事の顛末(1)
三十五
「蘭、一体これはどういう事。あんたが、危な
いって聞いて此処に来てみたら真剣で対決して
るし、何だか話が入り乱れてさっぱり解らない
んだけど、蘭の所に届け物をして欲しいってお
母さんに頼まれたから来たけど」
姉の晶は、これまでの経緯が解らず突然横か
ら入って来たので話が見えないのは当然だが、
その説明をする前にやはり蘭は佐久間の事を何
とかしなくてはと思っていた。何しろ、佐久間
の身体には晶が放った情け容赦ない矢が、何本
も突き立っているのだから
「姉さん、その説明は後でするのでまずは佐久
間さんの事を何とかしないと」
「あの男なら、心配しなくても大丈夫」
晶は、事も無げに言った。
「でも、現に矢があんなに何本も突き刺さって
苦しんでるじゃない」
蘭の言葉を、聞いた晶はその問いに答えず佐
久間の傍らに歩いて行くと胸に刺さっている矢
を、軽く取って見せた。
「えっ」
佐久間の、胸に刺さっているとばかり思って
いた矢は、いとも簡単に取れた。驚いた事にそ
の胸に血の跡などは見られなかった。
「蘭、これを見て」
晶は、手に持った矢を蘭に見せた。矢尻には
丁度蓋をするようにゴムのキャップが装着され
ていた。
「でも、疑問が一つ有る。なんで、矢が磁石の
様に佐久間さんにくっついているかだよね」
晶は、黙って巻き付けて有る紙を剥がして蘭
に見せた。それは、霊力が凄まじく放出されて
いるお札だった。
「そうか、これだけの霊力が有れば佐久間さん
に取り憑いている悪霊に引き寄せられて当然っ
て訳だ。つまり、悪霊が磁石の役割をしてるっ
て事か其れじゃ、佐久間さんが苦しそうにして
いるのも矢が刺さった痛みじゃ無くお札の霊力
の為か」
矢尻には、ゴムのキャップの他にお札が巻き
付けて有るが、それは母親からの頼みで晶が持
って来たものだった。
「お母さん、今夜起きる事が解っていたみたい
蘭がもしもの時は、この方法で助けて上げなさ
いって言われていたのよ。でも、二人の協力が
無かったら間に合わなかったけどね」
そう言うと、晶は由香と真美の方を見て軽く
ウインクした。
「そうだったのか、由香さんに真美さん有難う
ございます。おかげで、命拾いしました」
その言葉に、由香が少し照れながら言った。
「そんな、大した事はしてませんよ。私たち、
蘭さんのお姉さんの指示通りにキャップを付け
た後、その矢を渡しただけですから」
それでも、蘭は改めてお辞儀をした。
「でも、距離の半端ない東京に住んでるお母さ
んが、どうやって知る事が出来たんだろう。い
つもながら謎の多い人だよな」
それまで、みんなの話してる最中は黙って聞
いていた麻美?が突然口を挟んで来た。
「それは、わたくしがあなたたちの母親の魂に
話しかけたから、だからあなたたちが此処に来
た理由も自然な事に見えるけど、すべての出来
事はわたくしが仕組んだこと」
突然の、彼女の告白に蘭を始め晶や由香そし
て真美も驚きを隠せなかったのだが、平然とし
ている麻美?とそこに居る全員を、雲の流れに
時々見え隠れして居る淡い月の光が、包み込ん
でいた。




