、数か月後にはなんか元に戻ってるんだよね。



「少なくとも私レベルの子が生まれるまで待つしかないんだろうけど……。いるのかなぁ?」



なんか一回ウチの研究者の人たちと、アメリカちゃんの人たち共同で私の体調べようって話になって協力したことがあったのよ。“作れる”んじゃないかって。


でも結果は『なんもわからん』だったらしいんだよね。意味が解らな過ぎて『こんなもの科学と人類への冒涜だッ!』とかいいながら身投げした人を地上でキャッチしたりしたし、みんな発狂し始めて研究ストップしたのよ。


ちなみになんか潜在敵国のお隣さんがどっかから情報引っ張って来て、勝手に研究進めた結果、全員発狂して熱狂的なイスズちゃんファンに。なんか脱走して日本に亡命してきたから抗議されたって話聞いたけど。どこまで本当なんだろ?



「……本当に人間なんですかイスズさん?」


「…………DNA的にはそうらしい。両親はちょっとアレだけど普通の人間だし。」


「なんで自分でも不安になってるんですか……? まぁいいです。とにかくそろそろ式の方が始まりますので、移動の方を。」


「まじかるまじかる。んじゃまぁいい感じに感涙スピーチでもかましますかねぇ。」








◇◆◇◆◇








私の名前は桃園マシロ。今日からこの白羽ヶ丘高等学園でピッカピカの高校一年生になる魔法少女です!


……そう張り切ってみましたけど、実はまだ変身したことないんですけどね?


元々私は、関東のとっても田舎な所に住んでいました。建物も全然なくて、大体田んぼか畑ぐらい。たまに見かけるお家と、人よりも多い動物さんと一緒に過ごしていた人間です。正直、今日年まではお父さんやお母さん、お爺ちゃんお婆ちゃんと一緒に野生動物って皮を被った害獣たちと格闘しながら過ごしていくのかなぁって思ってたんですけど……。


なんか魔法少女になっちゃったんですよね、はい。



(嫌だったプか?)


(あ、ううん! 色々びっくりしただけ!)



念話っていう簡単な魔法で私のパートナーであるプルポにそう返します。


いや本当に、急な話だったんです。


元々小学校と中学は、運よく村の中に後者があったのでそこで先生たちと1対1。日によっては先生の方が多いような授業を受けてました。でも高校からの範囲はそこで教えられないってことになって、ちょっと町の方の高校に通うことに。それで色々書類の提出や、検査を受けたんですが……。


なんとそこで私が魔力を持っていることが判明。そこからあれよあれよと色んな出来事があって、気が付いたらプルポと一緒にこの白羽ヶ丘高等学園に通うことになったんです!



(スタートが高校生からだから3年しか魔法少女は出来ないらしいし、同期の子は中学の頃からずっと頑張ってきた子もいるらしい。色々不安だけど、折角魔法少女に成れたんです。西さんにはあぁ言われちゃったけど、憧れのあの人みたいに……。)



そんなことを考えながら、プルポと一緒に参加した入学式。


お友達沢山出来ると良いな、魔法少女の人と仲よくできると良いな、テレビの向こう側の人だったけどイスズちゃんってどんな人なのかな。


色んな事を考えながら、意気揚々と参加したんです。私のお膝に乗るプルポも、初めて見るものに眼を輝かせながら。二人で楽しく新しい始まりを待ってたんです。


なのに……。



「ギャーハッハ! この白羽ヶ丘高等学園の入学式は、悪魔帝国一の怪人! ジャック・ウコッガ様が占拠してやったギャハッ! 貴様ら新入生には青春キラキラ高校生活ではなくッ! 悪魔帝国に仕える兵士として再教育してやるでギャハ!」



((す、スクールハイジャックされてるぅぅぅ!!!!!))



初日ッ! 初日からッ!? なんで~~!?!?



「おーっと。今ここで動くのは感心しないギャハな。まずはよーっく周囲を見ることをお勧めするギャハ。」



そう言うのは、明らかに怪人みたいな男の人。


その言葉でようやく気が付きましたが、何故か私の隣に座ってる人たちが懐に手を入れており、その中には明らかに学生が持っちゃいけない様な黒く光るものが握られています。なんかくッ! って顔しながらその状態で静止してますけど、明らかに怪人さんが止めてなければ即座に引き抜いて撃ち始めてそうな状況です。


……あ、あれ? ここ高校だよね? なんで同級生が銃持ってるんですか?


若干その事実を受け止め切れないまま怪人さんの言う通り周囲を見てみれば、いつの間にか黒タイツのよく解らない人たちが、この入学式会場である体育館にびっしり。全員が武器を持っていますし、何人かの先生たちが人質になっちゃってます。


なるほど、確かにこのまま戦い出したら犠牲が出ちゃいますね! ……あれ、不味くないですか???



「そうギャハ! しかも、この学校に幾つか爆弾を仕掛けさせてもらったギャハ! 事前調査により今この時間帯に学校にいる魔法少女は新入生の二人だけッ! そしてその二人はこの体育館にいるギャハッ! いや~、この計画の素晴らしさにはホレボレするギャハね! このまま魔法少女2人を基地に持ち帰り、洗脳してしまえばギャハの評価はうなぎ登りっ! ギャーハッハッ!」



ば、爆弾!? 洗脳!? あと私ともう一人しか魔法少女がいなくて、その二人ともここにいるの!?


え、えっと。たぶんこれ変な動きしたら爆弾を起動しちゃうし、人質も殺しちゃうっていう脅しだよね!? ど、どうしようプルポ! 何、何したらいいの私!? そ、そうだ! 確か同じ学年だけど、私寄り先輩な魔法少女な人がここにいるんだよね! その人に指示を貰えば何か……、って! 私その人の顔も名前も知らないッ! 今日ご挨拶させてもらう予定だったしーッ!!!



(プルポも解んないっプー!!!)



二人して心の中でえんえん泣きながら叫び声をあげた瞬間。カンっと床に打ち付けられる高い音。思わず全員が、その方向に眼を向けた瞬間。



「あ~~~、うん。そういうのね。まじまるまじかる。いや先に言えよ田中。」


「未確定情報でしたので。ともかく、お願いします。」


「あいあい、んじゃ仕事しますか。」



青い線が、私達の視界を彩ります。


たぶん戦闘員と呼ばれるような黒タイツの人たちが一瞬のうちに、同時にくの字に曲がり、消失。それを表すように動き回っているであろう“彼女”の動きが青い線になって私達の鼓膜に焼き付き、瞬きをした瞬間。体育館の壇上に大量の戦闘員さんたちの山に、お顔が風船みたいになったギャハギャハ怪人がぽたり。


その体には大量の爆弾らしきものが結び付けられていました。



「あー、えっと。ブラックホールってどう作るんだっけ……。まぁいいや。適当に圧縮して、ぽいっと。」



なんかすっごく物騒なことを“彼女”が言った瞬間。魔法少女初心者未満な私でも理解できる規格外の魔力があの人の掌の上に集まり、全てを飲み込むような黒の球体が出来上がります。


“彼女”が何でもない様にそれを怪人さんたちの山に投げ込んでみれば、全身をメキメキとヤバい音を出しながら吸い込まれていく悪い人たち。なんか最後の方、頭とか体とか弾けて赤いのが飛び散ってた気がしますけど……。い、イチゴジャムですよね。うん。そうにちがいない。


気が付けば、スクールジャックされていたなんか嘘のように静かになった体育館。まるですべてが余興であったかのように壇上に“彼女”。変身前の『マジカル☆イスズちゃん』が上り、マイクを手に持ちました。



「はーい後輩ちゃんたち。みんな大好き『マジカル☆イスズちゃん』こと蒼崎イスズでっす。怪我人いないかなー? いない? なら良かった。」



私たちを軽く見渡して、何もないことを満足そうに頷くイスズちゃん。何故か私と一瞬だけ目が合った気がするけど。気のせい……、だよね?



「それでは入学式を始めさせてもらう……、のッ! はずでしたがッ! 色々あり過ぎたの一旦中止して、ビンゴ大会を始めますッ! 1等賞は現金10億……、はウチの管理官がNG出したので最新ゲーム機詰め合わせぐらいにしておこっか。あそれと私のプレミアグッズも景品にしちゃうから頑張ってねー。」



ん? ビンゴ???


なんでビンゴ始まってるんですか……?????




〇ビンゴの結果


頭が宇宙猫になったまま桃園マシロが一抜けして最新ゲームハード(ソフト付き)を手に入れた。家に帰るまでずっと宇宙猫だったらしい。


なおイスズは一瞬『ここで「今から殺し合いをしてもらいます」とか言ったら面白いかな』と考えていたが、田中管理官が滅茶苦茶睨んできたので適当に持っていたビンゴ大会を勝手に始めた。


いやだって大人数で楽しめて、さっきの襲撃をトラウマからコメディに落すには色々やらかした方がいいかなぁって。魔法少女いたけど新人に任せるのはちょっと酷だし、一般人沢山いたでしょう? なら誰かが道化になった方がいいかなぁって。あ、景品だけど魔法で収納空間作ってるからそこから引っ張り出して用意したよ?



〇タイムマシンや過去改変に関して


魔法という非科学的ながら一部理論によって構築できる存在なため、各国で様々な研究が進められている。しかしながら時間系、特に過去に戻る研究に関しては日本国がもう超絶に頑張って『イスズが過去の自分を殺すと泣き喚いてる映像』をばら撒き外交戦を繰り広げた結果、“表向き”にはタイムマシン系列の研究が全て廃棄されている。


なお時間を操る魔法少女も希少ながら何人か存在しており、時空間にて日夜歴史を変えようとする時間犯罪者と戦い続けている。一番大変な仕事は、たまに『やってる?』とか言いながら空間をぶち抜いて救援に来てくれるイスズが勝手に過去に戻らないよう全力で押しとどめること。


イスズが魔法少女にならなかった絶望と消滅の世界線を知っているが故に、この件に関しては国籍など関係なしに全員が『過去に戻るんだったら私たちの首を取ってからにしてくださいッ! というか過去に戻るならもう自分で首を落しますッ! それで貴女が止まってくれるのならッ!』と言い切る程に覚悟が決まっている。





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