事の顛末 (2)
三十六
麻美の身体に、入り込んだ清乃の話は延々と
深夜まで続いた。どうやって、この村にたどり
着いたのか今は怨霊となり果てた武者との因縁
などを、事細かに話してくれた。(第十話、い
にしえの真実~第十七話、一つの帰結を参照)
話しが、源氏の武者との対決において相手の首
を父娘で斬り落とした所まで来た時に、蘭は我
慢出来ずに質問をした。
「麻美さん、じゃ無かった清乃さん今の話と全
く同じ内容の夢とも幻ともつかないものを、以
前柴立姫神社で気を失った時に見たんですけど
もしかして、それも貴女の仕業ですか?」
麻美?(紛らわしいので此処からは清乃とす
る)清乃は、蘭の質問に即座に反応した。
「その通りです。わたくしが、妖力を使ってそ
なたに見せました。
「何故、そんな事を・・・」
蘭の眼を、真っ直ぐ見て清乃は答えた。
「そなたには、有りのままの真実を知って欲し
かったのです。何故ならば、そなたはわたくし
の血脈ですから」
少なからず、そこにいる全員が驚いた。が、
只一人だけ今は暴れないように縛り上げられ顔
には怨霊封じのお札まで貼り付けられている佐
久間だけは、別に驚くでも無くふてぶてしい顔
で黙ったまま聞いていた。
「でも、それは有り得ないでしょう。伝説によ
れば、確か清乃さんは父親に斬り殺された筈で
すから、血が繋がって行く訳がない」
蘭が、そう言うと清乃は少しだけ顔を曇らせ
ながら言った。
「其処が、違うのです。あの優しい父上がそん
な事する訳がないのです。全ては、わたくしを
守るための秘策・・・」
「秘策?それは、どういう事ですか」
皆が、聞きたがってる事を代弁する様に蘭は
言った。清乃は、躊躇いを僅かに見せたがその
直後に話を始めた。由香も真美も、そして晶も
今はもう麻美では無く清乃にしか見えない彼女
の言葉に聞き入っていた。
「源氏武者を、成敗した後に実はわたくしは自
害をしようと心に決めていたのです」
「・・・・・」
皆、黙って清乃の話を待って居た。
「わたくしは、そこにいる源氏武者に辱めを受
けました。父上は、そのわたくしの無念を晴ら
すために源氏武者と対決をしたのですが、武術
の腕と老齢が故にあえなくねじ伏せられてしま
ったのです。わたくしは、矢も楯もたまらず武
者の共の者が持っていた槍を掴み武者の腹に突
き立て父上と共に首を取る事が出来たのです」
「おのれ、お前だったか儂の腹に槍を突き立て
たは」
突然、叫んだ佐久間の頭を晶が矢尻の堅い所
で叩いた。
「グッ、何をする女」
「お黙り、元々あんたが悪いんじゃない黙って
話を聞きなさい」
ぐうの音も出ず、佐久間は黙り清乃は、話の
続きを始めた。
「わたくしが、自害することを見抜いていたの
でしょう。父上は、伊作という人に早まって自
害せぬようわたくしを見張らせていました。そ
うして、捕らえられていた武者の従者を質した
所思わぬ事が解ったのです。実は、わたくし達
が手打ちにした武者は平家の落ち武者狩りに来
たのでは無く日向の椎葉山に、陣を敷いている
別の源氏武者に手紙を届けるのがその役目とい
う事を」
興味深いなと、蘭は思った。日向と言えば、
今の宮崎県その中の椎葉だとすると思い浮かぶ
武将の名は一人だけだった。
「その、源氏武者の名前はもしかして那須大八
郎ではないですか」
清乃は、眼を見張って蘭の顔をを見た。
「その通りじゃ、何故その名前を知っておる」
驚きを、隠さず清乃は蘭に聞いた。
「それは、平家落人伝説で一番の有名人ですか
らね」
「なる程の・・・その那須大八郎の所に武者の
代わりに父上が手紙を届けに行くと突然言い出
したのです。当然、わたくしも村人も反対しま
した。そんな所に、行けば飛んで火にいる夏の
虫わざわざ殺されに行く様なものと」
悲痛な顔の、清乃の話はようやく核心に近づ
き更に続きそうな様子を見せていたが、真夏の
夜はそんな事にお構いなく虫の声と共に刻々と
更けて行った。




