表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖光  作者: 村上蘭
3/45

トラブルは突然に



 二




  あちこち、見て回るつもりだったが結局通り道に


 あった、一勝地阿蘇神社と言う勝負ごとにご利益が


 あるこじんまりとした神社に参拝して宿に向った。


 明日からは、姉の言う別荘?とやらに住む訳だけど

 

 折角の温泉地に行くんだからと、今日だけはこの温


 泉センターに宿を取る事にしたのだ。



 「こちらが、お部屋になります」



  受付を済ませ、係の人に部屋まで案内して貰い落


 ち着いた所で早速温泉に入湯してみることにした。


 脱衣所で、服を脱ぎ浴場に入ると中は湯気が身体に


 まとわりつくくらいに立っていて、時間は既に午後


 四時を廻っていたが人は少なかった。僕の他には、


 一人だけでほとんど貸し切り状態の露天風呂には誰


 も居なかった。それで、思わず口から声が漏れてし


 まった。



「はあーっ、やっぱ温泉最高」



  温泉から出て、部屋でしばらくクールダウンして


 いたら夕食の時間が近づいて来た。部屋に用意して


 あった浴衣に、着がえて一階のレストランに行くと


 各テーブルには、すでに料理が並べてある。これか


 ら、楽しい夕食の時間の筈なんだが僕の第六感がさ


 っきから嫌な信号を繰り返し出していた。「ゾワゾ


 ワ、ザワザワ」といつもの悪寒が既に始まっていて


 レストランには、夕食を求めて続々と人が集まり出


 しほとんどのテーブルは、埋まっていたがレストラ


 ンの一番奥に陣取っているのは昼間一緒だったあの


 若い女性四人組だった。



 「あれ、四人だったかな?」



 僕は違和感を感じていた。四人のうち三人は、宿の


 浴衣姿なのに、一人だけ合わせの着物を着た髪の長


 い女性がいる。それに、ほかの女の子が楽しそうに


 笑ったりお喋りしてる中で無口にただ座っているだ


 けだった。



 「これは、マズイ」




  そう心の中で思った僕は、彼女と視線が合う前に


 眼を逸らそうと横を向き一瞬チラッと彼女の方を見


 た。でも、そこに彼女の姿は無くアレッと思って顔


 を戻すと眼の前に彼女の青い顔があった。「ウッ」


 と、声を出しかけたが危うく押しとどまった。彼女


 は、僕の前に立っていた。正確には、立っている


 のではなく浮いているのだけれど・・・



 「あなた、私が見えてるんでしょう?」



 「・・・・・」




  ここは、無視するに限る。こいつら(霊)に変に


 関わると、ろくなことにならないのは今までの経験


 上解っている。彼女の事は、見て視ぬ振りしながら


 黙々と眼の前の料理を平らげる事にした。



 「ふーん、そんな態度取るんだ。じゃあ、こう言う


 のはどう」



 言うが、早いか彼女は手を伸ばしテーブルに置いて


 あるコップに、デコピンをするように白く細い指で


 弾いた。コップは、中に入っている水を撒き散らし


 ながら物の見事に床に真っしぐらに落ちて行った。



 「ガッシャーン」



  止める間もなく、コップは割れ僕は前後の見境な


 く立ち上がって思わず大声を出してしまった。



 「何て事するんだよ!」



  レストラン全員の、視線が僕と割れたコップに集


 まっていた。レストランの女性スタッフが、すぐさ


 ま走り寄って来て言った。



 「お客様、大丈夫ですか?お怪我はありませんか」



  その、言葉に我に返った僕は慌ててその場を取り


 繕うように笑ってごまかした。



 「アハハハ、皆さんすいません騒がしてしまって店


 員さんもごめんなさい。つい手が、滑ってしまって


 怪我はありません本当に申し訳ないです」




  レストランの、女性スタッフが替えのコップにお


 冷を入れて去る頃には、一応騒ぎは納まり又ガヤガ


 ヤと歓談しながらの食事風景に戻って行った。当の


 騒ぎを起こした本人?は何事もなかった様に椅子に


 座って、澄ました顔でこちらをジッと見ていた。



 「それで、僕に何か頼み事でもあるの?」




  出来るだけ、他から見て喋ってない様に見せる為


 手で口を隠して小声で話した。



 「別に、ただ久しぶりに生きてる男と話をしたかっ


 ただけ、それよりその手は何よもしかしてオカマ」



  こいつ、幽霊のくせに冗談でツッコミ入れて来た


 よ。と、思ったけど一応返事はすぐ返した。



 「違うだろ、僕には君が見えてるし声も聞こえてい


 るけど、このレストランの他の人には、テーブルに


 座って食事してるのは僕しか見えていないし、そこ


 で一人で喋っていたら頭のおかしい奴と絶対思われ


 るだろう」



  そこまで、聞いていた彼女が突然消えた。やれや


 れ、やっと消えてくれたかと思って一安心していた


 ら奥の席から声が上がった。



 「麻美、どうしたの!」




 「どこに、行くのよ?」




   例の、若い三人の女の子たちが何か揉めている。


  その中の一人が、友達の手を振り払って真っ直ぐ


  こちらに歩いて来るのが見えた。僕は、その彼女


  を見ながら誰に言うともなく呟いた。




 「トラブルが歩いてくる・・・」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ