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妖光  作者: 村上蘭
7/45

お喋りの功罪




 六




  一勝地に向かう、アクセスとしては電車を使うか


 陸路で車を利用して入るかのどちらかだが、車の場


 合八代市方面から通称人吉街道と呼ばれている国道


 219号線を利用するのだけど、人吉側からの場合


 でも例の温泉センターに行くには球磨川に掛かる一


 勝地橋を渡る必要がある。一勝地橋の欄干には昔な


 がらの球磨川下りを模したモニュメントが周りの風


 景と相まって風情を醸し出していた。橋を渡った先


 には消防署に駐在所それと診療所などの村の治安と


 か安全を支える施設が集中している。が、球磨村役


 場は橋を渡らず人吉街道を八代方面に走ると右側の


 見上げる様な山の頂上にあった。その役場内の、産


 業振興観光課で二人の職員がひそひそ声で何事かを


 話し合っていた。




 「それで、何ば見たって?」




 聞いたのは、産業振興課の課長の山下俊夫だった。




 「それが、そいつが言うには河童の様だったと」




  答えたのは、今年の四月産業振興課に配属されたばか


 りの遠崎賢治である。




 「はあ?河童てやバカなこつば言うな!そぎゃんと


 がおる訳なかろうが」


 


  言われた遠崎は、憮然とした表情で話を続けた。




 「でも、確かに居るのを見たらしいんすよ。夜中に


 川の中に立っていたって」




  山下課長は、そこまで聞いて今年やはり臨時職員


 で採用された中川景子に声を掛けた。




 「ゴメン、景子ちゃんお茶入れて貰いたかけど良か


 ろか」




  暫くして、景子ちゃんと呼ばれた女の子がお茶を


 運んで来ると山下課長の前に、お茶を置きながら聞


 いて来た。




 「何ですか?河童って」




  山下課長は、遠崎の顔を見て頭を軽く傾げると中


 川恵子に答えるともなく言った。




 「何でもない、遠崎それよりも今年の蛍はどうだ」




 「例年通り、大丈夫の様ですよ」




  遠崎は、友人から聞いた事を山下課長につい喋っ


 たのを少し後悔していた。でも、そんなに頭ごなし


 に否定しなくても良いじゃんと思って、少し不貞腐


 れた返事をした。自分でも、河童がいるなんて信じ


 てる訳じゃ無いけれど、何か得体の知れない物を友


 人が見たのは確かだと思っている。遠崎がそう考え


 るのは、友人が小学校からの幼馴染で意味もなく、


 人に嘘をつくような人間では無い事を誰よりも知っ


 ていたからである。




 「遠崎さん、はいお茶」




  言われて遠崎が、顔を上げると中川景子が好奇心


 丸出しの顔でお茶を置きながらながら見ていた。




 「遠崎さん、さっきの話しもしかしてラフティング


 のガイドやってるお友達から聞いたんですか、霊感


 の強いって言う人」




  中川景子が、興味津々と言う顔で聞いて来たが山


 下課長を見ると、こちらを睨んで早く仕事をしろと


 言わんばかりの顔をしていたので、景子の話しには


 乗らず入れて貰ったお茶を一気に飲み干した。




 「景子ちゃん、お茶ありがとね!じゃ課長ちょっと


 出て来ます。一勝地梨の生育の様子が気になります


 から」




  山下課長が解ったと言うように、頷いたので遠崎


 はそそくさと退散する様に観光課から出て行った。


 話の腰を折られた景子は、遠崎が帰って来たら話し


 の続きを聞こうと言う思いで見送っていた。




 「ワーッ」




 「マジ、怖い」




 「キャー」




  球磨川の、急流に翻弄されたオレンジ色のゴム

  

 ボートが波を受けて、バン!バンと跳ね上がりそ


 の度に歓声が上がり悲鳴が飛び交っていた。




 「麻美、もうダメ!無理、無理」




  ボートから、振り落とされまいと必死に掴みな


 がら叫んでいるのは細田真美だ。隣には、越田麻


 美が後ろには山本由香もいる。9人乗りの、ゴム

  

 ボートは満席でボートの前にはインストラクター


 だろうか、女性がヘルメットに救命胴衣も勇まし


 くパドルを自在に操っている。一番後ろに、控え


 ているのは日焼けした顔に、無精髭のリバーガイ


 ドがボートを安定させる為か身体を右に左に動か


 してパドルを漕いでいた。ラフティングは、全員


 で漕ぐのが基本だがやはり初心者には難しく、や


 っと慣れた頃には終了と言うパターンが多いゴム


 ボートは、激流の中を所々顔を出している岩を避


 けながら進んで、やがて流れの緩やかな場所に来


 るとボートを岸に寄せた。ここが、ラフティング


 コースのゴールになる。




 「怖かったね、マジ死ぬかと思った」




  細田真美が、興奮冷めやらぬ調子で喋っている。


 三人は、道路沿いの駐車帯に設置された仮設テン


 トの中の休憩所の椅子に座って休んでいたが、同


 乗の体験者達はそれぞれ球磨川を眺めながら話し


 たり、屈伸運動したりしてる者もいた。迎えのバ


 スが、来るまではここで待つことになるリバーガ


 イドの二人は、体験者全員に手分けして飲み物を


 配っていた。




 「ねえ、麻美、昨夜は寝られた?」




  濡れた服をタオルで拭きながら由香が聞いた。




 「あ、うん村上さんから貰ったネックレスのお陰


 かな?朝までグッスリ」




  由香は、麻美が身につけているネックレスに眼


 をやりながら話していた。




 「私は、逆に部屋のドアとか窓が気になっちゃっ


 て灯りを、消した後もしばらくは眠れなかったわ」




 「私も!」




  真美が、二人の話にいきなり割り込んできた。




 「真美あなたね、私の隣で大いびきを掻いてぐっ


 すり寝てたわよ。半分は、それで寝れなかったん


 だからね」




 「ウソ、マジで」




 「麻美と、由香の二人は真美のその言葉でプッと吹


 き出し大笑いした。そこに、リバーガイドの男性が


 タイミング良く飲み物を持って来てくれた。




 「お疲れさまです、喉が渇いたでしょう。これをど


 うぞ」




 「ありがとうございまーす」と、おどけた感じで最


 初に手を出したのは真美だった。




 「でも、一番疲れてるのはやっぱり麻美よね。昨日


 あんな事有ったばかりだからね」




 「真美、余計な事言わないの」




  由香が、真顔で怒って言った。困った子ね、そん


 な顔で麻美も真美を見ていた。




 「何か、あったんですか?」




  リバーガイドの、男性スタッフは悪気なく聞いて


 来た。




 「彼女、幽霊に取り憑かちゃって大騒ぎだったんで


 すよ」



  あっ、と思った時にはすでに遅く真美の悪びれな


 いお喋りは由香が止める間もなく始まっていた。




 「え、幽霊ですか?」




  麻美と、由香は顔を見合わせた。真美のKYなの


 は、今に始まった事じゃないが、話の中身は霊がら


 みなのでここで話す事では無いと思ったものの話の


 流れから結局昨夜の一部始終を、この男性スタッフ


 に話す羽目になってしまった。男性は名前を、佐久


 間勇蔵と名乗り麻美達も軽く自己紹介した。




 「えーっ、そんな風に彼女が変わってどう解決した


 んですか?」




  そこまで、話が進むと急に真美が我が意を得たり


 とばっかりにしゃしゃり出てきて言い放った。




 「実は、現れたんですよ」




 「誰が?」




  リバーガイドの、佐久間は興味津々で聞いて来


 た。真美は、ひと呼吸置いて喋った。




 「私達の救世主、霊能者の村上蘭さんです」




 「真美、それちょっと言い方がオーバー」




  由香が、呆れ顔で言った。そんな、噂話をされて

 

 るとは思いもよらず、村上蘭は一軒の家の前に立っ


 ていた。ボソッと溜息と共に言葉が出て来た。




 「これって・・・」







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