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ムーンブレス~転生チート令嬢は無意識に聖女道をゆく~  作者: のりすけ
エリザベス商会編
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01.戦闘訓練とおっさん的下着論



お爺様ことカムイ・ウォーリア様を先生に迎えての戦闘訓練が始まった。初日の体力テストから始まり、今はマイルヤラットという、ネズミみたいな無害な魔物を捕まえる訓練だ。これで体力と瞬発力を鍛えるそうだ。


しかし、これがまた大変なのである。マイルヤラットは動きが機敏で中々捕まえることが出来ず、ひたすら追いかけっこしている状態なのだ。客観的に見て、目がクリクリの可愛らしいネズミのお尻を追いかけている姿は滑稽だろうな、と思ってしまう。


訓練の初めに体の使い方や呼吸法を教わった。走る時の体の持っていき方や手の振り方は短距離や長距離でも変わってくる。どこの筋肉を意識するとか、どう走ると楽に走れるとか。体に無駄なく最大限の効果をもたらす方法に舌を巻いた。


その方法を復習しながら、追いかけっこしているからか、そこまで息が上がることなく、疲れも酷くはない。寧ろ、疲れが心地よく感じる。


初めは「もっと肘を曲げろー!」とか「呼吸が乱れている!」とかアドバイスをくれていたカムイだったが、エリザが慣れるにつれて空き時間にユキと組手をしたり、武器を使ったバトルと繰り広げている。


今回に至っては、エリザのことは完全放置で、ようやく捕まえたマイルヤラットを抱っこして戻ってきてもユキとのバトルは続いていた。しばらくその様子を眺めていたエリザは「あれ!?これ誰の戦闘訓練だっけ?」と一瞬考えてしまうほどであった。


そして、休憩の合間に剣の勉強。カムイも闇属性があり、アイテムボックス持ちだ。そんなカムイはアイテムボックスから多種多様な剣を取り出す。大剣、双剣、短剣、サーベルやコラのような変わった形の剣など数十種出てきた。それらを見ながら、それぞれの長所と短所、剣の成り立ち、名称など剣にまつわる座学を教えてくれた。


このように進んでいく戦闘訓練。まだ戦闘訓練を初めて1週間しか経っていないのだが、問題点が出てきた。


その問題点とは服装である。今日のエリザの服装は膝下の丈のワンピースなのだ。これでもエリザが持っている服の中で、一番動きやすい服ではある。そして、下着としてドロワーズを履いている。動きやすい服と言っても装飾付いているワンピースは明らかに運動に不向きだ。それに土で汚れが酷い。ジャージか、せめてズボンが欲しいところだ。


この世界はズボンは男が履くものと定着している。これには理由がある。


魔法師は男女共になることが出来る。しかし、騎士や軍人は現在どの国においても男性しかいないのだ。それは法で定まっているわけではないのだが、騎士や軍人は武器を使うため、どうしても腕力が必要になってくる。そうなると、男女の身体的差が顕著に出てしまうので、騎士や軍人には女性は向かないと思われているようだ。


「女性は魔法師しかならないので、体を鍛える必要がない=ズボンは必要ない」となるのである。王妃や王女なら護身術ぐらいは習うのだろうが……。


最も忌々しき事態なのは、このドロワーズである。まあ、この世界の下着なのだが。膝丈まであるドロワーズはゴワつくし、暑いし、動きにくい。さらに汗をかくと余計に動きにくくなる。何より可愛くない!ドロワーズなんて裾のレースやリボンのデザインが少し違うだけで、全部がほぼ一緒なのだ。


エリザにとって、下着というのは、男女の関係であれこれする時に、お互いの気分を盛り上げるための材料の一つだと思っている。もしエリザが男で相手がドロワーズ履いていたら絶対に萎える自信がある。


男女関係以外でも、例えば、パンチラとかブラチラは可愛いorセクシーな下着の方が見る側としてお得だろう。それに見えそうで見えないその下着の色は?柄は?そう言ったチラリズムや妄想はある意味男のロマンと言っても過言ではない。この国の女性の服装はカッチリとしているのでノーチラリなのが非常に残念である。


それに女性としても、お気に入りの下着を着けるのは非常にテンションが上がるものだ。やはり女性は服の下までオシャレでないと。見えないからいい、と言うわけではない。


そんなエリザのおっさん的下着論なのだが、要は早く脱ドロワーズしたいのだ。可愛い下着を作りたい。履きたい。この1週間でその気持ちは強くなってしまった。


その気持ちを暴走させたエリザは、アーニャにスカートをめくって下着見せて、とお願いをしたら顔を真っ赤にして怒られてしまった。


(だって、大人のドロワーズを見たかったんだもん。)


毎日の湯浴みは、服を着た侍女に至れり尽くせりである。だかこそ、大人の下着を見たことがなかった。その後、アーニャにはちゃんと理由を説明はした。そうしたらアーニャから意外な回答が返ってきた。


「お嬢様。でしたら、ご自分で商会を作ってみたらどうですか?」

「商会ってそんな簡単に作れるものなの?」

「ええ。商会を作るの自体は簡単です。ただ、維持費がかかるのと、売れる商品を定期的に売り出す必要があるので、商会の数は多くないのです」


商業ギルドに入れば商人となり、単独で商品を売る事が出来る。ほとんどの店が商会を作らずに単独での商売をしている。


商会と言うのは、同じ意志を持った商人達の集合体みたいなものだ。そして、商会の代表と言うのは商人達のトップに立ち、運営や事業を推進し、指示する人である。その代表となる者は年間金貨3枚を商会維持費として商業ギルドに払わないといけない。


この世界のお金はわかりやすくすると以下の通りだ。


銅貨=10円

大銅貨=100円

銀貨=1000円

大銀貨=10000円

金貨=100000円

大金貨=1000000円

白金貨=10000000円


物価は前世の日本より非常に安い。ロールパンは銅貨2枚、リンゴは銅貨3枚、民宿では1泊銀貨1~2枚が一般的な値段となっている。


金貨3枚は日本円にして30万円であるが、物価が安いこの世界にしたら高額だ。高額なお金を払ってまで商会に入る理由として、商業ギルド内の規則や制限が免除になる。売る商品をギルドに登録することや商売する場所の規定などが免除になる。


要するに、面倒な申請がなくなり、自由な商売が出来るようになる。その代わりに何かあれば商会の代表が責任を負う事になる。


あと商会の利点はネームバリューだ。いわゆるブランド力と言うやつである。有名な商会はそれだけで客が付く。


商会の代表自体は商売しないのであれば、商業ギルドに属さなくてもいい。つまり申請すれば誰でもなれるのだ。


「商会の責任者は物を作る必要も、売り出す必要もありません。仕事は、口出しする事とお金の管理です」

「私に出来るかしら?お金なんてトラブルの元よ?」

「お金の管理は代理を立てる事が出来ますよ。しかし、商会の代表なのですから、どのぐらいの収入や出費があり、何がどれだけの利益を得たのかはしっかりと把握しておかなくてはなりませんが」


(そんなことが私に出来るのだろうか。でも、可愛い下着は近いうちに作るつもりだし、出来れば皆にもつけてほしい。)


そうなると、やはり「売る」という選択肢になるだろう。それが早いか遅いかの違いになるだけか。


「大丈夫ですよ。祈念式で作られたドレスも今にはないデザインで素敵でしたし、パンや料理においてもお嬢様は素晴らしいです。お嬢様の商会なら必ず有名な商会になりますよ」

「ありがとう。一度お母様に相談してみるわ」


もし商会を立ち上げられるとするなら、エリザはファッションや美容系に力を入れたい。そうなると、大人の協力は必然になるだろう。それにエリザのしたい事は沢山ある。したい事をしようと思うとやはり金がいる。


(自分で好きなように使えるお金は欲しいよね。)


エリザはその後、何時間も人知れず妄想にふけっていた。





※※※





翌日、早々に母であるエレインに相談した。エレインもエリザが魔法を既に使える事は知っているし、カムイに戦闘訓練を受けている事も知っている。戦闘訓練にワンピースやドロワーズが不向きだと説明すると理解してくれた。


話の流れで女性の美についてエリザは熱く語る。エレインも可愛いものや貴族のトレンドについて詳しく、大興奮で話に乗ってくれた。やはり、お洒落や美についてはこの世界の女性は気にするそうで、エリザは胸を撫で下ろした。この世界の女性が美に対して無頓着なら、商会を立ち上げても利益は見込めない。


逆に言えば、美に対して意識しているならいくらでもやりようがある。前世の知識があれば、商会も大きく出来るだろう。


結果、エレインから商会もサポートするから、好きにやって良いと了承を貰えた。しかも、信頼できる経理を担当してくれる人も準備してくれるそうだ。


そんなやり取りがあった事もあり、エリザはルンルン気分で父の執務室で書類整理をしていると、エリザに面会希望をしている人がいると連絡が入った。パンの事かな、と二つ返事で了承し、応接間に行くと子供が2人とその両親がいた。


よく見るとその子供は、この間のエリザの騒動に巻き込まれて、助けた子供達だった。


子供は姉のレベッカと弟のルークと言う名前で、それぞれ7歳と4歳の仲がいい姉弟(きょうだい)だ。父親のヒドイドルが染物業を、母親のジェンは針子をしている商人一家らしい。


子供達はあの日、朝早くからその日仕事で使う染料となる花を摘みに行った。その帰りに爆音が聞こえたので、何かと思い、様子を見に行った。そして、その時にその場にいた魔人に襲われた。


助けてくれた子にお礼をしたいと思っていたが、一向に見つからない。街で聞き込みをしていたら、領主様の娘が水色の髪をしていると聞いてここに来たと話す。


「エリザ様。あなたがいなければ子供達はここにはおりません。子供達を助けて頂きありがとうございます」


ヒドイドルとジェンが頭を下げる。


「頭を上げてください。気になさらないで下さいませ。私は人として当たり前の事をしたまでですわ。本当に2人が無事で良かった」


エリザのせいで2人が巻き込まれたのだから、こちらの方が謝罪したい。親の話を聞く限り、エリザの魔法使用云々や誘拐の記憶は曖昧のようで、そんな事は言えるはずもない。パニックによる記憶の欠如か、もしくはカムイが何かしら細工したのかは定かではない。


「エリザ様。私共を助けて下さりありがとうございます。あの時のエリザ様は本当にかっこよかったです。これ、お礼にと手作りしたのですが、良ければ受け取って貰えませんか?」


渡された物を見ると、水色のポーチでレースや木の実で可愛く飾り付けされている。


「可愛い。ありがとうございます。ありがたく頂戴いたしますわ」

「エリザお姉ちゃん。助けてくれてありがとう」

「どういたしまして」


エリザは再度貰ったポーチを見る。凄く丁寧な仕上がりで、売り物にも出来そうだ。


(ん?この素材ってもしかして……。)


「エリザ様が宜しければ、いつでも私たちの工房をご利用下さい。エリザ様の依頼があれば、何よりも早く丁寧に仕上げさせて頂きます。勿論お代はいりません。それが私たちに出来る最上の気持ちです」

「ありがとうございます。あの……1つお伺いしたいのですが、この布は吸水が良い素材ではありませんか?」

「はい。左様でございます」


素材の特徴を的確に指摘したエリザに、ヒドイドルとジェンは驚きの表情を見せる。


「この肌触り……早速で悪いのですが、いくつか作って欲しい商品がありますの。あと、この生地以外にも通気性が良くて、水分の吸湿性や蒸散性に優れた生地はございますか?」

「ございますよ。しかし、エリザ様はよく知っていますね」


だって、この生地は前世で馴染みがある素材で出来ていたのだから。


「では、この布と先程話した布でお願い致します」


エリザは欲しい物を事細かに説明し、図面を書く。初めて見る形に戸惑っていたが、これを履いて運動したい事を話すと納得してくれた。形はシンプルだし、今回は急ぎで欲しいので、刺繍などの模様は一切なしで依頼した。すると、なんと2日で仕上げてくれるそうだ。


本当はドレスを依頼している人に頼もうと思っていた。ドレス作成もあるし、他のお客の依頼もあるだろうから、下手したら半年ぐらいかかるんじゃないかと思っていた。こんなところで良い商人に巡り会うとは。身を呈して守った事で生まれた出会いにエリザは感謝した。



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