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妖光  作者: 村上蘭
42/45

惜別の朝







  四十一





  「シュ、シュ、シュー」




   SL人吉号が、蒸気機関の力強い音を響かせ


  て一勝地駅構内に停車した。




  「それじゃ、蘭さんお姉さんそれに皆さん色々


  お世話になりました」




   駅の構内には、麻美それに由香と真美が例の


  大きなキャリーバッグを携えて、列車の発車時


  刻を待っていた。停車時間は、9分間と意外と


  長いこの列車は観光用に運行されているので、


  駅構内での買い物時間も考慮されて居るらしい


  のだ。見送りには、村上蘭と晶の姉弟に中屋の


  叔母も来ていた。佐久間と、それに一勝地役場


  の二人組の遠崎賢二と中川景子は、蘭達に5分


  遅れでやってきた。




  「蘭さん、メール送っても良いですか?」




   真美が、人懐っこい顔で屈託なく言うと蘭は


  軽く頷いて見せた。




  「麻美ちゃん、はいこれ大した物は入ってない


  けど良かったら貰って頂戴」




   中屋の叔母が、コンビニのビニール袋に入っ


  たお菓子を麻美に渡した。




  「ありがとうございます。お世話に、なりっぱ


  なしで何か申し訳ないなあ。これは、汽車の中


  で頂きますね」




   麻美は、お菓子を中屋の叔母から貰うと軽く


  お辞儀をした。




  「折角、知り合ったのに残念ね。また、遊びに


  いらっしゃいね」




  「はい、是非」




   麻美が、笑顔で答えた。そんな叔母達の挨拶


  を横で聞きながら蘭は佐久間に声を掛けた。




  「佐久間さん、体調の方はどんなですか?」




   佐久間は、指で肩を揉むような仕草をしなが


  ら蘭に答えた。




  「ああ、もうずいぶん良いよ。でも意識が、戻


  った朝は酷かったけどね。体中傷だらけで、頭


  にはタンコブが出来ているし何でそうなったの


  か全く記憶に無いんだなこれが・・・」




   何とは無しに、蘭が姉の晶を見ると「私は、


  知らないわよ」とでも言いたげな顔で有らぬ方


  を見ていた。あの夜の、一部始終を見聞きして


  いる由香と真美は笑いを抑えていたが、とうと


  う堪えきれずに吹き出してしまった。




  「何、どうしたの何がそんなに可笑しいの?」




   記憶が、霊体に取り憑かれていたその一部分


  だけ抜け落ちている佐久間と麻美だったが、特


  に佐久間は球磨川で失踪して以来何も覚えてな


  いのだ。




  「ポーッ」




   蒸気機関車の、汽笛の音が構内に鳴り響き驚


  いて皆がそちらを振り向いた。




  「さあ、もう発車の時間よ三人さんは乗った乗


  った」




   追い立てる様に、晶が麻美たちを列車に乗せ


  ていた。佐久間は、まだ何か言いたそうだった


  が、話しはそこで途切れてしまった。




  「それじゃ、これでお別れですね。また会いま


  しょう」




   そう言い残して、麻美に由香そして真美たち


  は名残惜しそうに列車のタラップに足を乗せて


  いた。SL人吉号は、汽笛の音を響かせながら


  動き出し窓越しに、手を振っている麻美達を乗


  せた列車は、黒い煙を吐き出しながら一勝地駅


  の構内から段々と遠ざかって行った。その、力


  強い走りの蒸気機関車を暫く見ていた蘭達だっ


  たが完全に視界から消えた所で、それぞれの帰


  る場所に戻って行った。構内に、焼けた匂いの


  煙を少しだけ残し人影は見えなくなり元の誰も


  居ない無人駅に帰った。麻美達が、去った村は


  平静を取り戻しお盆の行事も終わる頃には、夏


  も終わりに近づき、姉の晶は熊本まで遥々来た


  のだからと蘭が東京に帰るまでのんびりすると


  言いだしまだ村に残っていた。そうして、時間


  は瞬く間に過ぎ蘭達が東京に戻る前日になった


  が、その日一勝地役場にある目的を持って訪れ


  た二人の人物がいた。






































  四十一





  「シュ、シュ、シュー」




   SL人吉号が、蒸気機関の力強い音を響かせ


  て一勝地駅構内に停車した。




  「それじゃ、蘭さんお姉さんそれに皆さん色々


  お世話になりました」




   駅の構内には、麻美それに由香と真美が例の


  大きなキャリーバッグを携えて、列車の発車時


  刻を待っていた。停車時間は、9分間と意外と


  長いこの列車は観光用に運行されているので、


  駅構内での買い物時間も考慮されて居るらしい


  のだ。見送りには、村上蘭と晶の姉弟に中屋の


  叔母も来ていた。佐久間と、それに一勝地役場


  の二人組の遠崎賢二と中川景子は、蘭達に5分


  遅れでやってきた。




  「蘭さん、メール送っても良いですか?」




   真美が、人懐っこい顔で屈託なく言うと蘭は


  軽く頷いて見せた。




  「麻美ちゃん、はいこれ大した物は入ってない


  けど良かったら貰って頂戴」




   中屋の叔母が、コンビニのビニール袋に入っ


  たお菓子を麻美に渡した。




  「ありがとうございます。お世話に、なりっぱ


  なしで何か申し訳ないなあ。これは、汽車の中


  で頂きますね」




   麻美は、お菓子を中屋の叔母から貰うと軽く


  お辞儀をした。




  「折角、知り合ったのに残念ね。また、遊びに


  いらっしゃいね」




  「はい、是非」




   麻美が、笑顔で答えた。そんな叔母達の挨拶


  を横で聞きながら蘭は佐久間に声を掛けた。




  「佐久間さん、体調の方はどんなですか?」




   佐久間は、指で肩を揉むような仕草をしなが


  ら蘭に答えた。




  「ああ、もうずいぶん良いよ。でも意識が、戻


  った朝は酷かったけどね。体中傷だらけで、頭


  にはタンコブが出来ているし何でそうなったの


  か全く記憶に無いんだなこれが・・・」




   何とは無しに、蘭が姉の晶を見ると「私は、


  知らないわよ」とでも言いたげな顔で有らぬ方


  を見ていた。あの夜の、一部始終を見聞きして


  いる由香と真美は笑いを抑えていたが、とうと


  う堪えきれずに吹き出してしまった。




  「何、どうしたの何がそんなに可笑しいの?」




   記憶が、霊体に取り憑かれていたその一部分


  だけ抜け落ちている佐久間と麻美だったが、特


  に佐久間は球磨川で失踪して以来何も覚えてな


  いのだ。




  「ポーッ」




   蒸気機関車の、汽笛の音が構内に鳴り響き驚


  いて皆がそちらを振り向いた。




  「さあ、もう発車の時間よ三人さんは乗った乗


  った」




   追い立てる様に、晶が麻美たちを列車に乗せ


  ていた。佐久間は、まだ何か言いたそうだった


  が、話しはそこで途切れてしまった。




  「それじゃ、これでお別れですね。また会いま


  しょう」




   そう言い残して、麻美に由香そして真美たち


  は名残惜しそうに列車のタラップに足を乗せて


  いた。SL人吉号は、汽笛の音を響かせながら


  動き出し窓越しに、手を振っている麻美達を乗


  せた列車は、黒い煙を吐き出しながら一勝地駅


  の構内から段々と遠ざかって行った。その、力


  強い走りの蒸気機関車を暫く見ていた蘭達だっ


  たが完全に視界から消えた所で、それぞれの帰


  る場所に戻って行った。構内に、焼けた匂いの


  煙を少しだけ残し人影は見えなくなり元の誰も


  居ない無人駅に帰った。麻美達が、去った村は


  平静を取り戻しお盆の行事も終わる頃には、夏


  も終わりに近づき、姉の晶は熊本まで遥々来た


  のだからと蘭が東京に帰るまでのんびりすると


  言いだしまだ村に残っていた。そうして、時間


  は瞬く間に過ぎ蘭達が東京に戻る前日になった


  が、その日一勝地役場にある目的を持って訪れ


  た二人の人物がいた。



































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