隠された記憶と少女の苦悩
この小説の作者の律です。このサイトで小説を書くのは初めてで、おかしな部分もあると思いますが、少しでも皆さんに興味をもっていただけたら嬉しいです。
律
最初は自分でも気にとめなかった。
「いいよ。私、そういうの食べないから」
差し出された白玉あんみつのカップを、手をふって断った。すると玲奈は目を丸くしてこう言った。
「どうしたの急に。奏らしくない。前はあんなにおいしそうに食べてたのに」
「なら、どうしてそんな泣きそうな顔してるの?」
次第に、何か大切なことを忘れているんじゃないかって、疑い出した。
下条奏。19歳で大学1年。高校生からの友人である木下玲奈とは、毎日食堂でお昼を食べる仲。他には、会社員の父親とカフェ経営をしている母がいて・・・。
なのに、ここ最近何か大切なことを忘れているような気がする。先程の玲奈に指摘された白玉あんみつのように、指摘されないと忘れていたことにも気づかない。そんなもやもやとした物。
「それってあたしでもよくあるよ。時間がたつと些細なことは忘れちゃうって奴。だからそんな気に病まなくても・・・」
食堂のカレーライスを食べながら玲奈は言う。デザートも食べようって言い出して私に白玉あんみつをすすめておいて、自分は何も買わなかったらしい。
「でも、他にも色々あって・・・。音楽が嫌いだったり、川が嫌いだったりとか。前は全然そんなことなかったのにって、周りに驚かれて」
「どうして嫌いになったのか、理由が自分でもわからないと?」
玲奈の質問に私は黙ってうなずく。
「病院に行っても、特に異常はないって言われて」
「じゃあ、天びん屋さんに聞いてみたら?うわさじゃ基本は無料で、料金がかかっても100円ですむみたいだし」
なんだか変な名前が聞こえてきた。内容から判断してどこか胡散臭いイメージ。そんな私の表情をよみとったのか、玲奈はさらに説明した。
「右手に木彫りの小さな天びんを持ってる占い屋というか相談屋さん。どこからともなく現れて、悩みを聞いて場合によっては解決してくれる人。あくまで都市伝説みたいな人だから、本当にいるのか知らないけど」
いつか会ったらその人に相談してみなよ。空になったカレー皿の前で、玲奈は笑った。
この話はいくつかに分けて投稿しようと思っています。皆さん、少しでもお楽しみいただけましたか?感想や意見など、何かしらコメントなどをよせていただけると嬉しいです。ここまで読んでいただいて、本当に感謝の思いでいっぱいです。ありがとうございました。
律






