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妖光  作者: 村上蘭
9/45

始まりの予兆




 八

 




  もう既に、蛍の淡い光は無くなって漆黒の闇の中


 に水面を滑るように鬼火は、近づいて来ていた。最


 初は炎しか見えなかったものが、近づくにつれて人


 影がぼんやりとだが見えている。村上蘭の3mほど


 手前で、それは止まった。




 「河童?」




  正に、それは河童に見えた。ざんばら髪の、頭頂


 部にはお皿のようにそこだけ毛髪が無く暗くてあま


 りよく判別できないが、身長は蘭よりは低く180cm


 あるか無しくらいだろう。この手の妖怪は、普通こ


 ちらが敵意を見せなければそのうち消えてしまうも


 のなのだが、そいつはジワリジワリと間合いを詰め


 るように近づいて来た。相手が近づくにつれて、敵


 意とも殺意とも取れる妖気を蘭は感じていた。既に


 いつ襲われても良いように防衛線を張って手の平に


 念を集中させて霊玉を作った。霊玉とは、体内の霊


 力の一部を丸い玉に変えそれで相手を攻撃する銃で


 言えば火薬を詰めた弾のようなものである。相手を


 油断なく、凝視しながら右手の平には霊玉をいつで


 も投げられる様にしてはいるが、村上蘭の緊張感は


 マックスになろうとしていた。異様な、姿のそいつ


 と蘭はしばらく睨み合っていたが、蘭の右手の霊玉


 が時が経つに連れ大きくなり、光も強くなっていく


 のをまんじりともせず見ていた化け物は、少しづつ


 後退りしていつしか闇の中にその姿を消した。




 「やっと、退散したか」




  霊能力には、長けている村上蘭もこの時ばかりは


 さすがにホッとしていた。霊玉の威力は、あるとは


 信じているがそれでも効き目が無かったらどうしよ


 うかとも思っていたからだ。




 「下手したら、川に引き摺り込まれていたかもな懐


 中電灯を、拾いながら蘭はそう呟いていた。それに


 しても奴は何者だろうと考えたが緊張感から解放さ


 れた直後の所為か何も思いつかなかった。「明日、


 考えよう」と、家に続くコンクリートの階段を懐中


 電灯で照らし登って行った。川の方を振り返り用心


 しながら帰る村上蘭ではあった。




 「おはようございます」




 「ごめん下さい」




 「村上さーん」




  何だか、女性の賑やかな声で蘭は眼をさました。


 目覚まし時計を見ると時刻は、もう既に午前10時を


 過ぎている。実は、昨夜川から戻って家の周りの結


 界を結ぶ作業をしたので、寝床に入ったのは明け方


 近かった。それで、こんな時間まで寝過ごしていた


 のだ。玄関を、開けると麻美達三人がいて後ろには


 見知らぬ男性が立っていた。




 「申し訳ない、まだ越してきたばかりなのでこんな


 物しか無いけど良かったらどうぞ」




  取り敢えず、家に上がって貰った蘭は応接台に四


 人分のコーヒーを置いた。




 「じゃ、遠慮なく頂きます」




  言ったのは、麻美さんで他の三人もそれぞれに礼


 を言いながらコーヒーを飲みはじめた。一口飲んで


 から、山本さんは手提げの紙袋の中から、包装紙に


 包まれたお菓子を取り出し蘭の前に置いて言った。




「あの、これ良かったら受け取って下さい。この前の


 お礼です」




  三人の女性は、ほとんど同時に頭を下げてくれ顔


 を上げると麻美さんの首には、あの時上げたネック


 レスが見えていた。




「そんな、お礼なんて気を使わなくて良かったのに僕


 は当然の事をしただけだから、それより良くこの家


 が解りましたね」




  山本さんと、細田さん二人に目配せをすると麻美


 さんが僕に言った。




 「実は、あの翌日の朝に村上さんにお礼をと思って


 温泉センターのスタッフさんに村上さんの事を訪ね


 たら既にチェックアウトされた後で、どうしようと


 三人で言ってたらスタッフさんが迎えに来られた方


 をご存知で連絡を取って下さったんです。それで、


 この家のことが解ったと言う訳です」




  蘭は、腑に落ちた顔で言った。




 「そうだったんですね。それで、そちらの方は」




  麻美は、一気に喋って喉が渇いたのかコーヒー


 を一口飲んでから答えた。


 


 「すいません、紹介が遅れましたけどこちらは昨日


 ラフティングで、お世話になった佐久間さんです」




  佐久間と、紹介された当の本人はコーヒーを飲ん


 でる最中だったので少し焦った風でコーヒーカップ


 を置き蘭を見ながら軽く頭を下げた。




 「あ、どうも私は佐久間勇蔵と言います。球磨川で


 ラフティングのインストラクターやってます。今日


 は突然ですいません.よろしくお願いします」




  何をどうよろしくかは、解らない蘭だったが、

 

 返事は返した。




 「どうも、村上蘭と言います」




  補足になるが、蘭には霊能力の一環で相手のオー


 ラを感知する能力がある。初対面の場合このオーラ


 で相手の感性がある程度解る例の三人の女性達は何


 の翳りもない明るいオレンジ色なのだが紹介された


 佐久間のオーラを見た蘭は、感心したような顔をし


 て言った。




 「佐久間さん、あなた霊感あるでしょう。今日来ら


 れたのもそれ絡みですね」




  一瞬、ギョッとした顔になった佐久間だったが直


 ぐ冷静な顔に戻り言った。




 「流石ですね、彼女たちの話を聞いて村上さんがか

 

 なりの霊能力の持ち主だと察しは付いてましたが、


 こう早くも言い当てられるとは驚きです」




  ここまで、聞いていた山本さんが少し申し訳なさ


 そうな顔で話の途中に入って来た。




 「村上さん、ごめんなさい話が盛り上がってあの夜


 起こった事をつい喋ってしまったの」




  気のせいか、三人の中で細田さんが一番恐縮して


 いる風に蘭には見えた。




 「あ、その事なら大丈夫です。いつもの事ですから


 全然気にしていません。それよりも、単なる好奇心


 ですけど佐久間さんが、わざわざここまで来た訳が


 知りたいですね」




  あの時、麻美たちの話を聞いていた佐久間が村上


 蘭さんに合わせて貰えませんかと急に言い出したの


 だ。ビックリはしたのだが、当の村上さんにお礼も


 して無いし佐久間がどういう理由で、会いたいと言


 ったのか興味もあったので一緒に探す事なったと言


 う訳だった。その佐久間が、意を決したように話し


 出した。




 「村上さん、とても信じては貰えないとは思うんで


 すけど川で、不思議なものを見たんです」



 

  それを、聞いた蘭は一呼吸おいて言った。




 「佐久間さん、あなたも見たんでしょう。あの河童


 見たいな奴を」




  言われた佐久間は、蘭を再び驚きの眼で見るだけ


 で次の言葉が出なかった。そのかわりに、麻美が少


 しうんざりした顔で言った。




 「お化けの次は、妖怪ですか?」









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